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「お世話になりました」


 すっかり晴れた日暮れ。愛稀は店の前に立っていた。そろそろ恋人との待ち合わせの時間が近づいているという。立花は店先へと見送りに出ていた。


「あの……このワンピース、また洗って返しに来ますから」


 なおも少し申し訳なさそうな様子の愛稀に、立花は言った。


「いえ、よければ、その服は差し上げますよ」


「え、そんな」


「妻の形見と、大事に置いてきましたが、やはりあなたのような美しい方に着ていただいた方が、服も喜ぶでしょう。ご迷惑じゃなかったら、受け取っていただけないでしょうか」


「そうですか……ありがとうございます」


「服を返しに来るとかではなく、またうちに顔を出していただけたら嬉しいです。例の写真、店に飾っておきますので」


「ぜひそうさせていただきますね。じゃあ――」


「お気をつけて」


 去りゆく背中を、立花は見送った。


 彼女が見えなくなってから、空を見上げた。日は沈みかかり、もうすぐ夜が訪れようとしている。先ほどの雨が嘘のように、空を覆っていた雲も少なくなっている。夜には星が瞬くことだろう。きっと、夏の天の川も綺麗に見えるに違いない。


 立花は思った。きっと、あの女の子の姿を借りて、恵子が自分に逢いに来てくれたのだ、と。あのワンピースを彼女に渡したのも、そういう運命だったに違いない。彼女のものだったワンピースを、彼女にお返ししたのだ。


(また、逢いに来てくれるかい――)


 立花は天を仰ぎ、心の中で亡き妻に言った。


 また、立花だけでなく、愛稀にとっても今日は再会の日だった。恵子のワンピースを身にまとった彼女を見て、彼女の恋人はどう思うだろう。きっと、「美しい」という感想をもつに違いない。そして、年に一度の再会を喜び合う織姫と彦星のように、二人は幸せな時を過ごすのだ。


 立花は、愛稀とその恋人が、繁華街を寄り添って歩く光景を想像してみた。そして、かつての自分たちがそうであったように、いまの青春を謳歌する若者たちに、心の中でささやかなエールを送るのだった。

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