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神に誘われて異世界転生してみた物の、良かったのか悪かったのか微妙ですが、概ね楽しく生きています。  作者: 一一
第十三章 冒険鍛冶師 三度目の準備編

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第508話 一つの別れ、そして続く旅路。 その1


お待たせしました。

いや、クリスマスシーズンの忙しさを舐めていたぜ……


配置転換したから今年は楽だぜ~とか思っていたらとんでもない……





 クリン達がこちらの国の国境村を出てから三日後。途中特に天候が大きく崩れたり、何かのトラブルに巻き込まれる事も無く。予定通りにこの地域の領主街に着く。


 それはすなわち、二人の冒険者との契約終了を意味する。


「ああ……普通に着いてしまった……ちぃ、ゴブリンなり狼なり野盗なり出ればもう何日か稼げたものを……チィッ、根性の無い奴らめ……」

「本当よ……もう一度位ヤキトリを食べたかったのに……クリン君もクリン君だわ。何であんな旅の間際であんな料理を作るのかしら……」

「ええと……なんで仕事が無事終わると言うのに残念そうなのですかね? 冒険者なら仕事が終われば清々する物では無いのですか?」


 何故かとてつもなく残念そうな様子の冒険者二人に、クリンが不思議そうな顔で言うのだが二人からしてみれば「誰のせいだ誰の」と言う気持ちである。


「ああ、普通はな? 不便な護衛旅生活が終わって、懐も温まって、自由に酒も飲めるし旨い物も食えるし、快適な宿で休めると喜ぶ所さ。でもな?」

「その護衛旅生活が、何で街に居た時よりも快適なのよ、って話なのよ。ご飯も美味しいし、快適な野営生活、護衛と言うよりはほぼ快適なお散歩、そして宿屋よりも寝心地の良い宿営って、一体何の話よ、ホント」


「どう考えてもこれからあの快適さは無くなるのだぞ、クリン君。みろ、俺のこの装備を!? 旅の間ちょっと汚れる度に君がメンテナンスしてくれたから、街を出る時よりも完璧な状態だ! 剣だって刃こぼれが全くないとか護衛依頼でこれまで経験した事無いぞ!?」

「と言うか、アタシらの体調自体が護衛前よりも明らかに今の方が良いわよ!? なんならお肌だって十代の頃に戻ったみたいにプルプルよ!? アタシはただの冒険者なのに何でお肌の調子が良くなっているのよ!? 普通旅が終わる頃にはガサガサよガサッガサ!」


 と、クリンに受けた被害(笑)を真顔で言って来る二人に、少年も真顔で、


「うん、それはお二人がこれまでの生活水準が低すぎて仕事も禄に選ばず装備の手入れが悪くて日頃の不摂生が祟っただけでは無いですかね。僕にとってはコレが普通なので」


 と、言い終えるや否やとてもいい笑顔を二人に向ける。


「ぬぐっ……た、確かにそれは否定出来ん……アレを知ってしまった以上は如何に俺が、否、俺達が金銭優先で余裕のない生活していたか、解ってしまったからな……」

「くっ……確かに、食事なんて腹が膨れりゃそれでいい、が冒険者だから余り気にしなかったのは事実だけど……食事が変わればココまで体調が変わると解ってしまえば、確かに此方の落ち度と言われればそれまでなのだけれど……」


 旅の間に知ってしまった快適な生活と、旨い食事、そして生活の規則正しさと長距離移動と言う運動から来る新陳代謝による体調の好調は、二人にとって衝撃的であった様子だ。


 ここまで以前と違うと戻りたくない、と言う気持ちも理解出来るが、クリンからしてみれば、少年のポリシーである「不便な生活を不便なまま送るドMの様な生活は許せない」にこの二人が抵触していただけである。


 実際にクリンが旅の間で冒険者二人に披露した食事や道具に設備は、どれもこの世界で普通に手に入る物であり、醤油も味噌も製法自体は兎も角、概念的には所詮は塩蔵の延長であり、原料自体は何なら家畜の餌扱いの物だ。


 相応に知識が有ればどれも作れるし情熱が有れば考え出せる物である。同じ物は無理にしても、近い水準であればこの世界でも十分工夫次第で出来ると言う実例でしかない。


 だから、クリンからしてみれば二人の言う、


「「こんな便利な生活に旨い物を知ってしまったら戻るのがツライ、どうしてくれる」」


 と言う尤もな意見も、所詮は、


「知らんがな」


 で終わってしまう事柄だ。いやなら頑張って生活水準を上げてね、としか言いようが無い。最も。使われている技術がこの世界では無く前世の、それもHTWと言うミゾグチコーポレーションとMZSの変態共が心血をぶち込んで濃縮還元した様な代物であるので、十分以上に隔絶した技法のなせる業なのだが――悲しい事にクリンにその自覚は無い。


