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第126話 余りにもテンプレが起きないと、テンプレが起きた時に妙に嬉しかったりする物らしい。

子供が商売するのは例え異世界でも中々大変な様です。例えそれが転生した変態技術の持ち主の子供であっても、ね。

 子供ながらもクリンが露店を開いているのには幾つか理由がある。一番は、意外と子供でも露店を開いている事があると言うのが理由だ。親の手伝いであったり、親が何らかの理由で働けなくて代わりに露店を開いたり、又は孤児の様な連中が街や街の外で拾い集めた野草などの類いの物を売るなどのケースがあった。流石にクリンの年齢の子供はごく少数だが前例があるので紛れやすかったのが第一だ。


 第二はクリンの年齢では卸業として特定の商会や団体に納品する事が難しい点だ。二番目の村の例を挙げるまでも無く、基本この世界では年齢を見て値段を決める習性がある。彼が子供と言う時点でマトモに取り合ってくれないか、安く買いたたいて来るかの二択だ。


 村に居た時はそこまでお金を稼ぐ必要が無く、スキルを覚えるのを最優先していた為に、あの様な冗談みたいな金額の仕事でも我慢していたが、大きな街だと何をするにも金が掛かり村と同じく最安値でも構わないと言う訳にも行かなくなる。


 同じ理由で街の雑用をするにしてもこちらはライバルが多く、またそう言う仕事をするのは基本クリンよりも年長者が多く、殆どの仕事は取られてしまっている。


 となるとクリンの様に技術力があるのなら、この様に場所代を払って露店を開いて商売をするのが一番現実的な事になる。


 それでも本来はやはり八歳が露店を開くとなれば周囲から買い叩かれそうな所だが、運がいい事にトマソンの紹介でテオドラと知り合う事が出来た。


 あの老婆は名士と言う程では無いが、子供相手に勉強を教えている関係でソコソコ顔が広い。また旦那が健在の時には薬師としても活動していたので、この街に移ってからもそちらの腕で近隣住人に知られている。


 つまりクリンはテオドラの手習い所の学徒と言う立場で、本来孤児として何の信頼も無い所を彼女が半保護者と言う立ち位置になっている為、他所の街で露店を開くよりは遥かにやりやすくなっている。


 実の所クリンがテオドラの下に頻繁に顔を出しているのはコレが一番の理由だったりする。身元保証人では無いが周囲が勝手にそう受け取ってくれるので、少年にとってはやりやすい事この上なく商品もテオドラの関係が匂うような薬品類や愛飲している飲み物等を売る事で、あの老婆の顔見知りが最初から客として訪れてくれている。


 クリンにとってはコレは大変有難い事であり、だからこそ金にならないのに制作した家具などをテオドラの家に持ち込んで魔改造しているのである。モニターとしての意味も確かに在るが、感謝と恩返しの意味合いの方が強い。


 旦那の遺品の写本はただの口実であり、頻繁に顔を出しているのも少年なりの誠意のつもりである。テオドラの方もその事には薄々気が付いているので、あのように憎まれ口をたたき合うだけで完全に少年を追い出そうとはしていなかった。


 そのような理由でクリンはこの街で露店を開き、幼いながらも単価の高い商品を販売して顧客もついている状況なのである。





 しかし、幾らドーラ婆さんの知人が多くとも、子供が銀貨単位がする様な売買をしている姿はやはり目立つ。当然ではあるが——


「お? 何だこの店。ガキが生意気に露店なんてしていやがる」

「本当だな。 どうせどこかで盗んで来た物だろうが随分儲けてやがる様だな」


 ——こう言う、あからさまな輩も出て来る。やや薄汚れた格好の、如何にもチンピラと言う様相の男二人。クリンが売れた物の料金入れに使ている壷に大銅貨や銀貨などの割合高額な貨幣が入っているのを目ざとく見止め、因縁を掛けて来た様だった。


「どうせ貧民街の小僧だろ? 盗んだ品物で商売するたぁいい度胸じゃねえか」

「全くだぜ。衛兵呼ばれたくなければさっさと店畳んで出て行きな。ここはお前みたいなガキが居る場所じゃねえんだよ」


「盗品扱う様なガキはろくでもねえ。そういうオイタをしたらどうなるか、大人の俺らが教えてやらねえとな」


 などと口々に言い、薄ら笑いを浮かべながらクリンに詰め寄って来る。要するに金をよこせと言う事である。


「はぁ……最近少なくなったと思ったらまた出て来たかぁ……」


 こう言う輩に絡まれるのは初めてでは無い。露店を始めた二年近く前にはほぼ毎回この手の連中が絡んで来ている。だが長くこの地区で露店を続けてきた今は顔見知りも増え絡まれる事も少なくなってきた。それでも時々思い出した様にこの手の連中は何処からともなく現れる。そうクリンが思っていると——後ろでおとなしく地に伏せていた二匹の犬が静かに唸り出し——


