魔法の真髄?
今日は皇暦705年の1月10日、俺は5歳になった。
5歳になると平民も貴族も皆、教会で洗礼を受けて、祝福を受け魔法の使用を神に許可されるらしい。
なんで魔法を使うのに神の許しだとかが必要なんだ?って感じだけどそうゆう決まりだから仕方ない。早く魔法を使いたいという逸る気持ちを抑えながら両親と共に教会へ向かった。
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教会の中は、前世で想像するような教会そのままだった。
高い天井にステンドグラスの光が差し込み、大理石の床に虹色が踊る。長椅子が並び、正面上には白い祭壇と金色の十字架。
十字架だけ前世とは違くて、丸い円の中に漢字の十が入っているシンボルがあった。あれがこの世界での十字架なのだろう。
洗礼は月に一回、5歳になった子を教会に集め、集団で洗礼をするらしい。ただ自分の場合、領主の息子なので、司教直々に教会を貸し切って洗礼してくれた。
スラエル教では魔法は魔族や魔物が使うものであり、魔法を使うことは罪深いことだと考えられていたが、マシア教では魔法は神の祝福だと考え、洗礼によって祝福を受けることで魔法の使用を神に許されるらしい。何はともあれこれで魔法は使ってもいいってことだ。
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魔法、当たり前だけど前世の世界にはなくて、この世界にしか存在し得ない概念だ。
この世界には空気や水と同じように魔素というものが世界中のあらゆる場所に満ち溢れている。
どの場所に行っても魔素は存在していて、場所によって濃かったり薄かったりする。
この世界には普通の動物とは違う魔物がいる。動物と魔物の違いは体内に魔石を持つかどうかで、普通の動物は魔法を使えないが、魔物は魔法を使う。
人間やエルフ、ドワーフ、獣人などは体内に魔石を持たないが、オークやゴブリン、オーガなどは体内に魔石を持ち、ある程度文化的で会話が可能なため魔物ではなく魔族呼ばれている。
魔法には属性があり、無属性、火、水、風、土、光、闇の7つである。
無属性魔法は五感や身体の強化、所謂アイテムボックスなどがあり、誰でも使えるようだ。
火、水、風、土は基本四属性と呼ばれ、魔力を使い生成、そしてそれを操作するという共通点がある。
光は治癒、闇は幻影や幻覚で使用者が少なく、光属性の魔法使いの大半はマシア教会に属している。
どの魔法も体内の魔力を何かしらの属性の魔法に変換し、使うという共通点がある。
長々と語ったがさっさと魔法が使いたい!
さっそく父さんに魔法を教わりに行くぞ!
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教会から家?城?に帰った俺は辺境伯軍の兵士が使う訓練場へ父と共に向かった。
「御父様、よろしくお願いします!」
「あぁ、勉強していたから知ってると思うが、軽く説明しておこう。人間が使える魔法は基本一つ、エルフは二つだ」
種族によって使える魔法の数が違う。人間で説明すると、平民は使えても一つの属性の魔法しか使えなくて、使えない人の方が多い。貴族は二属性、王族や皇族なんかは三属性使える。
エルフの場合貴族は三属性、王族は四属性、種族によって得意不得意がある。エルフは風属性魔法使いが多くて、火属性魔法使いが極端に少ない。
人間は特に偏りがない。
まあ種族ごとに違いがあることが分かれば大丈夫だ。
「レオナルドにはエルフの王族と人間の皇族の血が流れている。おそらく三属性程度使えると思うが一つずつ試してみろ」
基本四属性の火、水、風、土は初歩的なこと(火を出す、水を出す、風を出す、土を出す)をできるかどうかで、得意な属性がわかる。
俺は今まで魔法の歴史について調べてきた。
特に魔法を使う上で何が重要なのかということに。
そもそもなぜ平民と貴族では使用出来る属性の数に違いがあるのか、皇族が多いのはなぜか、それは魔法の才能が遺伝するからだ。
他種族の場合はよく分からないが、人間の貴族や皇族の先祖には必ずディノカンタスがいる。これは帝国の黎明期に帝国内で力を持つために各地方の部族たちが皇帝に自身の娘などを側女として仕えさせ、ディノカンタスの息子たちは帝国が征服していった新たな領土の領主になり、娘たちは他の部族に嫁いでいった。このようにして貴族たちにディノカンタスの血が多かれ少なかれ流れている。
昔の貴族には三属性魔法使いが多くいたが今は二属性魔法使いばかりになってしまった。おそらく皇族の血が薄くなったからだろう。そんな中でも皇族だけは未だにほとんどが三属性魔法使いだ。これはマシアが先祖にいるからだろう。
要するにディノカンタスとマシアが極端に魔法使いとして優れていたということだ。
ディノカンタスは四属性魔法使いだったし、マシアは光、闇も含めてあらゆる属性の魔法が使えたらしい。
マシアやディノカンタスが優れた魔法使いだったのは血統のせいか?おそらく違うだろう。
答えは彼らが魔法の真髄のようなものに気がついたからだろう。正確にはマシアが気づき、ディノカンタスに教えたのだろう。
マシアが何に気がついたのか、マシアが転成者だとするならば同じ転成者の俺にも分かるはずだ。
ならばそれを実践するだけだ。
「驚いたな」
いや、父さん。ポーカーフェイスすぎて全然驚いてるふうに見えないんですけど。
火、水、風、土。どれも俺は使うことが出来た。
ただ光と闇は使えなかった。まぁ想像通りと考えるべきか。マシアが使えたのだから俺が使えないなんてことはないはずだ。
「定説では人の血が混じれば四属性以上使うことが出来ないと言われてきた。もちろん、マシアという例外を除いたらの話だが……そうだな、帝都に行ったら宮廷筆頭魔導士に会おう、今代の宮廷筆頭魔導士は優秀だ。きっとレオナルドに良い影響を与えるだろう。レオナルドなら六属性魔法使いも夢じゃない」
えぇ、すんごい急展開。
でも宮廷筆頭魔導士とやらに会えばもう少し魔法についての知識を深めることが出来るかもしれない。実際、闇と光は使えないわけだし。
帝都でならこの国や世界のこともさらに知ることが出来るだろう。これは俺が皇帝になるための近道になるかもしれない。それに婚約者候補?とやらにも会いたいしな
レオナルドが気がついた魔法の真髄とは?
近日公開!




