実話異世界でイケメンに会ってきた
初投稿の実話です。
「普通に手を繋ぎたかったからかな?笑」
異世界でイケメンが現れたらどうするか。
答えは簡単だ。
恋に落ちる。
異世界といっても日本には異世界へ実際に行ける技術がたくさんある。
その一つが、旅行。
旅行は、お金はかかるものの普段と違う世界、つまり異世界に行くことができるのだ。
神戸の街で会ってきた男友達が内外ともにイケメンを極めていた。
私はそのイケメンに恋をしてしまった。アイスクリームよりも甘い恋を。
これは、実際に私の前に現れたイケメンの見聞録である。
十一月某日。
私は一件のラインを送った。
「やほー! 関西に旅行決まったよ!」
相手はネットで出会った男友達。
名前は仮にペンギンさんとでもしておこうか。
共通のコスプレという趣味を通じて仲良くなった人だ。
ここで、コスプレという趣味の特異性について説明する。
コスプレは自分の顔を不特定多数の見るネットに晒す。コスプレの友達は、そのほとんどが実際に会う前だとしてもある程度顔の特徴は分かるのだ。
しかし、コスプレの世界では加工、それも重重重加工の人が多い。かくいう私も顎を細くしたり目を大きくしたりする加工から、写真にはない模様を錬成したり、写真の色味をきれいにしたりする加工まで、多岐に渡る加工をしていた。
ペンギンさんは加工アプリで撮ったであろう写真をSNSに載せていた。しかし元の顔がわからないような写真も多かった。
コスプレはウィッグを被り衣装を着て特殊なコスプレメイクまでする。それに加工が入るのだ。
顔の特徴がある程度つかめてたとする。だが、だからと言って街中で会えば分かるとはいかない。
写真のペンギンさんはかっこいいが実際はどうなのか分からなかった。
私のコスネームは仮に湯葉としておく。
私はメンタルを病み、高校生活をやり直している十九歳だ。
もう、コスプレは引退した。
人間関係のトラブルに悩み、持病が悪化すると判断したからだ。
「湯葉ちゃんがつらいとき、いつでもラインしていいよ」
以前このようなことをペンギンさんに言われ、ペンギンさんとは何度も連絡を取っていた。
私が声を聞きたいといったときは、四時間以上電話に付き合ってもらったこともあった。
ペンギンさんは関西在住、私は東京。距離が遠く実際にお会いしたことはなかったが、とても大切な友達である。
冒頭に戻る。
「そうなんだ! 大阪?」
ペンギンさんからの返信は一分後だった。
「神戸行くよ! 会えたらいいなぁ」
「会えるかもしれない! 仕事じゃなければ笑」
ペンギンさんに会える!
念願のリアル邂逅ができるなんて、嬉しい。
もちろん男性であることに少し不安はあった。それも旅行先だと逃げられないかもしれない。
だが、ペンギンさんは何度も数えきれないほど電話をする仲だ。
不安より期待感のほうが大きかった。
母にネットの友達と会ってもいいか聞くと、母も母のネトゲ仲間と会ったことがあるから大丈夫だと返ってきた。
怖い思いをしそうになったらいつでも逃げなさい、とも言われた。
未成年ではないとはいえ親の許可が必要だと思っていたが、案外簡単に許可が得らえてよかった。
これでペンギンさんと会える。
そう思うと楽しみな気持ちと期待感で胸があふれた。
十二月某日、旅行当日。
深夜零時に目覚めた私は、眼が冴えて眠れなくなっていた。
大丈夫かな。
ペンギンさんと前日に打ち合わせをしていたが、いざ当日になってみると不安が襲ってきた。
私はコスプレをやめてしばらく経つ。
体重も増え、猫背巻き肩ストレートネックの三点張りの容姿を持つ。
加えて、身長が日本人男性の平均身長より高く、このせいで引かれることも多い。
容姿に自信がないのだ。
そんな不安に押しつぶされそうになっていた時、一件の通知が来た。
「湯葉ちゃん! 明日ご飯食べた後どこか行く?」
明日ではなくもう今日だが、聞けばペンギンさんは晩酌中なんだとか。
