第八話
「はぁ、どうしよう・・・。」
デパートの屋上の自動販売機の前のベンチで、幸せそうな親子を見つつ僕の心の中でさっき見た光景が何度も何度も頭の中をよぎる。
あの隣にいた男の人は誰なんだ?
年上の彼氏か??
男友達か??
僕みたいな友達がたくさんいるのかなぁ・・・。
僕だけじゃなかったのかなぁ・・・。
やっぱり僕の自惚れだったのかなぁ・・・
軽い自己嫌悪に落ちいっていると、突然僕の名前を呼ぶ声がした。
「憲輔!」
今、一番会いたくない人。
僕をぐちゃぐちゃにしていく人。
「有奈・・・。」
走ってきたのだろう。息を整えようと深呼吸をしている。
「何で追ってきたんだよ!」
あぁなんてかっこ悪いんだろう、僕。
有奈は何も悪くないのに、八つ当たりするなんて。
僕がただ勘違いしていただけなのに・・・。
「えっ、だって憲輔が私とおにいちゃん見た途端走り出すから、びっくりしちゃって・・・。
思わず追いかけてた。」
そう言葉を紡ぐ彼女の仕草一つ一つがまた可愛くて、今なんで怒っていたのかも忘れてしまっていた。
ん?さっき有奈の言葉の中に『お兄ちゃん』という単語が出てこなかったっけ?
え?
「お兄ちゃん?!」
有奈はいきなり僕が話し出したからビックリしたのだろう。目を大きく見開き後ろによろめいていた。
「そうだよ、私は今日お兄ちゃんと一緒に買い物に来ていたんだよ。そこで憲輔に会ったから 嬉しくて声をかけたのに、驚いた顔をして走り出すんだもん。本当にビックリした。」
有奈の隣に居たあの男の人がお兄ちゃんだと知り安心したのだが、あることを思い出し僕の
顔から急速に血が引いていくのが分かった。
「憲輔顔色悪いよ、大丈夫?」
有奈が心配してくれている。
普通だったら、とても嬉しい状況なのだが今の僕にはそれを嬉しがる余裕が無かった。
だって、僕は有奈のお兄さんに挨拶もせずいきなり背を向け走り出したのだから。
失礼すぎる、僕がこんな風にされたらものすごいショックを受けるだろう。
その人が自分の妹の彼氏にでもなったら・・・。
やばい、本当にやばい。謝りに行かなきゃ。
僕は、デパートの中へと続く階段へと走り出そうとしていた。
ところが・・・。
「ちょっと待って、憲輔。」
有奈が僕の洋服の裾を掴み、呼びかける。
「ちょっと、ここで話していかない?」
いきなりのお誘い。嬉しい、嬉しいのだが。
今は、それどころじゃない。
お兄さんに挨拶しなきゃいけないのに・・・。
「いや、お兄さんに挨拶をしなくちゃ・・・。」
いかにも挙動不審な態度を取る僕に有奈は疑いの眼差しを向ける。
「じゃ、一つだけ教えて。」
有奈の口が、僕への質問を紡ぐ。
「私のこと、どう思っているの?」
僕は、すぐ言葉を発することができなかった。