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神に誘われて異世界転生してみた物の、良かったのか悪かったのか微妙ですが、概ね楽しく生きています。  作者: 一一
第三章 幼少期 第二の村、旅立ちの準備編

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第99話 転生幼児、密かに村の人気者になる。だが余り嬉しくはない。

長くてもいいってゆたもん! 良いっていう人が居るんだもん!

……ゴメンナサイ、もうすぐ100話なので見逃して(笑)


 珍しく話しかけられ、クリンは槌を振り歪みを修正していた手を止め溜息を吐き、


「これはまた唐突ですね、ネルソン君。面白い物と言われても何のことか解りません。そして、名前が名前なのでボッタクリは大好きですしやりますが守銭奴のつもりは無いです。そして、そろそろ僕の名前を憶えても良い頃だと思うんですよ」


 結局歳の近い子供相手でも口調が変わらなくなってしまっているクリンだが、時折こうして馴れ馴れしい感じで話して来る様になった七歳児に少しだけうんざりした顔で返す。いや、彼が馴れ馴れしい喋り方なのは最初からか、などと口の中で呟いていると、ネルソンの方は特に気にした様子もなく、


「だってさ、ここ色々ある癖にどれも触んなって言うからやる事無くて退屈じゃん。そんなに変な物作れるんだからさ、なんか遊べる様な物作れねぇの?」

「変な物って……ここは鍛冶場なので仕事に使う物しか無くて当たり前です。遊ぶ物なんて作った所でお金にならないじゃないですか。僕はそう言う無駄な事はしないんです」


 クリンは農具の歪みを取る作業を止めず、チンチンと農具を金槌で叩きながら答える。だがネルソンは不満そうな顔で口を尖らせた。


「えー。そんなこと言って、あそこに変な木の人形飾ってんじゃん。アレも守銭奴が作ったんだろ~。あんな変なモン作れんだからさ、なんか楽しそうなの作れよ~」

「……また変な物つったか? っと、ゴホンッ! 今、僕は仕事をしています。遊んでいる訳では無いので、そんな時間は無いです。それにアレは御神像です。木工のスキ……腕を上げるのにアレは最適なんです。だから別に変な物では……」


「なんだ、作れねえんだ。ふ~ん」


 ピタリと少年の動きが止まる。金槌を持つ手がピクピクと動いてはいるが時が止まったかの様な静寂が辺りに流れる。やがて気を取りなおしてクリンが再び槌を振り上げ——


「そっか、あんな変なのしか作れねえんだ、だっせぇの」


 ポソリとネルソン少年が呟いた。

 

 ………………

 …………

 ……


「上等だクソガキがぁっ! 作ってやろうじゃないか、おおん!? 黙って見とけや!」

「お、おいクリン君!? こ、こらネルソン! お前も余計な事を言う……ああ、まだ仕事中だと言ったのは君だろう、って何か凄い勢いで作り出したっ!?」


 例の如く瞬間的に沸騰したクリンに、それまで黙って見ていたトマソンが慌てて止めに入るが時すでに遅く、少年はノコギリを手にマクエルから貰った丸太の一部を輪切りにし、鑿と鉋でそれを勢いよく削り出していた。


 意外と転生幼児の扱いが上手いネルソン君である。程なくしてクリンは綺麗にヤスリが掛けられ、ニス代わりにラードを塗って艶を出した、浅い木皿の様な物を作り出していた。


「てれれってれ~! 異世界版木製フリ……は商標されているからダメか、じゃあフライングディスクのかんせーだーっ! どうよっ!?」

「どうよって、ただの木皿じゃんか。しかも縁がまあるくて使い難そうじゃん」


「ねー、へんなの! あそぶっていったのにおさらつくってるよシュセンドー!」

「クリン君、そのてれれ何タラは時々やるが、それはやらなくてはいけないのか?」


「シャーラーップ! お皿じゃありません、これはフライングディスクで、れっきとした遊び道具です! ……まぁ本当はブリキの蓋とかプラスチックとかの素材の方が良いんですが……こんな世界にそんな物ないからねっ! コレはこうやって使うのだぁっ!」


 そう言うと、フライングディスクを手に鍛冶場の外に出ると、それを勢いよく空に向かって投げ放った。


「おおおおおおおおおおおおっ、すげえっ、飛んでるっ!」


 一見ただの木皿の様に見えるが、前世のフライングディスクの構造を模してある為に揚力が掛かり、ディスクはフワリと浮くような感じで空を滑って行く。


 それを見たネルソンがはしゃいで喜び、ディスクが地に着地すると言われていないのに走って取りに行きクリンの元まで持って来て「もう一度!」と言って渡して来る。


『うん、犬にフライングディスク投げるとこんな感じだよね』


 と、内心思ったが


「コレは一人で投げても良いですが、数人で投げ合ってキャッチして遊んでもいいんですよ。ただ。木製ですから当たるとそれなりに痛いですし怪我する事もあります。ですので、投げる時の力加減に気を付けて下さいね」


