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神に誘われて異世界転生してみた物の、良かったのか悪かったのか微妙ですが、概ね楽しく生きています。  作者: 一一
第十三章 冒険鍛冶師 三度目の準備編

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第500話 閑話54。 ある落日にある村の一幕。 後編。


お待たせしました。


大分調子が良くなりました。

と言うよりも書きたい病が風邪と言う病気よりも勝った模様(´▽`*)


ま、閑話は今回で終わる予定で、501話から新章突入予定。

ですので、また少し時間貰うかもしれないので、それで、ね(笑)





朴念仁と呼ばれる割には電光石火の早業で、一仕事前に未来の嫁をゲットして見せたネルソンは、キッチリとメリアンを自宅まで送り届けた後に、そのまま森に向かい作業に必要なサイズの落ち枝や乾燥している倒木を集める。


 ちゃんとした木材も木工所で手に入れられるのだがそれだとお金が掛かるので、こうやってちょっとした素材として使う分を森で直接集めている。


 この辺りは割とクリンの影響が強い。短期間だが少年が必要な物は何でも森なりなんなりに行って好き勝手集めていたので、そんな物なのだろうと自分もそれに習った結果だ。


 師匠である鍛冶師の男もそれについて特に何も言わないので、今では鍛冶で作った物の柄などに使う木製部位は大体全て森で集めた物を加工している。


 従って、実は木工の腕前もそれなりに上がっており、既に木工スキルを覚えていたりするのだが、ここもクリンと同じく神殿などで調べていないので殆ど無自覚だ。


 今回集めているのはメインは農機具に使う柄だが、それ以外にも弓に加工できそうな枝も同時に狙っている。何故かと言えば。


「そろそろ交換用の弓バネを作っておきたいからなぁ」


 と言う事らしい。急成長により同年代の子供よりも恵まれた体となりつつあるネルソンだが、それでも八歳などと言う年齢から鍛冶師を始めて、十二歳そこそこで師匠の無茶振りに答えられる鍛冶作業が出来ているのも、クリンが残して行った「なんちゃってスプリングハンマー」があるお陰だ。


 アレがあるお陰で未だ体が出来上がっていないネルソン一人でも鋳鍛造の工法で鍛冶作業が出来ている。


 もしあれが無ければ自分で仕事を一切しない師匠の元で鍛冶作業が出来なかったであろう事はこの少年も十分理解していた。


 その為、クリンが残して行ったなんちゃってスプリングハンマーの手入れは少年には必要不可欠であり、一番損耗しやすい弓バネの交換部品を自作するのは、生命線と言っていい程に重要な事であった。


「ホント、こうやって自分がその立場になって見ると、アイツの変態さが分かるよなぁ……アレを作ってまで鍛冶したがる執念に、それを可能にする木工技術とか、鍛冶作業の為に関係無い技術を磨くとか、ししょーが本末転倒の天然見本って言うのが良く分かるぜ」


 材料となる枝木を集めつつネルソンは独り呟く。クリンが居た当時は、あの目的の為には全力で寄り道も後戻りもして見せる姿勢は全く理解出来なかったが、今となってはどれだけあの少年が自分の先に行っていたのか、今になって恐ろしく思う所である。


「アレで俺より歳下とか、詐欺だよなぁ……お? 何か結構太目の倒木があるじゃん! あの真ん中あたりなんてししょーが欲しそうだよなぁ」


 運良く殆ど腐っていない倒木を見つけ、その身がしっかりと詰んでいる事を確認したネルソンは、鍛冶師の男に言われた事を思い出し、その倒木から必要な部位を切り出す事に決めたのであった。






