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神に誘われて異世界転生してみた物の、良かったのか悪かったのか微妙ですが、概ね楽しく生きています。  作者: 一一
第十三章 冒険鍛冶師 三度目の準備編

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第509話 一つの別れ、そして続く旅路。


遅くなりました。


まだ繁忙期の精神的ダメージは抜けきっていませんが、何とか頑張って連続投稿に戻そうと張り切りましたぞ(笑)






「後は……ご注文の大人サイズのリュックと……専用の背板背負子のセット。それぞれワンセットで良いのですよね? それと……石鹸とリン酢? あれ、ライラさんだけじゃなくてラックさんも? それと正露丸と抗炎症剤まで? 流石にそれを付けると全部で銀貨四十枚は超えて……と言うか、総額で勉強しても丸々依頼料分の料金を請求する事に成るのですが……?」


「ああ、構わない。これらを作るのは今の所君以外に知らないからな。次の機会があるか解らない以上は今買うしか無いからな」

「ブロランスの街にアタシらも遠征していたら良かったんだけどねぇ。しかもクリン君はこのまま素通りで魔法国行くんでしょ? ならケチる訳にはいかないわ」


 他に購入する物を聞かれて羅列した二人に、思わぬ大量購入にクリンの方が困惑したが、二人からしてみればそれは当然の話と言えた。


 リュックはクリンがファステスト村時代に作ってから更に何度か改良を加えられ、今では背中と底面の強度が必要な部分に皮が使われ、それ以外の部分もリムネル布を二重にして使われており、肩紐も中にリムネル布を詰め込んだ革が採用されていて方に食い込み難く長時間背負っても楽な様に改良されている。


 更にはそのまま木製背負子に乗せれば体感重量も減り、且つ横に寝かせて背負子に積めばリュック三個分の重量の物でも一人で持ち運べる程の容量とそれを運べる強度は、野外活動の多い冒険者の二人には魅力的に見えた様だ。


 背負子はクリンがブロランスで作った物を荷台に積んでいたのを彼らが発見し、その丈夫さより自分用も欲しがった為、こちらもリュックと同様に新しく作った物だ。


 材料は全て荷台に積んであったので、設計図も既に完成していて改良まで加えて来た物であるから、クリンにとっては野営の合間や宿の馬小屋に泊まった時に作業する程度で二、三日も有れば十分作れた。


 のだが、実は材料など最初は荷台には積んでいない。ココが椿とドンナーフォーゲルが着き添っている利点で、背負子とリュック用の布と革材を分けて欲しいと手紙を書いて持たせ小人の里に飛んでもらい、薄明か薄暮の時間に椿に扉を開いて貰って、旅立つ時に預けてきた加工済みの木材や布を小人達に運んでもらっていた。


 二人分の量だとそこまで荷物では無く、元から細工の多いリヤカーもどきだ。二重底の炭や水を保管するスペースに少量の材料を入れてあったと言われれば納得してしまう。


 そして材料を元にその場で加工できるクリンであるのなら、この様に欲しいと言われた物を新たに作って売る事が出来てしまう。


 異世界転生物に良くある様なアイテムボックスやストレージと言った物は、少なくともクリンは知らないし、HTWにも存在しなかった。


 だが小人達のお陰で似た様な事が出来てしまう。と言うか材料と道具が有れば作れてしまう変態職人がいる時点で、大したチートでは無い筈の事がチート化してしまっている。


 こうして、都合よく必要な物がその場で作られると言う不条理も、旅の間に散々道中で拾ったアレコレで物を作り出す様を見せられてきた冒険者二人も、


「「この子ならやるだろう」」


 と素直に納得してしまっており、深く追求される事は無かった。


 こうして己の強みを遺憾なく発揮させて商品を売りつける事に成功したクリンは、結局二人から前金分も丸ごと返却した上で銀貨二十枚が追加され、一人金貨一枚分の商品と交換と言う事になっていた。


 しかし。それでも冒険者二人にとっては十分見合う買い物であり、実は全く出費が無かったりするのである。それどころか臨時収入がある程であった。


 それは、道中での出来事である。魔物が存在するこの世界で二十日も旅をして全く魔物に出くわさない事など先ず無い。


 その為に護衛として二人を雇っている訳でもあるし、倒した魔物は基本護衛の臨時収入となる。


 そして、雇い主は九歳であってもブロランスの街でブイブイ言わせた露店商人のクリンである。その場で素材の買い取りが出来てしまう。


 では、道中に出て来た魔物とは何かといえば。


『デミ・ゴブリン! あれ、デミ・ゴブリンですよね、それも武装した集団! ああ、錆びているけどアレは剣に盾! 鉄っ! 鉄だよアレは! 鉄で間違いないよなぁ、鉄鉄鉄! アンタら、ただのデミ・ゴブリンじゃなくて上位種も混ざっているんだろ、なぁ!?』


 どこにでも湧く事で定評のあるデミ・ゴブリンである。それも、恐らく倒した相手から奪ったのであろう錆びた剣にボロボロの革盾に鋲が打ち付けられた盾の様な物を身に着けた、デミ・ゴブリン・ファイターと呼ばれる、上位種に相当する個体、それが三体混じっている七体程の集団だった。


