第二話
今日、二人でカラオケに来て、分かったこと。
1、有奈は結構、音痴だということ。
2、やっぱり有奈は可愛い。
3、意外と僕、歌うまいかも・・・?
有奈の声は可愛らしいソプラノで、僕の声はちょっと高めのアルトだ。
友達からは高い声と言われるが、そんなに高いか・・・?
カラオケに来てから、約2時間が経過した。
お互いに10曲近く歌ったのではないだろうか。
スナック菓子やドリンクを飲み食いしながら、会話も結構した。
有奈ももう誰も来ないことを気にしていないようで、普通に楽しんでいる。
僕ももちろん楽しい。
邪魔されることなく有奈と二人っきりでカラオケが出来るのだから。
有奈は今、一番好きというアーティストの曲を歌っている。
僕は全く知らないアーティストだが、歌いながら上目使いで見てくる有奈があまりにも可愛くて思わずクラッと来る。
曲は長い長い間奏に入ったようだ。
僕の心臓の音がどんどん大きくなっていった。
僕って、本当に有奈の子と好きなんだなぁ、と実感しつつ、
「そういえば、」
声が裏返りながら、ずっと僕を見つめていた有奈に話しかける。
「僕なんかに「くん」なんてつけなくて良いよ。」
「そんなわけにはいかないよ。」
有奈が、可愛いソプラノトーンの声で返事をした。
「いや、別に僕も呼び捨てにするし。ていうか、呼び捨てにしたもらったほうが嬉しいし・・・。」
「なんで?」
思わず発していた僕の本音はしっかり有奈の耳に入っていた。
僕は、自分の口から出た言葉に動揺しながら、顔を真っ赤にして下を向く。
せっかく、有奈にこの顔を見られないようにと下を向いたのに、有奈がいきなり覗き込んできた。
有奈が、潤んだ瞳で見てきた。こう見ると、有奈がか弱い小動物のように見えてくる。
「よそよそしいのって嫌いなんだよね。」
思わずそっけない言葉が、口から出ていた。
有奈は一瞬悲しそうな顔をしてから、また笑顔になった。
「そんなことで、照れてたらだめだよ。私のことも呼び捨てで良いよ、憲輔。」
有奈に初めて名前で呼ばれた。それがまたうれしくて、顔が赤くなっていく。
「・・・わかった、有奈。」
俺たちは、二人で笑いあった。まるで、恋人同士のように。
でも、一瞬でも有奈に悲しい顔をさせてしまった自分自身が憎かった。
それだけが、今日の僕の出来事でやり直したい時間であった。
一瞬でも、君には悲しい思いをしてほしくない。
例え、僕がどんなに傷ついても・・・。
この小説は私ともう一人のある先生との共同制作小説です。感想や評価をいただけたら、嬉しいです。