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転生、転生、転生、転生……って、もううんざり  作者: 白髪銀髪


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十歳 父の弟、つまり、叔父

「こんにちは、可愛らしいお嬢さん」


 庭くらいなら走り回れるようになったイシスと一緒に、ユーイン家の庭での遊びに付き合っていると、二十歳くらい年上――父と同じくらいにみえる、これもやっぱり、父によく似た男性に声をかけられた。

 よく似たっていうのは、雰囲気もそうだけど、それよりも、顔とか、体格とかがってことで。

 普通は、知らない相手に話しかけられるなんて事案になりかねないけど。


「父の、ご家族の方かどなたかですか?」


 最初に思い浮かんだのはそれだった。

 さすがにこの見た目で祖父――アリアから見れば、曾祖父ってことだけど――ってことはないだろうし、リシウスの父か、あるいは、兄弟かってところだろう。

 父から、兄弟がいるって話は聞いたことはないけど。


「私は、ヴィレン、ヴィレン・ユーイン。きみのお父さんとは、続柄上は、兄弟ということになるのかな」


 やっぱり、血縁者だったね。

 それで、現状、父がユーイン家を継いでいるってことは、この人が弟ってことでいいのかな。

 それにしても、今日がはじめましてなんだよね。


「父は今仕事ですが、どういったご用件でしょうか」


 どうぞ上がっていってくださいと勧めたけれど、断られた。

 

「いや、いいんだ。たまたま近くまで来る用事があったから立ち寄っただけでね」


 ちょっと立ち寄った、ねえ。 

 

「なにか、気になることでもあったのかな?」


 ほとんど表情は動かしていないはずだけど、わずかに目を細めたことを察知されたようで。

 近くで用事があったから、兄弟家族の様子を見に立ち寄った。そういうことなら、なにも不審な点はないけど。

 

「大したことではありません。なぜ、正面からいらっしゃらないのかと、不思議に思っただけですから」


 普通、庭先で遊んでいるように見える子供たちに先に声をかけたりするかな。

 兄弟だということで、父の仕事が王城騎士団の団長だと知っていたなら、父が家にいないこともわかるとは思うけど。

 でも、それだけだ。それ以上の興味は、今のところない。

 現状、なにか不利益を被っているわけでもないし、少し瞳が細くなってしまったことも自覚しているから、そういったことに敏感な人なら、気にするかもしれないとは思うし。

 もともと、家にいないことを知っていたということなら、ふらりと立ち寄ったっ理由は、父や母ではなく、家にいる私かイシスかだということになるんだろうけど。まさか、家が立派だから見にきた、なんてこともないだろうからね。

 ましてや、自分の兄弟のところに。


「なるほど。きみが兄とサリナの……」


 聞かせるつもりだったのかはわからないけど、この距離で聞こえないこともない。

 雰囲気的には、聞かせるつもりじゃなくて、つい、口に出てしまったって感じだったけど。

 

「すまない。つい、近くまで来たら衝動を抑えきれなくてね」


「それはべつにかまわないというか、私にどうこうできる話ではなさそうなので」


 泥棒なんかの不審者とかならともかく、父の血縁が訪ねてきたというのを、私が拒絶することもないだろう。

 仲良くしたいと思うわけじゃないけど、険悪にしたいってことはないからね。

 

「きみの瞳は綺麗だね。お母さんと同じだろう?」


「あいがとうございます」


 より正確に言うなら、母と同じだから青いわけじゃなくて、青い瞳だから、母と一緒だったということなんだけど。

 普通の生物的な遺伝の法則は、私には通用していない。

 母の瞳が赤でも、父の瞳が緑でも、私の瞳は青かっただろうし、父が黒髪で、母が紅い髪色でも、私の髪は銀だっただろうから。

 これは、今まで、幾度となく生まれ変わってきた中で、変わったことがない。

 