 そう言ってトマソンを呼び、二人に投げ方をレクチャーすると、何回か練習した後に本格的に投げ合い始め、実に楽しそうにはしゃいでいた。


「……いや、トマソンさん、貴方も仕事中じゃないんですか……振ったの僕だけど……ま、自分の子供なんだから自分で面倒見てくれる方が楽でいいか」


 暫く親子の様子を眺めていたクリンは、満足気に一人頷くと鍛冶場に戻ろうと踵を返し——筒型衣の裾を掴まれて動きが止まる。掴まれた先を見るとクリンの天敵……もとい、トマソンの末の娘、モリーンが頬をプクッと膨らませ睨んでいた。


「ええと……?」

「にーちゃんととーちゃんだけあそんでずるいっ! アタシもあそびたいっ! シュセンドー、アタシにもなにかつくって!」


 涙目でそんな事を言われ——ガックリと肩を落としたクリンは鍛冶場に戻り、乾燥させて保管していた土を水で練って親指の先程の大きさの平べったい土器を作り、それに灰汁を作る際に出る沈殿した炭を干した物で作った木灰を水で溶いた物を塗り、簡易炉の中に放り込んで焼き上げた。


 一時間もしないで出来たのは——土器製なんちゃっておはじき。人形でもいいが古い時代の女の子の遊びと言えばコレだろう、と安易な考えで作ったのだが、モリーンはコレを大層気に入り、色々な遊び方が出来ると知るとクリンに増産の約束を取り付け後日近所の女友達に自慢してまわり、その子供達を引き連れて鍛冶場に押しかけ、鍛冶場の軒先におはじき遊び用の台を作らせそこに女の子達が集まるようになる。


 そうすると男の子達も自然と集まるようになりフライングディスクが増産され、それだけだと飽きるからと別の物も所望され、渋るクリンに「何だ、作れないんだ」と言う魔法の言葉を吐きかけ、新に胡桃の殻を使った風車と木を削って作る簡単な独楽を作り出し、それが子供達の間で大流行し。気が付けば冬が訪れる前には鍛冶場の前は子供達の遊び場と化していた。




 そして、子供達が集まれば大人達も集まって来る。冬に入れば農閑期でやる事が大分無くなる。この頃にはもう粗方の農具の修理は終わり、残りは来年の鍛冶師の仕事でクリンの仕事は時々出て来る自警団の備品の手直し程度になっている。


 手伝いに付けられていた自警団も村からの依頼が無くなれば来なくなり、備品の手直しの時に来る程度になり、鍛冶場に来るのはクリンが作る遊び道具が目当ての子供だけとなった。まぁ、子供だけでは心配だからと時々大人も監視にくるのだがその頻度は低い。


 冬になれば農家の雑用もグンと無くなり、収入はほぼマクエル達に連れていかれる食堂での演奏のおひねり位であり、森からの拾得物もグンと数が減った。


 ただ自警団が付いている間に冬の間の薪や保存食などの蓄えをガンガン増やしたので生活に困る事は無い。


 今は鍛冶場の前で遊ぶ子供達を眺めつつ、村を出ていく際に必要になりそうな物を作る作業をするだけの割とゆったりとした時間をすごしている。


 まぁ、村の子供がこんな面白い物を作る同年代の子にそんなジジィみたいな生活を許す訳が無く、時々引っ張り出されては一緒に遊ぶ事もチラホラとあったりするが。


 食堂の女将が鍋を担いで鍛冶場に現れたのは、そんな日を送る間の事だった。

「自警団の人に聞いたんだけど、アンタ鐵具(鉄製品の事)の修理が出来るんだって? 農家んとこの穴あき農具の穴塞いだり出来るんだってね。それならウチの鍋の穴も塞げないかい? 新しい鍋を買うにも春まで待たないと届かないって言うじゃないか。だからコイツの穴が塞がると助かるんだけどねぇ」


 そう言って年季の入った大振りの鉄鍋をドドンとクリンの前に置いた。


「これはまた、年代物の鍋を持ってきましたねぇ……てかよく運べたよな……まぁ、鋳掛は本来こういうのを直すのが得意ですから、多分出来ると思いますよ」


 クリン一人では運べそうも無かったので、女将に手伝ってもらいレンガ炉の所まで運ぶ。農具や装備の修理ですっかりと出番の多くなったこのレンガ炉は、途中で何度か作り直し、今では最初のよりもしっかりと焼かれたレンガが規則正しく積まれ、目地も熱に強い粘土で丁寧に埋められしっかりとした物へと変貌している。


 そのレンガ炉に炭を盛り火を熾すと上に鉄鍋を乗せてもらう。因みに、鑿と鉋とノコギリが完成した事でブロアーは念願だった和式鞴が制作できたためにお役御免となっている。


 和式鞴の取手を操作し火力を上げて鍋の穴が開いた部分の不純物が焼けるのを待ち、穴の大きさに合う鉄片を詰めて鍛接材を振り掛けて一気に叩き出して穴を塞いでいく。


「本当はこう言うのは鋳掛薬(銅や鉛と錫で作るハンダみたいな物)を流すのが楽なんだけどね。材料ないし、何よりこの世界での使い方結構荒いから鉛使うの怖いんだよね。知識がある人ならいいんだけど……なさそうだしね……」


