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転生、転生、転生、転生……って、もううんざり  作者: 白髪銀髪


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十歳 いったい、なにをしに行くのかということ

「私たちは済んだけど、二人はそのままでいいの?」


 シャーロックも、イシスだって、毎年開かれてるマーク殿下とか、王家の誕生日のパーティーなんかには出席しているわけだから。

 

「俺はアリアみたいに目立つわけじゃないからな。知り合いでもなければ、どこの誰かまではわからないだろ」


 イシスに関しては、着られる服が――。


「イシスも、私の昔着ていた服なら貸してあげられるけど」


 ぴったりのサイズは、探せばあるはずだ。

 まあ、女物にはなるけど。


「姉様の服ですか?」


「うん。ロレーナの服は大きすぎるだろうけど、私のものなら、小さいやつが残ってるはずだからね」


 孤児院に寄付してたりとかしなければ。

 

「はい。お嬢様の昔お召しになっていらした衣服でしたら、きちんと保管させていただいています」


 ロレーナがちゃんと保管していてくれたらしい。なら、すぐに見つかるね。


「それって、ドレスとか、ワンピースとかですよね?」


「まあ、ズボンは持ってなかったからね」


 私は、イシスの肩に手を置いて。


「大丈夫。どんなイシスも素敵だよ」


「ですが、姉様。さすがに、女装は遠慮したいのですが」


 イシスが助けを求めるように視線を彷徨わせ、シャーロックへ向ける。


「それはさすがにひどいんじゃないか?」


「でも、シャーロック。もし、本当に事件性のあるなにかが起こっていたとして、イシスが公爵家嫡男だってバレたほうが大変なことになると思うよ。もちろん、街中でいきなり襲ってくるみたいなことがあるかどうかはわからないけど、一番効果的なのは、性別丸ごと変えてしまうことだと思わない?」


 さすがに、種族は変えられないし。

 いや、シャーロックがしたいというなら、馬になるんでも、犬になるんでも、いいんだけどね。


「その場合、姉様も男装なさるということですか?」


「男装は無理だよ。イシスは昔の私の服を着られるけど、私にはイシスの服は着られないから」


 イシスが悩まし気に考え込んでしまった。


「……わかりました。姉様がそうおっしゃるなら」


 公爵家嫡男が女装していた、なんて、社交界じゃあちょっとスキャンダラスかもしれないけど、ばれなければ問題ないし、そもそも、ばれないためにするんだから。

 

「では、私は執事の格好を致します」


 ロレーナが燕尾服か。あれ? ユーイン家って、少年用の執事服なんてあったっけ? 私は見たことないんだけど。 


「ございますよ。現在、それを使用する方がいないので、仕舞ってありますが」


 ふーん。まあ、ロレーナがそう言うならそうなんだろう。さすがに、私も見ていない、聞いていないものは覚えられないからね。

 

「じゃあ、ロレーナ。イシスの着替えをお願い」


「かしこまりました」


 まあ、ワンピースくらい、着られるかもしれないけど、一応、女性のものだし、ロレーナがついていてくれたほうが安心だろう。

 

「シャーロックも、女装がしたかったら私のものを貸すからね」


 身長も同じくらい、いや、ちょっと私のほうが大きいくらいだし、多分、着れると思うんだよね。


「したいわけないだろ。だいたい、俺はおまえとは違って、目立たないから必要ない」


「それで、気づかれて後悔することになるのはシャーロックだけど」


 私がそう言ったら、シャーロックは口を閉ざした。

 まあ、今のはたしかに、意地が悪かったよ。


「大丈夫。シャーロックはどこにでもいる感じで、きっと警戒も、注目もされないよ」


 たしかに、ファルバニアには金髪が多いけど、黒髪だっていないわけじゃないからね。銀髪は、まあ、父が灰色の髪だし、そこまで警戒されることもないと思う。

 