 従って、実はこの二人の言う事の方が正しいのだが、この二人自身もクリンが作る物はどれもこれも見知った物が素材であり、味噌も醤油も大豆自体を知らなかっただけでそれでも元からダンジョン豆としてこの世界に存在していた事は教えられており、絶対に手に入らない様な物は何一つ使われていないので「頑張れば作れるのに頑張らないから作れない人の事など知らん」と言われてしまえば黙って納得するしかない。


 納得いくとは思えないが。


「まぁ、それは兎も角。無事に街に入れましたので、依頼内容は達成と言う事で、依頼書にサインをして報酬を支払うとしましょう!」


 街の入り口で手続きを済ませて通り抜けて、今日の宿の手配まで済ませた所で、クリンが懐から前の国で交わした依頼契約書を取り出しながら言う。


 何度か言及しているが、こちらの世界の冒険者ギルドは基本その街で完結しているか、良くても同じ国の中でしか効力が無い。


 従って、国境を超えたこの街の冒険者ギルドに行った所で、この依頼契約の達成報告をする意味が無い。


 国を跨いだ場合は依頼者――この場合はクリン――が依頼達成と認めた時点で依頼終了となり、書類にサインをして依頼金を支払う事になる。


 勿論、この場合はギルドが間に入らないので依頼人と依頼者の直接交渉となる。だから意外とトラブルになる事もあるのだ。


 基本的には国を跨ぐ場合はその国のギルドで契約を交わし、半金を前払いしてそこからギルドの手数料が引かれた分が冒険者に渡され、国を超えた後に依頼達成と依頼者が認めた段階で残金が支払われる。


 なので、ここでゴネて踏み倒していく依頼者がいたり、ワザと難癖つけて依頼料を跳ね上げようとする連中もいる。


 だが実の所その様なケースは少数だ。確かにザルの様な契約であるのだが結局は信用商売である。前の国で契約を交わした事自体はその国のギルドに記録が残っているし、その記録を元に作成された依頼書が双方の手元にある。


 此方の国では確かに踏み倒せるのだが、それをやってしまえば元の国に戻った時に冒険者に依頼がしにくくなる。


 クリンが今回の依頼をする際にやった様に、依頼終了書があればそれは他のギルドでもちゃんと手続きを踏んでいる証拠となる。


 踏み倒してその終了書に冒険者の署名が無かったり、或いは冒険者ギルドに残された依頼内容と勝手に変更されていた場合に、その依頼者、または冒険者は不審がられる。そして、場合によっては依頼を拒否される事も有る。


 また、移った後の国でも冒険者ギルドに終了書にサインを貰えなかったと通達すれば、依頼料が代わりに払われたりするような事は無いが、問題行動を起こす依頼者、或いは冒険者と見なされてその街や近隣の冒険者ギルドに通達が行く。


 結果として元の国に戻れないか、両方の国で仕事を依頼しないと言う場合を除いて、どちらにもデメリットが大きいのだ。


 この辺が信用商売であり、魔物が居る世界では庶民にとって一番手軽な戦力ないし労働力を蔑ろに出来ない理由でもあるし、ほぼならず者と言っていい冒険者がお行儀よくできている理由でもある。