ペンギンさんに会う神戸では、人気の洋食屋でランチする約束しかしてなかった。
「おすすめの場所とかある?」
そう尋ねると、おしゃれな水族館のリンクを送ってきた。
「こことかどうかな?」
生き物が大好きな私には、とても輝いて見えた。
前ペンギンさんに私が生き物好きだという話をしたとき、ペンギンさんも同じだと言っていた。
ペンギンという名前もペンギンが好きだから取ったらしい。
私は迷わず返信した。
「水族館いいね! 私ここに行きたい!」
「じゃあ決まりだね!」
その後も会話は続いていく。
「湯葉ちゃん、無理せず何かあったらすぐ言ってね」
私の疲れやすい心と体を考慮してのことだろう。
「了解! ありがとう」
「迷子にだけはならないようにしないと」
ペンギンさんが話を続けてくれる。
私が二度寝防止に起き続けることを伝えたからだ。
「たぶん私は迷わないと思う笑 東京で慣れているから」
「心配だなぁ笑 湯葉ちゃんを見失わないように僕が後ろを歩くか笑」
え。
永遠の愛を誓う告白ですか。
オタクは早とちりした。
首をぶんぶん振って、子どもだと思われてる笑、と返す。
「水族館とか迷子になりやすいかと思って笑」
「もう成人済なので……!」
十八歳成人の今、私も成人して一年経つ。
「時の流れには毎度驚かされます」
ペンギンさんと出会ったのは二年前、私がまだ十七歳のころだった。
もうこんなに経つんだね。
その話は共通の趣味のお笑いの話に移り、気づいた時には二時近かった。
「おやすみ!」
大きな期待に胸を膨らませてスマホを閉じた。
「神戸だ!」
バスが停止し、運転手が神戸に到着したことを告げる。
曇っていたが、私の心は晴れ晴れとしていた。
しかし、寒い。
それもそのはず、神戸は海辺で寒いのだ。
風が冷たい。
「神戸着いたよ!」
ペンギンさんとの待ち合わせまで二時間。
メッセージを送って、近くのカフェで待つことにした。
二時間後、約束の洋食屋の前で待つ私。
ペンギンさんからの返信が来ない。
もう集合時間なのに。
そんな時、スマホが鳴った。
「ごめん、寝坊した」
雪が、降り始めた。
「どれくらいかかりそう?」
「一時間半くらい。本当にごめん。急ぐ」
雪がコートに溶けて消える。
私の心も、消えそうだった。
知らない土地で一人ぼっち。
そう考えると、胸が苦しくなった。
「僕を殴ってください」
「マックで待ってるわ。音楽聴いてる」
本当にごめん、と謝り続けるペンギンさん。
雪の中、洋食屋をあとにしてマクドナルドへ向かう。
大好きなベーコンとレタスのハンバーガーセットを頼んだ。
少しでも心を落ち着けるために、最近熱中している湘南乃風のプレイリストを流す。
店内は昼時にも関わらず混んでいなく、ぽっかり空いた私の心のようだった。
一時間後、私はマクドナルドを出た。
集合出来そうな場所を探し始める。
駅は改装中で、行きたい水族館までのバスが出ているはずのところは工事をしていた。
「工事中だからバスじゃなくて歩いていく?」
私はペンギンさんにそうメッセージを送る。
すぐに返信が来る。
「了解! やっと着いたよ。湯葉ちゃんどこにいる?」
駅に着いたといっても、私のいるところとペンギンさんのいるところは違った。
「迎えに行くから待ってて」
私はそう送り、中央口を目指した。
心の中は期待が半分になり、不安のほうが増していた。
結構待たされたことに憤りさえ覚える。
ペンギンさんが優しい人なことは知っているが、抜けているところも多いみたいだ。
いや、本当は優しい人ではないのかもしれない。
そうこうしているうちに、中央口に着いた。
電話をかける。
「着いたよ!」
すると、目の前の男性が急にスマホを耳に当てた。
「湯葉ちゃん? どこ?」
私はスマホを降ろすとその男性に声をかけた。
「ペンギンさん?」
男性が振り返った。
「湯葉ちゃん! 会いたかった!」
その瞬間、私は息をのんだ。
イケメンすぎだろ。
こんなイケメンが私の名前を呼んだだと?