「……それは、護衛としてはどうなんだ?」


「べつに、シャーロックは護衛じゃないでしょ。それに、どうだろうと結局、面倒事に絡まれなければそれでいいんだから」


 それに、派手で目立つ諜報員なんていないでしょ。怪盗とは違うんだから。

 まあ、逆に目立つことで疑われないようにするとかってこともあるけど、そもそも私たちは諜報員でもないわけだし。


「そういえば、シャーロックは、あれから、お兄さんとはうまくやってるの?」


 あれからって言っても、私は会ったことはないんだけど。

 でも、最初に会ったころは、出涸らしだなんだと気にしてたみたいだし。

 もうだいぶ経つけど、家族関係は良好なのかな。


「兄は優秀だからな。滅多に家に帰ってこないし、今は多分、学院で研究者をしてる」


「それって、答えになってないと思うけど」


 もちろん、所詮は暇つぶしの雑談だから、話したくないことは聞かない。

 家族だから仲良くしなくちゃいけない、みたいには思ってないし。もちろん、仲良くしたほうがいいとは思うけど、それは、個人の考えだから。


「……正直、あんまり話したりもしてないから、関係がどうこう大きく変わるよなこともない。そもそも、顔を合わせるのが稀だしな」


「そっか」


 人の時間は有限だから、でも、完全に後悔しないようになんてことは無理なわけで。

 

「親父やお袋のことは、まあ、悪い人ではないと思ってるよ。産んで、育ててもらってる恩もあるし」


 その言い方自体が、すでに関係性を表しているようなものだけどね。

 まあ、でも、シャーロックが平気なら。


「いつでも来ていいんだからね。もし、家族と向き合いたい、向き合ってほしいってことなら、私も手助けするからさ」


 私が自主的に動こうなんて、珍しいことだよ。

 結局、かすがい以上にはなれないと思うけど。


「ああ」


 シャーロックは素直に頷いた。

 もしかして、そんなに不穏なのかな。正直、国の危機とかそんなことより、シャーロックの家庭事情のほうが気になるんだけど。

 あんまり、首を突っ込みすぎるのもどうかと思うけど、せっかく、友人になったのなら、手を差し伸べるくらいはしていたい。


「ねえ、シャーロック――」


「お待たせいたしました」


 もう少し踏み込もうかと思ったりもしたんだけど、それより先に、ロレーナたちが戻ってきた。

 

「待ってないよ。それより、イシス」


 まあ、名前はそのままでもいいか。


「あの、姉様。変じゃありませんか?」


「全然、変じゃないよ。変だなんて言う輩がいたら、私がぶっ飛ばすからね」


 社会的に抹殺する。 

 

「なにを物騒なことを言ってんだ」


 シャーロックが私の頭に手刀をかます。

 

「ロレーナも格好いいね。きまってるよ」


 執事服を纏ったロレーナは、若干の男装の麗人感はあるものの、それでも、普段とは別人に見える。そうとわかっていなかったら、判断は難しかっただろう。

 イシスのほうは、ロレーナの技術の賜物なのか、どこからみても、女の子だ。 

 もともと、年齢的にも、まだ華奢で、顔だちも整っているし、実際、違和感はない。


「じゃあ、行こうか」


 今日のところは、コッホには頼めない。

 馬車で出かけるなんて、隠密性のかけらもないし、そもそも、知っていたとなると後で迷惑をかける。それに関してはロレーナも一緒なんだけど。

 まあ、今の私たちが目立たないかと言われたら、普段よりは平凡、という程度なんだけどね。

 とはいえ、私たち過ごしているユーイン家は、一応、王都にあるわけで、歩きであっても問題はない。

 私だって、多少は鍛えていたりするからね。シャーロックやロレーナ言うに及ばず、イシスも弱音は吐かないだろう。


「先に、どうするつもりなのかは聞いておいてもいいか?」


「どうするって、普通に観光?」


 私が首を傾げると、シャーロックは眉をひそめた。


「おい、アリア。まさか、ノープランってことじゃないよな?」


「いや、あのね。そもそも、私たちはクーデターが起こるかもしれない、なんてことを調べて回っているって気づかれちゃいけないんだよ」


 デートに保護者はついて来ないだろう、普通。

 じゃあ、なにをしに行くのかって話かもしれないけど。

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