「ああ……残念だが仕方がない。これ以上依頼を長引かせる理由も無いしな」

「そうね……名残惜しいけれども、コレで依頼終了よね……残念だわ」

「だからそれは普通僕の台詞だと思うのですが……まぁ、それは良いとして。ではサインをしますが……本当に依頼報酬は変更してしまっていいのですかね?」


「ああ、構わない。と言うか此方がお願いしたい」

「ま、ぶっちゃけ旅の間の出費がほぼゼロだった所か、臨時収入まで出たし。それでも今更銀貨四十枚程度貰う位なら、変更してもらえる方が有難いわ」


 当初の予定では一人銀貨八十枚(約八万円)で、契約時に半金である銀貨四十枚が既に支払われている。


 契約では残り四十枚が支払われる筈であったのだが、二人はそれよりも物納の方を望んだ様で、クリンは急遽リヤカーもどきの荷台から二人が望んだ物を取り出した。


「では……前に言っていた様に一人銀貨四十枚分ではなく、お二人で八十枚分の商品と交換と言う事で宜しいでしょうか?」

「ああ、それで頼む。まずは例のリュックサックと言う背負いカバンだ。それを二つ頼む。それと旅の間借りていた革の敷物だな。ライラもこの二つは要るだろ?」

「ええ。それとワタシは例のアレ、ハーネスベルトと専用ポーチ。上下共にね。足りなければ追加でお金出すわ」


「おお、そう言う手もあったな! じゃ、俺はハーネスベルトは上だけでいい。それと、あのナイフを譲ってくれ。足りない分は俺も払うから」


 と、それぞれ希望の物を挙げていく。そう、彼らが現金よりも物納で選んだ物はクリンが持ち歩いていた道具類に装備品だ。


 ハーネスベルトとはクリンが付けた仮称だが、要するにカルロの義肢を取り付ける為の補助具として作った、TでMなレボリューション的なベルト型の服だ。


 アレを健常な人間の装備として後付けでポーチやストラップを取り付けやすくした物を、「何れ何処かで商品にできるかも」とクリンが旅の間の手慰みとして作っていたのを見た二人の冒険者がその有用性に気が付き欲しがったのだ。


 その時から旅の終わりに依頼料の代わりに引き渡す事となっており、既このハーネスベルトは二人のサイズに合わせて調整も済んでいる。


 ポーチはそのハーネスベルトに取り付けられるサイズの、小さい箱型の袋だ。要するに、クリンはカルロの為にハーネスベルトを作った時から、


『あれ、これって要するにタクティカルベストなんじゃね?』


 と思ってから、密かに此方の世界用にアレンジしたタクティカルベストを爆誕させていた訳である。冒険者の目から見たら実にシンプルかつ機能的に見えたのも仕方無い。


 そして敷物は、クリンがリヤカーもどきの側面を魔改造して展開式の休憩スペースを作った際、地面に直接座るのはアレだから、と例の酪農村で手に入れた牛皮を加工して作った物で、敷物と言っているが裏面をリムネルの布で裏縫いしてあるので外套として直接羽織る事も出来るし、それこそ毛布代りに被る事も出来る。


 移動中は丸めて運んでも良いし外套として着こんでも良いので持ち運びが実に楽で、これも二人にとっては欲しい物となっている。


 後、ラックが欲しがったナイフとは、クリンが腰に指しているブッシュ・クラフトナイフ、「異世界版カチ割る君一号改・ばーじょんつー」


 である。元はクリンが初めて作った、打ち直しでは無い完全自作のブッシュ・クラフトナイフだったが、ブロランスの街を出て長旅をする事を決意した時に、思い入れがある物の折角だから野外活動に特化した物にしようと打ち直した物である。


 元はとにかく丈夫で満足がいかない鍛冶道具に炉でも作れる様にと、実にシンプルな形状と構造で作った物だ。


 その為、鉄板に刃を付けた様な代物でナイフと言うよりは鉈に近い物だった。その為思い入れはある物の設備が整い、斧や、それこそ鉈を作れる様になってしまうと些か使い勝手が悪くなってきていた。


 更には、確かに外見的には殆ど成長していないクリンであるが、それでもやはり作ってから二年も経てばどうしてもサイズが合わなくなってくる。


 そこで将来を信じて二回り程大きく作り直し、またシンプルな直線構造だった形状を見直し、より切りやすく刃に曲線を付け、なかごの構造が大きく前にせり出してヒルトの役目をする構造――所謂フルタング構造にして、飛び出た部分と付け根の窪みに枝なり何なりを引っ掛けて折りやすい様にした訳である。


 そして、背の部分には僅かにノコギリの刃の様な部分を設け、縄や蔦を切るのに役立つようにしている。また柄尻には茎が飛び出している形状で穴があけられており、そこに紐を通して使えるのは勿論、飛び出た茎部分で小枝や小石を割ったり割いた入り出来る仕様に変更されている。


 全体的に洗練され、より野外活動に多機能に対応する様に打ち直されているのが、今のクリンの腰に指さっているブッシュ・クラフトナイフだ。


 なのだが……確かにコレ一本あれば大体の状況に対応できる、サバイバルナイフとして利用できる一品であるのだが、そもそもクリンは野外活動を普通にするクラフターである。しかも今は荷車に普通に道具が一式揃いで積まれている。


 斧も有ればノコギリもあるし何なら普通にナイフも有る。更には彫刻刀もあるし鑿も鉋もある。挙句に冒険者も二人雇っている。


 折角万全の準備の為にと作った「異世界版カチ割る君一号改」だが、出番など全くなかったのである。


 しかし、冒険者であるラックの目に留まり、クリンには意味が無くても彼にはとても有用である事に違いは無く、この程思い入れがある物のお買い上げしていただく事となった訳であった。







前までは23日から仕事が激減して年末年始の6日は休みだったのが、普通に週休二日で祝日関係無しなので正月もお仕事でございます(´_ゝ`)


その分暇かなぁ、とか思っていたけどちょっと忙しいネ……


おじちゃん、この忙しさにはもう着いていけないお年頃になったようです……

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