第四話−有奈視点−
−有奈編−
私は、最近ある人物に恋をしている。
彼はつい最近、一ヶ月ぐらい前までは、名前しか知らなかった人だ。
長尾憲輔くん。身長がものすごく高くて私は彼を見るたびに、
「並んで帰るときとか大変そうだな。」
と、勝手に考えている。
その憲輔君と、最近カラオケに行った。
私は、友達にも言われるほど音痴だ。
それに比べて、憲輔君はものすごく上手だった。
私は思わず憲輔君に見惚れていたようだ。
そんな所を、彼に見られていなくて良かった。
見られていたら、恥ずかしすぎて死んでしまうかもしれない。
彼と目が合ったり、会話をしたりする時点で、ものすごく緊張しているのに・・・。
こんな思いをしたのは初恋以来・・・ううん、初恋のときもここまでは緊張しなかった・・・。
カラオケに行って、私が嬉しかったこと。
彼が憲輔って呼び捨てにしていいって言ってくれたこと。
そして、彼が私を家に送ってくれたこと。
やっぱり優しいな、憲輔・・・って。
彼といると、幸せであったかくて・・・。
憲輔は優しくて、気さくですごく良い人。
私は最近、気がつけば憲輔といっしょにいる想像ばかりしている。
私の想像の中では、私と憲輔はすごくラブラブなカップル。
現実に引き戻されるたびに私はまた想像か、と肩を落とす日々が続いている。
雅美とかには、もうそれは妄想の域だろうと言われるが、さすがにそれは認めたくない。
だって、想像ならまだしも・・・妄想はさすがにヤバイ、かな・・・。
でも、恋をすると人はおかしくなっちゃうものだと思うから。
そんなに悪い気はしないかな。
まだこの気持ちを伝えることはできないと思うけど、彼とほんの少しの会話ができるだけで、目が合うだけで今は十分、幸せだから。
ラブラブなカップルになりたいだなんてワガママな気持ちは隠しておこうっと。
でも、きっと私は憲輔の彼女になってやるんだから。
“憲輔が好き”
これだけは誰にも負けない私の気持ち。