おじいちゃんに会いたいです
春になり、遂に帝都へ行く日になった。
領都セルリンゲルから帝都ディノカンティウムまでは古代に作られた石畳の街道があるので、軽い旅行用の馬車で14〜16日で着くらしい。
まだ5年くらいしか暮らしてないけどいざここを去るってなると悲しくなるな。
「父さん、今日ここを去ったら次に来るのは何年後になるんでしょうか?」
「ん?、帝都には行くが流石に一度帰るぞ?今回は西の辺境伯の令嬢との顔合わせと、宮廷筆頭魔導士におまえを紹介するだけだから10日程度で帰る予定だ」
えぇ、恥ずかし、確かにそうだよな、帝都に行けるからちょっと舞い上がってたみたいだ。
「それに、帰ってきたかったらいつでも帰ってきていいんだぞ?弟子になったからといってここがおまえの故郷じゃなくなるわけじゃないからな」
「父さん…」
「グスン…生きててよかった…こんな光景を見れるなんて世界一の幸せ者よ…」
この光景見て泣くとか涙脆すぎでしょお母さん。
俺が前世の記憶を持ってるせいか、この世界の両親に対して前世ほど家族として接してこれなかった。
でも、2人は俺のことをちゃんと息子として扱ってくれた。確かに、ここは俺の故郷で、2人は俺の親だ。そのことを忘れずに生きていこう。そう心に決め帝都へと向かった。
◇◆◇ ◆◇◆
帝都へは、俺と両親、道中身の回りの世話をするメイド2人と護衛の第一師団の兵士と師団長のガイカンの合計20人、合計5台の馬車で向かった。
道中俺は魔物とか盗賊とかと、初めての戦闘が起きるのかとワクワクしていたが、セルリング辺境伯軍の精鋭15人で守る馬車を襲う盗賊や、魔物がいるわけもなく、夜は野宿をしたり、道中の街にある宿屋などに泊まったりした。
そんなこんなで領都セルリンゲルを出て15日目、遂に帝都へ着いた。
◇◆◇ ◆◇◆
帝都の感想は、一言で言うならば『デカい』だな。
ともかくデカい。領都も十分デカいが、帝都は比べれないくらいデカい。これでも過去に一度半壊状態になっているので、古代はもっとデカかったわけだ。このデカいってのは広さの話じゃない。皇城の大きさだ。帝都は五つの壁に囲まれた大都市で、帝都の中心にある皇城はおよそ100メートルの高さがあり、東京ドーム何個分かな?ってぐらいの大きさだ。
帝都は五つの壁で区切られていて、一番地区が皇城。
二番地区が貴族区、貴族の邸宅、行政機関や劇場や音楽堂などの芸術施設、将来通うことになるであろう、ディラント学園がある。
三番地区が軍事・職人区、兵舎や武器庫、鍛冶屋や工房、各種ギルドがある。
四番地区が商業・市民区、帝都の経済を支える多くの市民が住んでいる。
五番地区が農工区、農地や牧場、前哨基地、貧民窟などがある。
まぁ、こんだけ説明すれば分かるように、帝都はとてつもない大きさと人口がある大都市なのだ。
◇◆◇ ◆◇◆
馬車の窓から帝都を覗いているとようやく4つ目の門を、通って貴族区に入った。まずは、先代辺境伯の家に行くらしい。
初めておじいちゃんに会う。どんな人だろう?
あったことない親族に会う時はいつもワクワクするな。
馬車が止まった。着いたみたいだ。
馬車を降りるとそこには壁があった。
いや、正確に言うと人なんだけど、普通に壁だった。
「初めましてレオナルド、ワシの名前はガルドリック、おまえのおじいちゃんだよ」
そう言って壁が喋った。デカすぎんだろ。
見た目は白髪のちょび髭おじいちゃんで、肩幅も何もかもがでかい。
ほんとにお母さんのお父さんなの?体の大きさ違いすぎない?
あ、挨拶しないと。
「初めましてレオナルドです、短い間ですがお世話になります」
「おい、セラフ?ほんとにおまえの息子か?こんなに賢い子だなんて聞いてないぞ?」
「もう!お父さんなんてこと言うの!ちゃんと私が産んだ子です!」
「エルフと人間のハーフは早熟気味なのかね?ルドルフ君」
「いえ、そんなことはないはずです」
「そうかそうか、なら賢いワシの頭脳が遺伝したのかな?」
「違います!この子はお父さんほど脳筋じゃありません!きっとルドルフの頭脳が遺伝したんです!」
「脳筋だなんて心外だな、な?ルドルフ君?君もそう思うよね?」
「…」
「もう!ルドルフが困ること言わないでよ!いいから早く家に入らせて!」
「はっはっはー、愉快愉快。レオナルド、時間があったら一緒に帝都を探検しよう、孫と一緒に帝都を歩き回るのが夢だったんじゃ」
「はい!僕もおじいちゃんと帝都を探検したいです!」
「やっぱりセラフの子じゃないよね?」
「もう!しつこいですお父さん!」
はえー、すんごい陽気なおじいちゃんだ。近い将来、ここで暮らすことになるけど、このおじいちゃんとならやっていけそうだ。
この後も予定はいっぱいだし、帝都冒険のためにも頑張るぞ!
これから新キャラがたくさん登場します!
乞うご期待!(設定がまだ思いついてない)