後ろに薔薇の花が見えた。
センター分けされた美しい髪、優しそうなまなざし、お洒落なコートとそのコーディネイト。
信じられなかった。
やはりここは異世界だ。
そんなことを考えている私に、ペンギンさんは頭を下げる。
「本当にごめんなさい。夜更かしして寝坊しちゃって」
そうか、ペンギンさんは私と深夜のメッセージのやり取りで夜更かししてしまったのか。
私にも原因のある遅刻だったのか。
まあ、仕方ないか。
「いいよ。さ、水族館行こっか!」
海沿いにある水族館へ向かって歩き出す。
道中、ペンギンさんとの会話は大変盛り上がった。
私の学校のこと、東京のこと、好きなアニメのこと。
ペンギンさんの地元の話、友達の話、今日行く水族館の話。
「わあ、街並みが素敵だね」
「こんな建物東京でも見たことないよ。神戸はお洒落だなぁ」
東京の街並みとは一味違う、外国のような建物が多かった。
水族館へ着き、入館する。
そこは、水と魚の華で溢れていた。
中央に大きな水槽があり、その周りに小さな水槽が取り囲んでいる。
一つ一つを丁寧に見ていくペンギンさんと私。
「綺麗だね」
いやお前がな。
胸にしまった言葉が一番似合う。
本当に綺麗な横顔をしていた。
ペンギンさんは、とても素敵だ。
水槽のエイがこちらを見ている。
存分に見ておけ。こんなにも素敵な男性とともに歩く私なんて世界初だから。
「このエイ、僕たちの前を往復していない?」
確かに、言われてみると。
一匹のエイが水槽の中で私たちの前を行き来している。
ペンギンさんがかっこいいからだよ。
その言葉も胸にしまいつつ、ペンギンさんの目を見て話す。
「なんだか、嬉しいね」
その目は、確かに私を映していた。
気恥ずかしくなって目をそらす。
ペンギンさんはエイに目を移す。
その横顔にときめく心が芽生えた。
あ、惚れた。
自然と口角が上がる。
「次のところ行こ!」
「え、早いよ。もうちょっとだけ見ていたい」
私だって魚たちを見ていたいよ。でも、あなたで視界も心もいっぱいなんです。
「じゃあ、ちょっとだけ」
ちょっとだけ、あなたを見ていていいですか。
誰に問うでもなく投げかける。
スマホで写真を撮り始めたペンギンさんに倣い、私も写真を撮る。
今はこの瞬間を、少しでも形に残しておきたい。
綺麗な一枚が、君の横で撮れたよ。
「階段疲れた。引きこもりにはきついわ」
先程までの私はどこに行ったのだろうか。
仕方ない。普段家から出るどころかベッドから動くことでさえ苦手な私が、階段を四階分昇ったのだから。
「湯葉ちゃんお疲れ。もう着くよ」
こんな時にでも優しいのか。イケメン尊し。
そんな私の疲れた心は、一瞬で消えた。
「カピバラだ!」
私の大好きなカピバラが目の前に現れたからだ。
つぶらな瞳、愛くるしいボディ、そしてキュートな動き。
「可愛いー! 私大好きなんだよね」
ペンギンさんを置いて一人で興奮している私。
写真を撮り、動画まで撮影し始める。
ペンギンさんを一瞬見失ってしまった。
「あれ? ペンギンさんどこ?」
「ここだよ」
振り返るとそこにはペンギンさんがスマホを構えていた。
「ごめん! つい可愛さに見とれちゃってた……」
ペンギンさんは無言でスマホを見せてくれた。
私よりもっと上手く撮ってるじゃん。
「可愛いよね」
え。
「カピバラ」
一気に顔が赤くなる。
勘違いしてしまった私が恥ずかしい。だよね、こんなイケメンが私のことなんか可愛いって言うわけないか。
勘違いだと分かった。分かっている。でも。
「嬉しい」
私は思わず言葉に出してしまった。
あっ。
「そ、その、カピバラに会えて」
「そっか」
なんだか複雑そうな顔をしている。
途端に、雪が舞い始めた。
「寒い」
私が呟く。
