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転生、転生、転生、転生……って、もううんざり  作者: 白髪銀髪


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十歳 最善の方法

 ここで性善説についてなんかの講釈をするつもりはない。

 シャーロックは一度深呼吸をして。

 

「そもそも、俺はアリアが誘拐されようとしているとか、そのこと自体に反対なんだけど」


「べつに、誘拐されようと思ってるわけじゃないよ」


 誰が好き好んで誘拐なんてされようと思う?

 

「そこまで相手がなにも考えない――」


「そういうのはいいから」


 自分で聞いてきたくせに、回答を遮るなんて。


「アリア。自分が誘拐されるための餌になろうってことを、イシスとか、ロレーナにもはっきり言えるのか?」


 一緒に来ている二人の顔を見る。


「姉様。誘拐なんて嫌です」


 イシスが私の腰のあたりに、ひしっとしがみついてくる。

 

「お嬢様。お嬢様が誘拐されてしまった場合、私はくびになる可能性が高い――さすがに首だけになることはないと思われますが。主の暴走を止めるのもメイドの務めですし」


「そもそも、私は、ロレーナのことをメイドじゃなくて」


「友人だと思ってくださって――思っているなら、余計に自分が犠牲になるなんてことは言わないで」


 これは、感情論で押されているわけだから、じゃあ、代案はなにかあるの? みたいに反論しても無駄だろうね。

 

「どっちにしても、早いか遅いかだけの違いだと、私は思ってるけどね。まともにやって、お父様とか、城の、あるいは、国の戦力に真正面から敵うはずはないんだから」


 それができるなら、とっくにやっているだろうから。あるいは、やった結果が三年前のことなのかもしれないけど。

 もちろん、暴力的な手段によらない解決を考えている相手かもしれないけど、その場合は、そもそも、私たちが狙われる理由もないわけだし。


「手っ取り早く、手間をかけず、面倒を最小限に情報を集めようとしたら、これが最善だと思ってたんだけど」


 人の気持ちなんかは無視していたけど、やっぱり、それじゃあだめだよね。私なんかを心配してくれるロレーナたちがいるんだから。

 

「さっきも言ったけど、こういう場合の子供としての一番のアドバンテージって、弱者であると思われていることだから、それを活かせないとなると、私たちにできる自衛手段って、もう、完全に引き籠っているくらいしかなくなるんだけど」


「私はそれでいいと思いますが」


 ロレーナはそう言うだろうね。

 仕えているのは公爵家で、私たちの護衛も兼ねているのなら、家が一番安全なはずだから。

 

「でも、それって、いつまで続くのかな」


 私はいいんだよ? ずっと引き籠っているんでも。ベッドでごろごろしているのでも。

 でも、あくまでも、私が狙われるかもしれないというのは、可能性の話で、それはべつの子供たちにとっても、等しくはないかもしれないけど、起こりうる話だ。

 騎士団長でなくても、例えば、侍従長でも、魔法師団長でも、司書長、宰相、秘書官……まあ、この国の今の具体的な城内の人事なんてわからないけど。 

 そもそも、城とは関係なく、今の国家そのものを打倒して新国家として、みたいなことまで考えていたら、今の城勤めに関わっている人だけじゃなくて、それこそ、パン屋の息子とか、服屋の娘、みたいな子たちが標的にされるかもしれない。

 まあ、国家を運営しようって人間が、子供を誘拐するとかっていうのはどうかと思うって話はあるけど、どうせ、そこまで考えてるはずもないからね。

 

「ある程度、こっちでコントロールできたほうが、対処、対策もしやすいでしょ」


 たとえば、私たち――でなくても、誰かが嗅ぎまわっている、みたいな話を聞けば、まだ、準備が完璧じゃないにも関わらず、焦ったりして、不十分な用意で事を起こす羽目になる、こともあるかもしれない。数年かけるつもりだった計画を、数か月にまで落とし込ませられるとかね。

 これも、まあ、可能性の話といえば、そのとおりなんだけど。

 でも、どこに、いつ、どのくらい落ちるかわからない隕石か、もしくはミサイルとかかもしれないものを防いでください、というよりは、どこそこにそろそろ隕石が落ちるかもしれないから対応できるようにしてください、というほうが楽なはずだ。その隕石自体の情報も調べられるのなら、なおさら。


