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1.婚約者が駆け落ちして、偽物と結婚することになりそうです。

「すまない、柊。僕はりりぃと一緒になりたいんだ。だから駆け落ちするよ。女領主の夫なんて、僕には重すぎる。柊もいい人を見つけるんだよ」

私は紀伊野(きいの) (ひいらぎ)。現在16歳。


紀伊野領の次期女領主でもあります。

ただいま、はらわたが煮えくりかえりそうな状況にいます。

婚約者を持つ皆さん、自分の屋敷になんの予告もなく婚約者が浮気相手もしくは愛人を連れてきたら怒りますよね。

さらに昼の茶会に遅刻して、夕方に来るという所業。

待ち合わせ場所である庭を茶会ように維持し続けている家の側になってみろ。

せめて、事前予告してくれたらまだ、もてなしの準備ができたものを。

目の前で婚約者、スギオは西洋かぶれのスーツを着て、ドレスを着た可憐な少女りりぃさんの腰を抱き寄せながら申し訳なさそうな顔をしていた。

この都から遠い地では珍しい洋装少女からは花のようないい匂いがします。

厄介ごとの匂いは思ったよりいい匂いのようですね。

「待って、それはどういうこと」

私が詰め寄って聞こうとしたら、強い突風が吹いた。

目を開けると婚約者と少女が消えていた。

「柊さま!大丈夫ですか?」

突風で尻餅をついた私に侍女ウメが駆け寄る。

「大丈夫よ。ウメ。」

ウメの手を借りて、立ち上がった。

袴についた土埃を払った。

婚約者がいた場所はなんの痕跡もなくなっていた。

「お嬢さま、急いで奥様と旦那さまに連絡して、追跡の手を広め、奴らと奴らの家をとっちめましょうか?」

「追跡の必要はない。」

私は、空を指差した。

「アイツ、人間でないものにも手を出した。

クマや狼に殺されたようなものよ」

ウメも空を見てあんぐりとした顔になる。

上がりかけた日が沈み、上がりかけた月の方に、影があった。

その影は少女とスギオのものだ。

少女の背中からは遠目からでもわかるコウモリのような翼が生えていた。

婚約者はその少女に抱えられる形で連れ去られていた。

「それともう、あの家とも関わりたくない。とっちめるのはなし。それにじい様を止める方法を考えないといけない」

「そうですよね。」

「じい様たちが温泉療養中で北に行っていたのが、幸いだった。スギオもそれを見越して動いたのでしょうね」

ウメは納得がいかない顔をしていた。

元々はじいさまたちの友情が原因の婚約だ。

なんの利益のない。

自分たちのところに、子供が生まれたら結婚させよう。

スギオのじい様とそんな約束をわたしのじい様はしていた。

しかし、どの世代も揃ったように性別が揃い、歳の近い男女が生まれなかった。

やっと生まれたのがわたしとスギオだ。

婚約は赤ん坊の頃に結ばれ、じい様たちは結婚式を見るまではと、今も生きた干物の状態で生きている。

絶対的な権力と異能を持つじい様たちには逆らいたくないからだ。

婚約に関しては、結ばれた側の方である私は諦観、スギオは反発という感じだった。

そのことでよくじい様たちは怒って異能を発動させていた。

そのせいで、家の修理回数は片手で収まらないほどだ。

「スギオ以外の婚約者は絶対じい様たちは認めないわよ」

この事実を知ったら、屋敷が更地になりそう。

「とにかく、異能を使って、父さんには伝えます」

「奥様には?」

「妊婦である母さまにこのようなへびぃな内容を伝えて、弟か妹に影響があればどうしますの」

とりあえず、こういうのは一人で抱え込まない方がいい。

抱え込める人は巻き込んで行こう。


「とりあいず、スギオの失踪は隠そう。妖に連れさられたことを隠して、駆け落ちしてのちに死んだことにする」

両家で満場一致で決まった。


まず、スギオが浮気して、さらに駆け落ち。

心中を行い、浮気相手は死んで、スギオも死んだ。

骨も残らなかった。

ここで死んだことにしなかったら、じい様たちは死ぬまで探し続ける。

両家一族を総動員して、たまったもんじゃない。

人に化けれるほど強いの異形のものと戦えなんて所業、絶対にやりたくない。

「暴走を覚悟して、人口密度が低く、被害が少ない我が領の屋敷に誘導する。命をかけて止める覚悟があるもののみ。

我が領にこい。」

父さんは重い口を開いて言った。


そうして、今日じい様たちが帰ってきた。

静まり返った。

母さんは実家に帰らせた。

じい様たちが我が屋敷に入った。

私たちは出迎える。

「ひいらぎ、スギオはどうした?」

スギオがいないことを私のじい様が聞いてきた。

二人を客間に誘導する。

私はじい様たちと向かいあった。

「スギオは、駆け落ちしました。かわいい女の子と」

そう言ったらすごい圧がかかった。

強い風が吹いてないのにミシミシと家鳴りがして、さらに呼吸するのも苦しい。

見かねた父さんがじい様たちに殴りかかろうとした時、客間の襖が勢いよく開いた。

何かが私とじい様たちの間に入った。

「じい様たち、ただいま。おかえりなさい!」

「スギオ!駆け落ちしたんじゃなかったのか?」

「駆け落ちしたけど、ひいらぎの方がどれほど良かったかわかってすぐに帰ってきた。勢いで遠いところ行ったから、帰るのに時間がかかった。

これからは柊のことをちゃんと大切にする」


何かはスギオの姿をよく似せており、それで塩らしい姿をして、じい様たちに土下座した。

「おお、そうか戻ってきてくれて良かった」

圧は消えて、じい様たちは朗らかな笑みを浮かべた。

騙せてるこの何かすごい。

スギオの家が用意したのか。

「もう、浮気しないから、契りを結んで結婚させてください」

何かは土下座しながら言った。

「そうかそうか、やっと結婚する気になってくれたか。

じゃあ半年後にしよう」

スギオのじい様は嬉しそうに言った。

こうして、我が屋敷が更地になる危機は去ったが、今度は私が訳のわからない何かの結婚させられる危機に瀕している。



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