「寒いね」
でも、あなたとこの雪が見られてよかったよ。
「湯葉ちゃん、見て」
目線を外に移す。
大きな船、真っ赤なポートタワー、そして広大な海。
美しい。
それだけの言葉では到底収まりきらないほどの景色が、広がっていた。
「きれい、だね」
「うん」
ペンギンさんの言葉は、どこか深みのある声だった。
雪が深々と降りそそぐ。
「ちょっと寒くなってきたね」
「下に降りようか」
ペンギンさんの鼻が少し赤みを帯びていた。
名残惜しさを置いて、下に降りる。
「ちょっと行きたいところがあるんだけど」
ペンギンさんの言葉に、私はうなずく。
階段を降り、向かった先はエイのいる大きな水槽の前だった。
「湯葉ちゃんの写真、撮りたいなと思って」
コスプレイヤーは知らないカメラマンに写真を撮られることも多い。
特に抵抗感なくいいよと言った。
だが。
つまり、ペンギンさんのカメラロールに私の写真が残るということか。
嬉しすぎる。
ほんの少し、期待する。
私のこと、大切な存在だと思ってくれている、のかな。
二重顎を精一杯引き締め、お腹を凹まし背筋を正す。
カメラから目をそらし、自然体で水槽を見つめるのが一番盛れる。
「いい写真が撮れたよ」
見せてもらう私は気取っていて、太っていて恥ずかしかった。
でも、いい写真と言ってくれたのだ。
「ありがとう!」
ペンギンさんに向けて精一杯の笑みを向ける。
「私もペンギンさんのこと撮ってもいいかな?」
ペンギンさんは意外そうな顔をしていたが、すぐに承諾してくれた。
カメラ越しにペンギンさんを見つめる。
ペンギンさんは、輝いていた。
思わずシャッターを切ることを忘れていたが、少し傾けてお洒落に撮る。
ポートレートモードが盛れると前に聞いたことがあったので、そのモードにして撮る。
「イケメン」
確かに、そこに切り取られたのはイケメンだった。
それも、世界遺産級。
国宝級イケメンだなんて言葉では収まらなかった。
「照れるなあ」
慣れているのかいないのか、そんな反応をされた。
どっちなんだろう。
「そろそろ行く?」
「あ、うん」
ミュージアムショップへ辿り着いた。
「これ可愛い! これもいいなあ。こっちもお洒落!」
ペンギンさんは一つ一つの商品を丁寧に見る。
「湯葉ちゃんはどう思う?」
私もいいと思う、と答えると、次々にかごへ入れていく。
「湯葉ちゃん、これは持ち運びにどう?」
私にも勧めてきてくれるのか。なんて優しいんだ。
だが。
お土産としては少々高価な気がする。
「ちょっと東京に持ち帰るのには大きいかな」
そんな言い訳をして、購入しないでおく。
「そっか」
少し悲しそうな顔を見せてくるペンギンさん。
ごめん。
私もアルバイトを辞めてしまって、そんなに余裕がないのだ。
ペンギンさんは一つのブースの前で立ち止まった。
「湯葉ちゃん、これ見て」
そこには、ガラスでできたピアスとイヤリングがあった。
青くて、透き通っていて。
「好き……」
ペンギンさんが私の顔を覗き込む。
「あ、いや、このイヤリングが好きだなって」
「僕、これ買うわ」
ペンギンさんがピアスタイプを手に取る。
「ペンギンさんピアス開いてるの?」
「うん。片耳だけ」
そう言ってピアスを見せてくれる。
「友達に開けてもらって」
本当に友達なのだろうか。
元カノ、だったり。今はいないって知っているけど、前に元カノの話してた気が……。
嫌な妄想に思わず顔が曇る。
「湯葉ちゃん?」
「私もこのイヤリングのほう、買っていい?」
独占欲とでもいうのだろうか。
今だけは、私のものにしたい。
できれば、これからも。
「もちろんだよ。これでお揃いだね!」
ペンギンさんが嬉しそうな目で見つめてくる。
そのまま、会計へと進む。