 上位種のデミ・ゴブリンは通常のデミ・ゴブリンよりも手ごわい相手とされているが、クリンが雇った冒険者二人はそれなりに経験を積んだ冒険者であり、今更三体程混じっていても七体程度であるのなら遅れを取る事は無いだろう。何なら威嚇すれば逃げていく位に実力の差はあった。あったのだが……


『逃がさん……鉄、鉄置いて行けやぁ!!!!』

『ちょ、なんか雇い主様が急に荒ぶった!?』

『護衛! アタシ達護衛だから!? 倒せと言うなら倒すから!? 何で雇い主が真っ先に突っ込もうとしているのよ、ダメでしょ!』


 急な妖怪鉄ヨコセに変貌したクリンに二人の護衛冒険者がドン引きし、その様子に我に返った少年が、


『ぬっ……そ、そうでした……雇用者が被雇用者の仕事を奪う訳には行きません……チッ、仕方がない……スケさんカクさん、やっておしまいなさい!』

『誰だよそれ!? いやまぁ、倒せと言うならやるけどさ……正直蹴散らして追い返す方が楽だと思うんだけどなぁ』

『そうよ。負けないと思うけど殲滅してたら余計な時間が掛かって旅程が長引くし』


 それぞれの獲物を引き抜きながら冒険者二人がブツブツと言うのを聞いたクリンは、


『貴方達が倒した鉄……じゃない、デミ・ゴブリン達の装備は僕が買い取ります。鉄は幾らあっても困りませんから、例え錆びていてもちゃんと買い取りますよ?』

『魔石じゃないのかよ……』

『鉄って……あんな錆た物なんて大したことないでしょうに……』


『最低銀貨十枚は保障します。ココから見た限り二十枚は出しても良い感じです』


『『任せて雇い主様!!』』

 

 と、やる気になった冒険者二人によって制圧されたデミ・ゴブリン達の装備を買い取ったり、途中で彼等が仕留めた鹿やファングボアの皮もクリンが買い取っていた為、彼等への支払いは依頼料と合わせて一人金貨一枚と銀貨十枚までに増えていた。


 因みに、食べられる肉の方はクリンが美味しく料理し二人の胃袋に収まっている為に買い取りには含まれては居ない。





 その様に増額した金額と合わせたと言うよりも、金額目一杯まで交換してしまったと言う方が正確だろう。


 結局双方ともに金銭の受け渡しは無く、現物での交換となったのだが書類上は依頼実績の証明に必要な為に、買取金額も含めた一人金貨一枚と銀貨十枚(約十一万円)で記載されてサインがなされた。


「いやぁ、実にいい依頼、実に良い取引だった」

 サインされた依頼書をホクホク顔で受け取りながらラックがクリンに手を差し出し握手を求めて来た。


 それに一瞬だけキョトンとしたクリンは、直ぐに破顔し握手に応じる。


「こちらこそ、いい経験と良い知識を有難うございました。まぁ僕が冒険者に成る事はないですが、街で部屋を借りたい時にどうすればいいかが解りましたし、次に冒険者を雇う時にどの程度の報酬でどのように接すればいいかが解りました。非常に助かりましたよ」


 握手していた手を解きながら言うクリンに、ライラが苦笑しながら手を差し出す。


「少しは手加減しなさいよ。クリン君の依頼は冒険者には刺激が少し強すぎるわ。私達みたいに依頼達成後の生活が不安になる連中を量産しちゃダメよ?」


 差し出されたライラの手を握り返しながらも、クリンは肩を竦める。


「そう言われましても。護衛の皆さんの為に依頼者の僕が不便な生活するって変でしょう? 僕の旅ですから、僕が快適に旅生活したいので護衛を雇う訳ですから、そこはもう『諦めて慣れて下さい』と言うしかないですね」

「……全く……だが君らしいな」

「……ま、もうミッソーもショユーも買っちゃったから、今更よねぇ」


 クリンの全く変える気の無い発言に、二人の冒険者は苦笑を漏らし――


「では、君の護衛依頼は達成、これにて完了だな、クリン君。少し名残惜しいが……これからの旅も気を付けてな」


「本当は何日か掛けてお別れしたい所だけど……君の旅を長引かせても悪いしね。次の国でも元気でやりなさいよ」

「はい。お二人もお元気で。お二人の様な冒険者を雇えて幸運でした。実に楽しい旅ができました、ありがとうございます」


 そう言って頭を下げるクリンに、二人の冒険者は少しだけ涙ぐむ。僅か二十日程の、それも依頼人と受注者という関係であったが、二人にとってもこの護衛は特に思い出深い物となっていた様子だ。


「じゃあな、クリン君! 次の機会が有ればまた雇ってくれ!」

「元気でね。私も君の依頼なら喜んで受けるわ。だからその時まで元気でいるのよ!」


 冒険者二人に言われ、クリンは「はい! その時はよろしくお願いしますね!」と再び頭を下げながら言い――レッド・アイとミスト・ウィンドの牽くリヤカーもどきの荷台に飛び乗り、手を振って見送る二人を背に旅の続きへと進み出すのであった。






折角いいネタもらったから妖怪首置いて……じゃない、妖怪鉄ヨコセの登場です(´_ゝ`)


そして出会いもあれば別れもある。クリン君の新たな旅路の始まりだぁ!

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