「ししょー。ししょー! 森ン中で丁度よさげな木見つけたら持って来たぜー! なぁなぁししょ―、居るんだろー? 重てぇんだからさっさと出て来てよ~」


 おのれの住処の隣に鍛冶師の男が勝手に立てた小屋の扉を乱暴に叩きながらネルソンは中に向かって呼びかける。


 あの鍛冶師の男は鍛冶は殆どしないが、その代わりに今は時間さえあれば趣味の作業に熱中して出て来ない事を知っている。


 だから殊更遠慮なく扉を叩きまくったのだが――


「やかましいぞクソガキ! んなデケェ声と音立てなくたって聞こえてらぁ!」

 バンッ! と乱暴に扉が開け放たれ、鍛冶師の男が怒鳴りながら出て来る。

「お、おお!? 何か随分出て来るの早いじゃん!? 今日は作業してなかったのか?」


「どこかの馬鹿弟子のお陰で出来なかったんだよ! ったく、朴念仁かと思いきや存外に手ぇ早ぇ上にスケコマシだとはワシも迂闊だったぜ!」

「は? 何の話してんだししょ―?」


 唐突に言われた言葉に、ネルソンがキョトンとしていると、鍛冶師の男はジッとネルソンの顔を見つめ――


「……ハン! 上機嫌そうなツラしやがって。嫁ゲットしたクソガキは余裕だな?」

「ブッ!?」


「だが、十五までにゃ養える程度の半人前になって見せるたぁ良く言ったじゃねぇか。いいだろう、その気概に免じてそれ位までに仕込んでやらぁな。となれば今まで見てぇな温い教え方じゃ無ぇ、本気で鍛えてやるから覚悟しとけよクソガキ!」

「え、アレで本気じゃねえとか、マジ!? あれ以上になったら俺死ぬじゃん!? って、そうじゃねえよ、何でししょーがソレ知ってんだよ!?」


「あ? んなもん、コッチが聞きもしねえのに態々ご報告をくれる暇人がこの村にゃ腐る程いるってこったろ! 見ろこの様を!?」


 ネルソンが驚愕しているのを他所に、それまで入口を塞ぐように立っていた鍛冶師の男が体をずらし、ネルソンの目にも中が映るようにする。


「……な、なんじゃこりゃぁ!?」


 少年の眼前に広がるのは、そこまで広くない小屋の中に、所せましと積まれた野菜やら肉やら麦やらの山だ。


「何だも何もクソガキのせいだろうが! テメェ、村のど真ん中で堂々とあの嬢ちゃん口説き落としたそうだな? いい度胸してやがるじゃねえか。んな真似してくれたお陰でよ、様子をキッチリ覗いていた連中が、大挙して人ン所きて『弟子が身を固めるらしい、おめでとう!』とかぬかして、コッチの話聞かねえでそれぞれご祝儀だの何だのとぬかして置いて行きやがったんだよ! つうかそれは百歩譲っていいとして、なんでこの村の連中は揃いも揃って食い物なんだよ! もうジジィのワシん所にこんな大量に持って来てどうしろってんだよ、ああんっ!?」


「いや、それ俺のせい!? って、え、マジで皆が来てコレ置いて行ったの!? え、朝だぞ、俺がメリアンを送って行ったの!? 何で精々鐘一つか一つ半(三時間から四時間半)程度の間でこんな量が集まる程人に知られてんの!?」


「こんな娯楽のねぇド田舎の村で公然と嫁取りなんて真似すりゃ、あっという間に広まるって事位、寧ろお前の方が詳しい筈だろうが? あれだろ、自慢したかったんだろ? このクソガキめ!」

「……ああ、言われてみればそうだったな!? クリンがこの村に来た時に、あっという間に噂が村に広まったのを確かに俺も聞いていたし!? でも幾らなんでもコレは早すぎだし、広まり過ぎじゃね? 噂話好き過ぎだろうウチの村!?」


「だからワシが知らねえよ、そんな事。こちとら町生まれの町育ちだ。ワシの方がびっくりだよド田舎の村! まぁでも……正直、将来テメェの嫁をどうするか悩んでいた所だったから助かるぜ。ワシのツテでこんな田舎の村に嫁いでくれる物好き居ねぇからな。そこン所は手間のかからねぇ出来た弟子だと褒めてやらぁ」

「はぁ!? なんだそれ? 俺が誰を嫁にするかなんてししょ―に関係ねぇじゃん?」


「……ああ、そうだった。オメェは元は衛兵崩れのガキだったな。職人のこう言うアレコレは解らねえよな……まぁ何れはテメエにも教えてやるけど、それは将来の話だ。そんな事よりももっと差し迫った問題があらぁ」

