第三話
有奈と僕はあの日、結局あの後も2時間ほど歌ってから、カラオケボックスを後にした。
有奈を傷つけてしまったのは、その後もずっと気がかりだったが、有奈の笑顔を見ているとつい、僕も笑顔になる。
悲しい気持ちは楽しくて、嬉しい気持ちになる。
カラオケボックスを出ると、外は当然のように真っ暗で、僕は家まで送ると言った。
それに対して、有奈は、
「そんな、悪いからいいよ。一人で帰れるよ」
と言った。
でも、どうしても心配だった僕は無理やりのような形で送ることにした。
有奈の家は閑静な住宅地にあった。
二階建ての白い一軒家で、庭には白い毛の仔犬がいた。
「わざわざゴメンね。送ってくれて有難う」
有奈は再び笑顔でそう言った。
「こちらこそゴメンね。こんな遅くまで・・・」
「ううん、いいんだ。すごく楽しかったし・・・」
「そう。それなら良かった。じゃあ、また明日学校で」
僕はそう言って、背中に有奈の視線を感じながら帰路についた。
自然に話せていただろうか。顔は引き攣っていなかっただろうか。
一日一緒にいたはずなのに、まだ緊張する。
二人でカラオケなんて終わってしまってからじゃ、夢のように思う。
でも、僕の頭の中には有奈が見せたひとつひとつの表情がしっかりと残っていた。
彼女のひとつひとつの表情に恋してしまう僕はやっぱり有奈のことが・・・どうしようもないくらい好きだ。
有奈と僕の気持ちがひとつなら、どんなにいいだろう。
きっと、そんなことはありえないと思うけど。




