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第123話 露店の準備中に。

ちょっと暑くて頭が回らなくなってきているので、少し短めです。


 先ずは二匹の犬を、運んでもらった荷車から外す。この荷車は荷台部分の長さは二・四メートル、幅が七十センチの小ぶりなもので、柄の長さを入れても長さ三・一メートルだ。元々クリン一人で運べる様にHTWのレシピに有った大八車を元に、クリンが現在の持てる限りの木工技術の粋を集めて作った物で、二匹の犬が運んでくれる様になってから更に改良した自慢の荷車だ。


 二匹の犬が並んで立って丁度水平になる様に調節したハーネス(留め具)を外して犬達を解放すると斜めに傾くのだが、荷台の部分の前後にはそれぞれ伸縮式の脚が取り付けられており、止めていた楔を取ると脚が地面に落ちて接触し、丁度いい高さの所でまた楔を差し込めば水平で固定される仕組みだ。


 足が伸びて地面に固定されたら、後は車輪の前後に木で作ったストッパーを差し込めば、多少の傾斜では動かなくなる。


 尚、この車輪の軸には外から見えない様に、コロ式のベアリング(設備の関係でまだボールベアリングは作れていない)を仕込んであるので、かなり軽快に車輪が回る。そして車軸の所にはコレも解り難いように板バネが取り付けてあったりもする。


 そうして固定されたら、柄の部分も楔を外せば中程から折れ追加の脚となる。そのように変形させたら、荷台の下に差し込んであった板を引っ張り出し柄の部分の空いたスペースに被せれば天板代わりになり、物を置くスペースが出来る。


 後は積んで来た荷台の売り物をそのスペースに移せば、大八車から簡易露店に早変わりである。


 この大八車、見た目はこの世界にも普通にある、少しぼろい感じの荷車だが、随所にオーバーテクノロジーが盛り込まれており、実はクリンが持ち込んだ商品のどれよりも高価な物だったりする。直接動かさなければ先ずバレない様に色々と偽装をしているが、バレたら籐細工の椅子どころでは無い騒ぎになる代物だったりする。


『まぁ、見た感じこの世界の人達じゃまだ再現出来ないし、見ただけで解る様なヘマはしていないから大丈夫でしょ』


 と、少年は割と気楽に考えている。実際に今までこの荷車の異常性に気が付いた人物はドーラばぁさんも含めていないので、クリンの自信はあながち間違いでも無い。


 まぁ、実の所色々と細工をしている関係で強度的に不安があり故障も多く、頻繁に手直ししないと直ぐに壊れて使えなくなる為に、直ぐに修理出来るクリンが使う大前提で何とか運用出来ている、ある意味欠陥品でもある。万が一盗難に遭っても技術がバレる可能性は極めて低かった。





 クリンが荷台の荷物から商品を取り出し並べている間、犬達は少し離れた所で行儀よく地に伏せてくつろぎつつも此方を伺っているが、モドキは終始荷物の上でへそ天で優雅に寝そべっている。


 時折、クリンが猫に向けて「そこの荷物出したいんだけど」というと、面倒臭そうに目を細め、ゴロンと一転がりして場所をずらすとやはりへそ天で寝転がったまま優雅に尻尾を揺らしていた。


「……君は自由で良いですねぇ、ナッ太郎……」


 思わず出たクリンの呟きに、へそ天で転がるモドキ……ナッ太郎は薄目を開けてチラリと少年を見やると、尻尾をフリフリして「おうよ」とでも言う様にタシンッと一回荷物に叩き付けて再び目を閉じてそのまま寝てしまった。


 その余りにもふてぶてしい様子に、クリンは「ハァ」と溜息を吐いたが何も言わずに商品並べを続ける。と——


「お、一週間振りじゃないかボウズ。なんだ場所変えていたのか?」


 隣でクリンと同じく荷物を並べ、露店の準備をしていた中年の男が声を掛けて来る。この男もこの区画を専門にしており、この二年の間で割と近い場所で商売している関係で、露店が隣になればこの様に声を掛けて来る様になっていた。


「おはようございます。いえ、ちょっと新商品を売り出そうとしてアレやコレやと作成している内に思っていたよりも時間が掛かりまして……」

「ほう、ボウズの新作かい。今度は何だい? 薬かい? それとも茶かい? 木工品とか鐵具とかかい? もしかして何時もの練習に作ったとか言う木像かい?」


 それらはクリンが露店で頻繁に売りに出している物だ。大体の露店は決まった物を売る。例えばこの中年男なら畑で獲れた作物だし、向かいでこちらを興味深そうに見ている馴染みの女性は自家製の布。そう言った具合に毎回同じ商品を扱うのが通常なのだが、クリンはクラフタースキル上げを兼ねている関係で、扱う商品がとてつもなく広い。


 とは言え、売ったらヤバい物や売れそうにない物も多数あるので、大体扱うのは木工で作る食器類か同じ食器でも陶器製の物か、調子に乗って作り過ぎて住処を圧迫している神像やそれを発展させ、前世のフィギュアを模した木像か、手鍋や小瓶などの小ぶりの鐵具、そしてドーラの所で覚えた薬草を用いた薬(実際はそれを元にHTWのレシピで魔改造した物)等を売っていた。


「いえ、本当は木製家具を幾つか売る予定だったのですが……ちょっと出来が(やり過ぎて)良く無いので、ドーラばぁさんから『こんな物(異次元過ぎて)売れない』とダメ出し食らいましてね。なので一週間の努力がパァになった所です」


 そう言いながらクリンが肩を竦めると、隣の中年男は、


「ああ、ドーラ婆さんか。あの婆さん(目が肥えていて)厳しいからなぁ。婆さんがそう言うのなら売り物には(出来が悪いと言う意味で)ならないんだろうなぁ」

「はい。言われてみれば確かに納得の(好き勝手に技術盛り過ぎて)酷い出来でしたからねぇ。売った所で(後が怖くて)売る事が出来ないので、今回は大人しく何時も通りに木工細工と薬関係を売ろうと思っています」


 と、互いに露店の準備をしながら微妙にかみ合っていない会話をしていると、


「ナッ」『お館様、後ろです』


 ナッ太郎が短く鳴いたのと同時にクリンだけに聞こえる声が耳に入る。その声に少年が顔を上げて後ろを見ると、丁度後ろのボロアパートから少し薹が立った、ややくたびれた様子の女性が出て来た所だ。


やはり新章になってからクリン君色々とかっ飛ばしていますね(笑)

そして毎回新キャラ登場している気がする。

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