私はイヤリングを大切に持って、出口に行く。
ペンギンさんはお土産を大量に購入していた。
少し待ってから、ともに歩き出す。
そのまま水族館をあとにする。
「湯葉ちゃん」
ペンギンさんがお土産の袋を探り出す。
「これ、プレゼント」
え。
そこには、カピバラと水族館のロゴがの印刷された、小さな缶があった。
「これなら荷物にならないと思うんだけど……」
先程のショップで探していた理由は、私に買わせるためではなく、プレゼントするためだったのだ。
「……嬉しい。嬉しすぎる!」
「よかった!」
ペンギンさんが満面の笑みを見せる。
「一生大切にするね」
「湯葉ちゃんがカピバラ見ていた時、本当に幸せそうだったから」
私のこと、よく見てくれていたんだ。
そう感じると胸が熱くなった。
「手が寒い。冷たい」
ふいにペンギンさんが呟く。
私は思い切って目を見つめた。
「触れてもいい?」
ペンギンさんはにこりと笑うとうなずいた。
指先が触れる。
男の人らしい、大きな手。
少し筋張っている。指先は整えられている。
すると、ペンギンさんは少し顔を赤らめて、それでも芯の通った綺麗な声で言った。
「手、繋いでもいいかな?」
ぱっと顔を赤らめる私。
「……もちろん」
そのまま、私の右手にペンギンさんの左手が静かに触れる。
恋人繋ぎではなく、普通の繋ぎ方。
今の私たちにはこれがちょうどいい。
恥ずかしくて前を向きながら、駅に向かっていく。
「帰りたくない」
私は正直に言った。
「楽しかったからね」
その私を否定するでもなく、会話は続いていく。
「来月一月に東京、また行くよ」
ペンギンさんの言葉に驚く。
「じゃあ、また会えるの?」
「うん!」
こんなに長く会いたかった相手に、また来月も会えるのか。
幸せだ。
幸せこの上ない。
駅に着いた。
「じゃあ、また来月!」
「またね! 東京で待ってる!」
最後に彼のぬくもりが愛おしくて、ハイタッチをする。
見えなくなるまで、駅で送る。
「今日はありがとう! また来月会おう!」
ペンギンさんからのメッセージが来る。
「こちらこそありがとう! めちゃめちゃ楽しかったです!」
ハートの絵文字をつけて返す。
「ちなみに、湯葉ちゃんにあげた缶のお菓子あるじゃん」
すると、一枚の写真が送られてきた。
「絵柄違うけど同じやつ買った笑」
こんなことをされたら、もう。
「惚れるよ、ガチで」
すると、えへ、というスタンプが送られてきた。
「何で手繋いでくれたの……?」
私は問いかける。
心臓の音が聞こえてくる。
これで遊びと言われたら悲しいどころの騒ぎじゃない。
「普通に手を繋ぎたかったからかな?笑」
え。
嬉しい、よりも幸せが勝つ。
でも、最後の「笑」が少し気になる。
私は「笑」を使わなかった。だが、ペンギンさんはそれで返してきた。
それに。
ペンギンさんは、一度も私のことを可愛いと言わなかった。
浮かれすぎていたのかもしれない。
聞いていいのか分からないが、聞いてしまう。
「ペンギンさんは私のことどう思ってるの、女として」
送信して、スマホを閉じてしまう。
見たいような、見たくないような。
少し経ってからスマホを見ると、一件のメッセージが来ていた。
意を決して開く。
「友達として好き。だからまた遊びたい。」
そして。
「女の子としては普通かな」
ああ、そうか。
やはり。
絶望とは音がなくなる世界に落ちることだ。
彼のいた神戸は、やはり異世界だったのだ。
しばらく何もできなくなる。
そして、一言返す。
「そっか、ありがとう」
これは実話だ。
異世界に行って、恋をした。
一月に東京で会えるらしいが、それはまだ先のことだ。
続報を聞いてほしい。
イケメンよ、ありがとう。
続報を出したいです。