「あなた――叔父様ということでしょうか、叔父様は父にそっくりですね」


 髪型なんかは多少違うけど、髪色とか体格、瞳の色はもちろん、全体的に受ける感じというか、雰囲気というか。

 とはいえ。


「すみませんでした」


「……なぜ、きみが謝るんだい?」


 私が子供だからだということなんだろうけど、その沈黙が全て物語っているんだよね。

 とはいえ、ここまで口にしてしまった以上、途中で止めるわけにもいかないだろうね。


「父と比べられることが、あまり好まれていらっしゃるようには感じられませんでしたから」


 兄弟なんだから仕方がないだろうとはいえ、なにやら、家督を継ぐことのできなかったわだかまりみたいなものがあるみたいだし。

 むしろ、兄弟だからこそ、できれば、その絆というか、縁を大切にしてほしいところではあるけど。人生一度きりなんだから。

 貴族の家督相続にかける熱は理解しているけど。


「きみは正直な子だねえ」


 ヴィレン・ユーインは愉快そうに笑った。

 

「それに……いや、子供だからかな」


 遠慮がないとか、そういうことを言いたいのかな。

 あるいは、他人の気持ちに対して、鋭敏だとか?

 

「喧嘩をなさったのなら、仲直りをすればよろしいのではありませんか?」


 そう言ったら、今度は吹き出された。

 どうやら、相当、ツボにはまったらしい。


「仲直りって……本当に怖いな」


 最後は笑ってなかったけど。

 やっぱり、なんらかの確執があるみたいだけど。

 できれば、こちらを巻き込まないよう、当人同士でうまいこと取り計らって……と、普通ならそれでお仕舞いにしてしまいたいんだけど、家族のことだし、それじゃあ済まないんだろうなということくらいは、察する。

 大なり小なり、巻き込まれはするんだろう。

 巻き込まれない程度のものなら、こんな風に拗らせたりしないだろうからね。

 面倒だなあ、とは思うけど、ここで溜息なんてつけないし。

 まあ、家を知っていて、父が王城の騎士団長だということを知らないはずもないとは思うから、今までに――たとえば、父が家督を継いでからということでも、会う機会がなかったとは思えない。いる場所のわからない、あるいは、気まぐれな、旅芸一座とかってわけでもないんだし。そもそも、日中に家にいることのほうが少ないわけだし、騎士団長自ら遠征ってこともないだろうから。

 大抵、こういうのって、話し合いが足りてないから拗れるんだよね。せっかく、人には言葉があるんだからさ。一度、腹を割って話をしてみればいいんだよ。

 なんで人は、自分の都合とかで勝手に解釈して、戦い、争いに持ち込もうとするんだろうね。なんのために、言語という知性が備わっているのか。

 まあ、それは、父にも言えることだけど。

 私がこんなに短時間で察せたくらいだ。兄弟として、長らく近くに寄り添った父にわからないはずもなかっただろうに。

 父と離れた後に発生した感情なら、父が知らないのも無理はないだろうけど、そうじゃない様子だし。


「父は夕方、遅くとも、暗くなりきる前には戻ると思いますが、本当にお待ちにならなくてよろしいのですか?」


 ヴィレン・ユーインは、手を振って歩き去っていた。


「姉様」

  

 舌ったらずだった口調もはっきりしてきた、話が終わるまで待っていたのだろう、イシスが見上げるように聞いてくる。 

 

「お父様の弟だって。イシスや私からしてみれば、叔父様ということね」


 まあ、お小遣いをねだるとか、そういう雰囲気じゃあなかったけど。

 

「叔父様は、父上と喧嘩をされているんですか? 仲直りと聞こえましたが」


「どうだろうね」


 今まで会ったことがなかったということは、あんまり仲が良いわけではないんだろうとは思うけど。

 普通、子供が生まれたら、報告するくらいはするだろうし、それもしないほどの仲なら、近くに来たから立ち寄る、なんてこともしないはずだ。

 それとも、報告はしていたけど、今まで会いに来なかったということなら、結局、仲が良好とは言えないわけだからね。


「気になるなら後でお父様に聞いてみたらいいんじゃない?」


 問題がなければ教えてくれると思うよ。問題がなければ。

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