第五話
最近、僕は調子に乗っていると思う。
だって、有奈の仕草一つ一つに期待をしてしまう。
僕の事好きなのかと。
最近、二人でいる時間が増えた。
休み時間も、給食も、帰る時だって一緒だ。
しかも、お互いのメールアドレスも知っている。
学校帰りに、二人だけで遊びに行った事はもう数えられないほど。
メールもほぼ毎日している。
一緒に遊んでいる間、有奈も楽しそうだ。
こんな表情の有奈を見て期待しないほうがおかしい。
でも、こんな風に遊んでいると改めて実感する。
僕は、有奈が大好きだという事。
「なぁ有奈、そういえば誕生日っていつ?」
いつもの店に、いつもの学生服の格好で話していた。
「私?私はねぇ、8月10日!」
「夏休み中か・・・なにが欲しい?」
言った。言ってしまった。当然のように・・・。
少し、馴れ馴れしかった、かな・・・?
僕はそっと有奈の顔を盗み見た。
すると、偶然目が合ってしまった。
や、ヤバ・・・。
冷や汗が僕の頬を流れた。
有奈は嬉しそうな声で言った。
「プレゼントくれるの?」
と。
良かった・・・。図々しい奴だとか思われなかったみたいだ。
しかも、夏休みに必ず一日は会える。
「あげるよ。だから、なにがほしい?」
「そうだねぇ・・・アクセサリーとかかな?」
「そっか。分かった」
アクセサリー?・・・アクセサリーって言ったら指輪とか?
指輪、あげるのってなんかトクベツな感じがするんだけど・・・。
どうしよう・・・。
「憲輔、夏休みはどうしよっか?」
「夏休み?そういえば、もう明後日から夏休みか・・・」
「そう。一緒に海でも行こうよ」
「海?いいよ。だったら、映画にも付き合ってくれない?見たい映画あるんだ」
「もちろん。どんなの?」
「えっとね・・・」
会話は続き、気がついたら外は真っ暗。
夏休みの半分以上、有奈といる約束をしてしまった。
しかも、海にも一緒に行ける。
僕たちって傍から見たら、恋人同士に見えるのかな・・・。
「もうそろそろ帰らなきゃね・・・。憲輔、送ってくれる?」
「当たり前」
「ありがと」
有奈は本当によく笑う。
同じ“笑う”でも、それぞれ微妙に違いがある。
そんなひとつひとつの笑顔が愛しくて、愛しくてたまらないんだ。
「送ってくれて、ありがとう」
「いえいえ。じゃあ、また明日学校で」
「うん。バイバイ」
そう言って、僕はその場を後にした。
振り返ると、有奈は僕が見えなくなるまで手を振ってくれていた。
笑顔で。優しい優しい笑顔で。
僕は決めた。
夏休み、8月10日、有奈の誕生日に僕は指輪をプレゼントして、有奈に告白する。