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おお遅くなりました

とりあえず皆で家に入ったので、お茶をいれてあげることにした。


底に発熱する石が入っている魔法のポットは、水を入れると目分量で500ミリリットルを5分位で沸騰させる事ができる。

この石は、冬に井戸に少しだけいれて、凍らないようにできるという優れもの。


日用品から武器まで、色んな形で使われている。


バーベキューできそうだよね、と言ったら微妙な顔されたけど。




「あ~おいしぃ~」


ニヤケ面がさらにほころんで、日向ぼっこ中の猫みたいな顔で呟くのを見て、私は内心でしてやったり、と思う。庭で採れたハーブティーです。


お祖母ちゃんとこに来るお客さん達に振る舞ってきて絶賛の嵐だったもんな!


上手にお茶をいれられる子は、お嫁にいったら大事にされるんよ~、とかなんとか。

――あれ?実は遠回しに自分の嫁の愚痴を行ってただけ?



まぁいい。冷静に回想すると、見えてなかった事が見えてきて地味に傷つくような気がしてきた。


「で?」


上品にお茶を味わいながら仏頂面の父が、ガエタンとロランに一言。


途端に大きい方はしゃきっとして、小さい方は目をキラッキラさせた。話しかけられて嬉しいんやね。すごく分かりやすい。


「おじ上が帰られたと聞いたので、お迎えに来たのです!」

目を輝かせて、おねだりをする小型犬。


「お前に迎えられる覚えはないが?」


聞いたことのある台詞で、期待に満ちたちっこいわんこをバッサリいった。

この辺ぶれないなぁ。


「だって、何で戻ってくれないんですか!最年少で評議会にはいってこのまま宰相になれるって皆……」


「必要ない。領内はお前の父上の采配で問題なく治まっている。議会は手段のひとつだ。花梨がここに来た時点で必要ない」



なんか居心地悪くなってきたし、聞きなれない単語が色々出てきたし。

ふと視線をあげると、こちらを見ているロランと目があって、慌てて窓の外を見てる振りをする。

だって意外に真剣な顔で、ドキッとしたから。


隣の父に冷たくあしらわれているガエタンは、めげずにまだナニか言おうとしていた。


「だいたい、何故この時間にここに来ている?お前には習う事がいくつもあるはずだが、先日も来ていたようだな」


そういえば。

学校、はあるのかな?


「それは、その。気になって」


「その分では父上に許可もされてないようだな?――自分のやるべき事もできない、やった事がどういう結果になるかも想像できない子供が政に口を出そうと思うな」


ちょっと、なんか厳しすぎるんじゃないかな~、涙目になってきとるよ。


「お前は精々飯抜きか草むしりだろうが、そっちのニヤケ面はそうはいかんだろうな」


ガエタンがヒュッと息をのむのが聞こえた。

ロランは困ったように眉を下げて、何も言わない。


「ロラン……どうしよう」


涙が今にもこぼれそう。


「お前も、子供相手だからと言いなりにならず、諫めるという事をしろ」


とばっちり?で怒られた彼は、うへぇ、と言って肩をすくめた。あんまり堪えてないな。



父は言いたい事を言い切ったらしく、茶を飲んだらさっさと帰れと告げて部屋に引っ込んでしまった。




しゅん、となったガエタンは、ちゃんとごちそうさまと言ってから、とぼとぼ帰って行った。


なんか、どっと疲れた。隣でお説教きくのってしんどいわ。



もう何事もないだろうけどね?ひとつ、帰り際にロランが呟いた事が、ひっかかる。


「アナトール様のカリンが見たかったんですよ~。今度は許可をもらってきますね?」



見たがってたのは、誰だろうね?

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