「コントロールなんてできるのですか?」


「できるかはわからない。でも、できるかもしれない」


 疑問が広がっているようなイシスの頭を撫でる。

 いくら、公爵家跡取りとはいえ、まだ、早すぎる話だろうことはわかっている。本来なら、私だって、肉体年齢的には早いくらいだ。それは、シャーロックやロレーナにとっても同じことで。

 いや、ロレーナはむしろ、適当かな。まあ、そこはどっちでもいい。

 

「貴族だって一人の人間だよ。貴族の義務なんて、ふざけた言葉を使うつもりはない。でも、貴族という肩書じゃなくて、その土地を守っているという意味では、私たちは率先して、その土地に住んでいてくれる人たちに報いなくちゃいけない」


 イシスも、幼くはあっても、公爵家の跡取りとしての教育も受けているから、それはわかるよね?

 もちろん、私がイシスを率先して巻き込みたいというわけじゃない。


「だから、領民を人質に、なんて事態を起こさせちゃいけないんだよ。そんなことをしてしまう領主は、たとえ、反乱を起こした側が九割以上悪いんだとしても、その後、信頼を得られないから」


 なかなか、理想どおりにはいかないけど。

 領民の安全を守れないのなら、貴族なんて価値はない。たとえ、そのときの事態には収拾をつけられたとしても。

 まあ、この話は、広げすぎると、貴族政治という、今のファルバニアとか、この世界の多くの国の体制そのものに喧嘩を売る話にもなっていくから、そんな面倒なことはしないけど。

 

「いずれにしても、情報は集めないといけない。なにも起こらないならそれでいいし、なにか起こるなら問題だからね。でも、調べるという行為自体が、相手の目に留まる危険性は常にあるってこと」


 なにも知らずにいても狙われる可能性は高い。

 なら、その可能性が多少高くなろうとも、情報を得ようとするのは、間違っていないと思うけど。

 どちらをとるかって話だ。


「シャーロックはどうしたい? ここまで言っちゃった以上、私はどっちでもいいけど」


 私が狙われるのでも、できるかぎり、狙われないように引き籠っているのでも。

 

「……それは、どっちでも変わらないんじゃないのか?」


 まあ、すでにこうして出てきちゃっているわけだからね。一軒とはいえ、訪ねもしたし。

 噂っていうのは、大抵は、尾ひれに背びれに、胸びれにって、余計なものがたくさんつくものだから、一軒訪ねただけでも、あっという間に広がるだろう。それが、公爵家の娘で、騎士団長と魔塔の魔法師の娘が関係しているというのなら、なおさら。

 

「そうかもね。でも、私の意思は伝えてあるし、それを止めたのはシャーロックだよ」


 だから、決断してもらわないと。もちろん、それで責任を押し付けるなんてことはしないから、安心してもらっていいけど。


「……俺は、アリアみたいに他の人のことなんて考えられない。せいぜい、手の届くところにいるやつくらいだ。だから、アリアがしたいことならすればいい。そのおまえのことは俺が守ってやるから」


「僕も、姉様を御守りします」


「頼もしいね」


 そう言ったら、イシスは笑ってくれたけど、シャーロックは不機嫌そうな顔になった。

 

「素直にありがたがってるのに」


「……そうじゃないだろ」


 子ども扱いして微笑ましく思われてる、なんて思ってるのかな。

 でも実際、私からすれば、子供どころか、孫でもきかないくらいなんだよ。まあ、私には子供はいないけど。


「それなら、せめて、私には負けないようになってね」


「はい。頑張ります」


 やっぱり、イシスは素直に頷いてくれたけど、シャーロックは口元を引き締めていた。


「じゃあ、今日のところは戻ろうか」


 もう十分だろうし、とは言わないでおくけど。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  確かに反乱の類は蜂起させてしまえば関係者を一網打尽2出来ますからね。  対処可能であれば、ですが。  しかしそれでは無辜の民に出る被害から目を背けることになる。  やはり事前に穏便に収め…
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