「問題? これ以上なんかあるんか?」


「ありまくりだ。スケコマシの弟子のお陰で小屋ン中がこの有様だ! お陰で作業に成らねぇんだよ! とっとと全部テメエの小屋に持って行けや!!」

「ああ……確かにコレじゃぁ木の加工なんて出来ないし、折角持ってきた木材も置き場が……って、え!? これ全部!?」


「当たり前だろう? ワシはもうこんなに喰えねえよ! 小屋ン中で腐らせたらそれこそ話にならねぇ。テメェは未だガキなんだからバリバリ食えんだろ。責任もって全部テメエが喰いやがれや!」

「いや無理だから!? この量ってそれこそメリアンん所の食堂で捌く量じゃねぇの! そもそも親方は俺より飯くうじゃ……あ、ヤベッ……ゲフォア!?」


 しまった、とネルソンが思った時にはすでに遅く。少年が鍛冶師の男の為に持ってきた丸太の様な木材がそのまま彼の顔面に投げつけられ、


「何度言えば解りやがる! テメエの親の方になった覚えはねえんだよ! これ以上テメエの面倒なんて見たくはねぇんだよ、ワシは!!」


 と言う怒鳴り声が意識が薄れ地面に倒れていくネルソンの耳に辛うじて入った。





 結局。あの後直ぐに意識を取り戻したネルソンに、禄に顔を合わせた事が無い筈の村民からご祝儀として貰った食料を全部押し付け、


「いや、これじゃ俺の方が狭くなって作業に成らないじゃん!?」


 と騒ぎ立てるネルソンに「知るか!」と怒鳴って追い返した鍛冶師の男は、ようやく静かに、そして広さを取り戻した小屋の中で、一人静かに作業をしていた。


 手にはこの村に来た時に約束通りに譲られた鍛冶道具、その中から某少年が打ち直した鑿と金槌が握られている。


 そして眼前に鍛冶師としての己の最後の弟子と決めた不肖の馬鹿弟子が森で拾って来た先程の木材が置かれている。


 鍛冶師の男はその木材に向けて一心不乱に鑿を立てて金槌で叩き彫り込んでいる。良く見れば、作業する鍛冶師の男の前、掘っ立て小屋であるのにそこだけはやたらとしっかりと組まれた壁と、その側に置かれた木像。


 かつて、とある少年が嫌がらせと腕自慢で置いて行った木像――「なんちゃって阿弥陀如来立像、セルヴァン神バージョン『ご利益有りそうななさそうな君』一号」。因みにキッチリと台座の下の方に日本語で彫ってあるのだが誰も読めない――が、鍛冶場の物置から移され設置されていた。


「むぅ……やはり中々この彫り込みにまでは到達できん……間違いなく、この鑿を使っている筈だが……どうやったらこの滑らかな曲線が彫れるんだ……?」


 鍛冶師の男は、目の前の立像をモデルに、自身で彫像を彫っていたのだ。元々、この小屋は男が静かに彫刻をしたいからと建てた物だ。


 勿論男が彫っているのは木像だけでは無い。鍛冶場に有った神棚も、見様見真似ではあるが模倣して自ら部品を削り出し、この小屋の高い位置に棚と共に組み上げて設置済みである。そして、その神棚には少年が残して行った小型のセルヴァン像と、その隣には己が模倣して彫った木像が、幾つも並んで乗せられている。


 一応、彫り上がった順番からクリンの像の隣に並べて行っているので、最初の頃に作った、神棚の一番端にある物から比べれば、クリン作のセルヴァン像の隣に置かれた物はかなり精巧な作りになっている。


 だがそれでもこの鍛冶師の男は一向に満足しない。


「まだまだ、全然届かねぇ……ったく、何だぁこりゃぁ? ワシは確かに木工は素人だったさ……だが鍛冶師として培った技術を応用してこの像が作られたのなら、このワシでも同じように作れる筈だ。それなのにサッパリ近づけている気がしねぇ」