 少々手間のかかる鍛接で鍋の穴を塞ぐ。手間がかかるとは言え二十分もかからず作業は終わる。鍋が大きかったのでやり難いだけで実際に作業が済めばこんな物である。


「女将さん、出来ましたよ」

「随分簡単にやったけど、本当に穴塞がっているのかい? ……へぇ、本当に塞がっているよ! やるじゃない山向こうの子!」


「クリンです。つうか本当にこの村の奴ら名前覚えないよね。あ、それは僕も同じか。ま、いいや……それで、お代の方なんですが……」

「うん、ありがとうよ。コレがお代ね!」


 クリンが値段を言うよりも先に、クリンの掌に硬貨を一枚ポンと載せる。四分の一銅貨——これ一枚で銅貨二十五枚分の価値がある、通称中銅貨が一枚。それだけだった。


「……何ですコレ?」

「何って、お代じゃないか! 聞いたけど農具の修理が銅貨五十枚なんだろ? 随分ボッタくるね、アンタ! でもみんな払ったって言うからさ。農具で五十枚なら鍋なら二十五枚が妥当ってもんだろ!」


「……ええと……何で鍋だと半額になるのかその理屈が分からないんですが……そしてそもそも銅貨五十枚は歪み取りだけで、炭使った穴塞ぎは銀貨一枚と銅貨……」

「銀貨一枚だって!? そんなの払える訳ないじゃないか! アンタ、それは幾らなんでも強欲ってモンさね。農業用具が銅貨五十枚なら家庭用具はその半分、それが常識ってもんだろう! 演奏のおひねりの時もそうだったけど、あまり欲張るもんじゃないよ!」


 食堂の女将はそう捲くし立てると、改めてクリンに中銅貨を握らせると大きい鉄鍋をヒョイと担いで出て行ってしまった。


「いや、銀貨一枚ですらなくて一枚と銅貨二五枚なんだけど……そしてそんな常識知らねぇよ……てか炭使って鉄で穴塞いで二百五十円で出来る訳ないだろ……だめだ、やっぱ村って名が付く所の住人は人の話聞きやしない。何でソッチが勝手に値段決めるかな」


 農具の時と違って自警団の大人がいない現状では、基本この村で少年の言い分を聞く奴など居ない。鉄鍋を担いでノッシノッシと帰って行く女将の姿に、クリンは全てを諦めた様な盛大な溜息を吐くのであった。


 しかしそこで話が終わる訳では無い。その日以降女将から話を聞いたらしい村の奥様方が穴の開いた鍋やヒビの入った鍋、欠けた包丁などを持って頻繁に訪れる様になった。

 鍛冶師が居ない二年はこういう所にも響いていた様で、この機会にと一気に押し寄せてきたのだった。


 直せない程損傷した物もあったが、大部分はクリンでも修理が出来た。そして、全員置いて行くのは銅貨二十五枚ポッキリ。流石にそれは無いだろうと何人かに、


「ねぇ、おば……お姉さん、炭起こして鉄叩いてくっ付ける作業ってさ、銅貨二十五枚程度で割りに合うと思います?」

「あら、お姉さんなんて上手な拾われっ子だね。でも、アンタ十分位でチョイチョイと治しているでしょ? だからそんな物じゃないかしらね」


「……時間給かよ……ハァ、ダメだ話にならない……」


 まともに取り合おうとしない村の住人達に辟易し、村長に抗議をしたのだが——


「農具は村の依頼だからこちらで値段決めたけれども、家庭用具は村の依頼ではないからねぇ。値段交渉はそちらでやってもらわないと。それに家庭用品は農業用具よりも安くなると言うのはこの辺りでは常識だからねぇ」


 と、すました顔で言われる始末である。


「だから知らねえよ、そんな常識。ローカルルールの間違いだろう。まぁいいや。鉄材の補填だけは勝ち取ったから、もうスキル上げの続きが出来るだけ御の字と思う事にして諦めましょうかね」


 そう割り切る事にし、銅貨二十五枚と言う冗談みたいな金額で鍋釜の修理を冬の間は続ける事になった。





 こうして。仕事に遊びに人付き合いに、と何だかんだで充実した……のかどうかは謎だが、忙しい村での生活が続き年が明けてやがて春が訪れる。


 新し鍛冶師が村にやって来る季節であり——山向こうの拾われっ子と呼ばれた少年がこの村から旅立つ時期の到来である。



田舎のおばちゃんって大体人の話聞かないよね。


そして、何気にクリンの扱いが上手いネルソン君でした!しかしこうやって見るとクリン君って意外と煽り耐性無いよね……


そして、次回!

漸くクリン君が第二の村からの旅立ちを迎えます!

漸くだよ、マジで……そして密かに次話で百話目だ!


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