『処しますか? お館様』

「処さない。こんな人目の多い所ではダメです」


『では遣りますか? お館様』

「遣りもしません! どこで覚えたその言い回しっ!?」


 クリンだけに聞こえる声が物騒な事を言い出すのをバッサリと止める。


「「何一人でブツブツ言ってんだ、ガキ!?」」

「別に何でも。それより、要するにおじさん達は金よこせって言っている訳ですよね?」


「ああ? 何言ってんだ? 俺らがそんな真似する訳ないだろ? ただ盗んだ物で商売しちゃいけねえって、こう言っているだけだぜ。なぁ?」

「そうそう。お前があくどい真似して稼いだ金は、俺たちが代わりに返しておいてやるってだけの話だ、なぁ?」


 などとわざとらしく二人で言い合う。その様子に盛大に「ハァーッ」とため息を吐き、


「それ思いっきり言っているじゃん」


 と諦めたように言いつつ金を纏めて入れておいた壷から銅貨を適当に数枚手に握る。感触的に中銅貨も掴んでしまった様だが仕方がない、とクリンは思う事にする。


「お、何だ? 随分話の分かるガキじゃないか」

「だがそれじゃ少ないな。そっちじゃなく壷の方をよこしな」


 と、チンピラ崩れが言うのを無視して、クリンは手にした数枚の銅貨を差し出し、わざとらしい大声で、


「可哀そうに、僕みたいな子供に集らなければいけない位に食い詰めたんですねっ! 空腹は辛いですもの、どうぞこのお金で飢えを凌ぐと良いですよっ!! コレだけあれば向うに出ている屋台で汁物の一杯でも買えますから。さ、どうぞご遠慮なさらずにっ! 僕の様な子供でもっ!! 大人の貴方達に恵んでやれる程度の収入はあります! ええ、お気になさらずっ! ちゃんとっ!! 仕事すればこの程度は直ぐ稼げますからっ!! 僕でもねっ!!」


 さも同情していますよ、と言う体で周囲に聞こえる様に言う。その声が響いた後。途端に周囲からクスクス笑いや爆笑する声が聞こえて来る。


「だせぇ……アイツらあんな子供から集ろうとしているのかよ……」

「うっわ……ユスるにしてもあんな小さい子供からしか出来ないのか情けない……」


 そんなささやき声まで聞こえて来る。当然それはチンピラ崩れの男たちにも聞こえている。二人して顔を真っ赤にし、鬼の形相と言う奴でクリンを睨みつける。


「このガキ……ふざけた真似してんじゃねえぞ! 大人ナメたら痛い目見るぞ!?」

「おい……俺たちに恥かかせて、タダで済むと思うなよ? この落とし前どうつけてくれるんだガキ!!」


 と、凄んで来るが、クリンの方は割と平然とした様子で、


『おお、久しぶりの小物臭の漂うテンプレチンピラっ!! こう言うのが出て来ると矢張り異世界転生したんだなぁって実感わくよねぇ!!』


 とか考えていたりする。一時期は毎日の様に湧いていたのでやや飽きて来ていたのだが、ここ最近はご無沙汰(?)であったので、新鮮な気分に浸っている。


 少年が平然としているのは大八車の裏で伏せていた二匹の犬が起き上がり「「グルルルルルルッ」」と重低音ながら獰猛な唸りを上げだしていた事と、何よりもこのチンピラ共がこの市場の事を良く知らない、所謂新参者であると分かったからだ。


 この市場に何度も通っていたのなら、先程少年が銅貨を出した時点で受け取ってさっさと退散している筈だからだ。しつこく残っている時点でクリンには久しぶりに見る、テンプレチンピラなので感動していたのだ。


 金を出せと脅しておいて金を「出し方が気に入らない」と言う理由でまだ目の前に居る時点で、コイツ等は大馬鹿野郎で物を知らなさ過ぎる。何故なら——

キャラもテンプレなら引きもテンプレにしてみました(´_ゝ`)


小説書いていたらさ、やっぱ一度はこう言う良い所でぶつ切りして次回に続く!ってやって見たくなるよねっ(・∀・)


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