 鍛冶の弟子であるネルソンによれば、


「え? 俺にはここ最近の親方の彫像はクリンのにかなり近いと思うんだけど?」


 と鼻を穿りながら言っていたのだが、男自身は全然そうは思わない。確実に、鑿の扱いはクリンの方が上だと己自身が認めてしまっている。


「冗談じゃねぇ……鍛冶の腕は未だ辛うじて俺の方が上だろうが……『その道具の扱い方』で負けているとか、そりゃあ認められねぇ。ガキに出来た事が俺に出来ねぇなんて事はねえ筈だ……ある訳がねえんだ」


 鍛冶師としては殆ど引退しているのだが、それでも尚。三十年以上を鍛冶師として生きて来た男にとって、譲れない物が、己の眼前で神像としてそそり立っている。


「見ていろよクソガキ……若ぇテメエに煽りくれられたままで黙っていられるか。絶対に目にもの見せてやるからまってやがれよ……!」


 こうして気が付けば。鍛冶師の男は既に鍛冶師としてでは無く木工師としての作業に掛かり切りとなっているのだが、そんな事はお構いなしに毎日、暇さえあれば木を彫る生活を送る様になっていた。


 結局。職人と言うのは根底にはどいつもこいつも負けず嫌いである様子だ。まだ見ぬ変態少年に『どうだ、テメェに出来る事は俺にも出来んだよ!』と言い放って見せる為に、鍛冶師の男は鍛冶道具を振るって木工に精を出すのであった。





 尚。ネルソンの小屋に押し込まれた大量の食糧は、それまで数日に一度だったのが、翌日から通い妻の様に毎日顔を出す様になったメリアンによって、美味しく加工され、それでもネルソン一人では食べきれないからと、暫くの間は鍛冶師の男とネルソン、そして押しかけ女房と化したメリアンの三人で二週間(二十日)かけて全て処理されたと言う。







やぁ、良い子の皆!

元気にしていたかな? トーマスお兄さんだ!


HAHAHAHAHAHAHA!

最近出番が無かったが、閑話でも500回と言う節目に僕を出すとか、なかなか分かっている作者じゃないか!


そして、僕が出て来ていると言う事は、そう、解説回だ!


と言う事で早速、今回の解説は!


ズバリ、「中世時代の職人達の嫁取り事情について」だ!

この世界は中世ヨーロッパをモデルにしているので、当然この手の風習もそれに習っている。


そして、中世ヨーロッパでは職人と言うのは中々嫁の成り手が居ないのだ。いや。正確には居るのだよ。


ただ……「勤まる嫁が居ない」と言うのが正確かもしれない。


職人と言うのは中世ヨーロッパでは、庶民の中でも高給取りの仕事の一つだ。親方になって工房を開けば勿論、雇われとして働くにしても、中々良い給料が支払われている。


だから、実は職人と言うのは大体どの職種でも意外と女性からモテたのだよ。だが、職人と言うのは基本、工場の中だけの狭い世界でしか生きていない。


だから女性と知り合う機会など殆ど無い!


ではどうするかと言えば……金がある、けど女が居ない、となればやる事は一つ。そう、娼館巡りだ。


金回りが良いのだから当然娼婦からも人気があったのが昔の職人だ。


ただ、昔から職人と言うのは単純なのが多い。直ぐにのめり込んで高給取りなのに借金にまみれたり、酒におぼれたりする。


そこで親方達は、自分の工房の職人や弟子が踏み外さない様に、腕が良い職人や独立できる見込みの有る弟子に、自分のコネを使って嫁を探してきて宛がうのも、当時の親方の大事な仕事の一つだった、とされている。


職人仲間のツテを使って、年頃の娘がいないか探して嫁にきてもらう、仲人をする訳だ。職人の娘なら職人の扱いになれている訳だから、一般女性や娼婦上がりよりも上手く扱える、と言う事だな。


劇中で親方が嫁がどうのと言ったのも、この習慣がある為であり、一応弟子と呼べる立場のネルソンが、将来弟子を取った場合、この習慣が取れる様に後で教えようと考えていた、と言う訳さ。


以上、僕の解説はココまでだ。

参考になったかな?


それでは良い子の皆!

また会う時まで元気でな!!

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