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転生、転生、転生、転生……って、もううんざり  作者: 白髪銀髪


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七歳 婚約なんて『していただかなくて』結構です

「はじめまして、ユーイン公爵令嬢」


 まったくなにも気にしていないような態度で、手を取られた。

 普通、相手の許可なく触れたりはしないんだけどね。そもそも、最初から普通じゃない相手だから、意味があるのかわからないし、面倒だからそんな説教まではしないけど。

 この人は、いったい、今までなにを見て生きてきたんだろうね。純粋に疑問だよ。


「ベンジャミン公爵家当主、カイゼルだ。きみに光栄なる提案を持ってきた。喜ぶといい」


 公爵家当主……? あれ、ベンジャミン家はもう代替わりしていたっけ?


「あの、失礼ですが、貴家はすでに代替わりされていたのでしょうか?」


 私は社交界にはまだ出ていないけど、父について城へ行ったり、母について魔塔に出入りしていたりするから、最低限の噂くらいは耳にしている。

 たしか、まだベンジャミン公爵家は、当主であるアドルフ・ベンジャミンから、代替わりしていなかったはずだけど。詳しくはないけど、カイゼル・ベンジャミンは学院は卒業しているという程度の年齢だったような。

 貴族的には、ありえない年齢差の話ではないけど……。あくまで、それだけだ。

 あとで、父に確認してみるかな。

 それなのに、これはいったい、どういうことだろうね。

 

「それがなにか、関係あるのかな?」


 カイゼル・ベンジャミンはわずかに眉をひそめた。

 肯定しないってことは、やっぱり、まだ当主交代はしていないんだね。ベンジャミン公爵がどういう人なのかは知らないけど、これが息子なら、おいそれと爵位の継承もしたくはないだろうね。そこまで破綻した頭の人間なら、そもそも、公爵家なんてやっていられないだろうし。

 

「まあいい。きみはまだ幼く実感も湧かないだろうが、いずれ私の伴侶にしてあげようじゃないか。まあ、そのときが来るまでは婚約者ということになるだろうが」


 まあいいって、聞いたのはこっちなんだけど。それを、自分の都合でなかったようにするっていうのは、どういうことなの?

 それで、この話はいつまで聞いていればいいのかな。

 魔法の腕前がどうだの、剣術に関してああだこうだ、領地の収益がうんたらとか、話が長いし、興味もない。 

 とはいえ、仮にも相手は公爵家。欠伸をするのはまずいだろうね。さすがに、ロレーナには助けを求められないし。

 まったく、父はなぜこんな相手の来訪を許可したのか。どんな付き合いで?

 少なくとも、今朝の段階では私は誰かが来るなんて話は聞いていないんだけど。もちろん、手紙もない。


「――というわけだから、おい、聞いているのか」


「すみません、聞いておりませんでした」


 正直に答えると、カイゼル・ベンジャミンはぽかんとした顔をする。

 まさに、あなたが私を訪ねてきたときの私の心境とそっくりだよ。

 それなのに、人には話を聞いていないって、よく唖然とできるよね。鏡見たことないのかな?


「おまえ――」


「ねえ、ロレーナ。今日、私に面会を求める手紙ってなにか来てた?」


 私はカイゼル・ベンジャミンの言葉を無視してロレーナに尋ねた。

 

「いえ。届いておりません」


 ロレーナは短く答えた。

 そうだよね、私も見てないから。


「それじゃあ、お父様から、今日、どなたかが会いにいらっしゃるという話を聞いてる?」


「いえ。そのようなお話は伺っておりません」


 ロレーナは私につけられてはいるけど、仕えているのはお父様、そして、ユーイン家にだ。私には雇用能力がない――賃金を払うことができないからね。

 もちろん、爵位とかだけなら向こうが上(本当に代替わりしていたらの話で、そうでないなら公爵家令息と公爵家令嬢は対等だ。男尊女卑なんて考え方は、少なくとも公には、ない)なんだけど、誰の話を優先して聞くのかといえば、家の者に――つまり、この場合は私ということになる。

 だいたい、父はいつもどおり城勤めだし、母も今日は魔塔に出かけて――もちろん、イシスを連れて――いて、屋敷には私と、ロレーナたち使用人が数人しかいないんだから、どこかの誰かの、ましてや、私の顔見知りでもない相手からの訪問を受けるはずがないんだよね。

 そりゃあ、王家とかなら話は違うかもしれないけど、相手は同じ公爵家だし。

 シャーロックが庭に落ちてきたことがあったけど、あれは不慮の事故で、シャーロック自身、あのときは四歳だったからね。

 もしかして、父は今日の話なんて聞いていないんじゃ……? いや、さすがにそこまでということはないだろうけど……。

 そもそも……いや、ロレーナを責めるのは筋違いだろうね。ロレーナだって、公爵家の使用人で、男爵家の令嬢だけど、公爵家の当主を名乗る相手の訪問を拒否できるはずもない。下手をすれば、自身の首が飛んだり、実家が潰されたりもしかねない。あるいはユーイン家に迷惑がかかるかもしれないわけだし。

 権力による横暴だけど、そのくらいはされるかもしれない。まったく文化的ではないし、なにが貴いのかわからなくなるような行動だけど。


「ベンジャミン様。本日の来訪の旨、父には前もってお話しされていたのでしょうか?」


「いや。私の用があるのはきみだからな」

 

 いや、じゃないでしょ。

 ここは当主である父、ユーイン公爵の家の敷地なんだよ? その、持ち主に許可なく立ち入るって、下手すれば、強盗だよ。

 

「ロレーナ。申し訳ないけど、私は体調が優れないから、お帰りいただいてもらえる?」


「承知いたしました」


 さすがに、私が対応していないのに居座るほど図太くはないでしょ。

 だって、先触れも、手紙なんかもないんなら、今日の訪問を――おそらくは――父と母は知らないということだ。知っていたら、家にいるはずだし。

 それにもかかわらず、騎士団長の家に居座り続けるほどの胆力があるなら、すこしは感心するかもしれないけど。

 感心するだけで、好感度が上がるとかってことは一切ない。

 

「申し訳ありません、ベンジャミン様。体調が優れないため、本日はお引き取りをお願いできますでしょうか。それから、次があるのでしたら、そのときには、手紙と先触れ、それから、両親のいる際にしてくださると助かります」


 私自身で相手にしたくはないからね。

 子供なら、多少はマナーとか、ルールとか、わからなくても仕方ないかなと思えるけど、カイゼルはすでに社交界にもデビューしている大人だよね。

 それが、こんな――私が年下だからと侮っているのか、横柄な態度をとるようじゃあ、先もないだろうし。

 先がないっていうのは、将来的に成功しなさそうとかそういうことじゃなくて、言葉どおり、いつかどこかでやらかして、逮捕でもされるんじゃないかって意味だ。

 しかし、カイゼル・ベンジャミンは立ち上がることなく。

 

「まだ、きみの答えを聞いていないが」


「答え……ですか?」


 早く帰れって意味だけど、通じなかったのかな。


「私の婚約者にしてやると言っているだろう」


 わざわざしていただかなくて結構だよ。なんで、こっちがしてほしいみたいに言われているんだろうね。


「……私の一存で決められることではございませんので、まず、父に話を通していただけますか?」


 私の一存で答えていいなら、お断りです、とひと言告げるだけでいいんだけど。というより、すでに伝えたようなものだけど。 

 カイゼル・ベンジャミンは顔をしかめた。

 父に話せば断られるとわかっているんだろうね。それで、なんで私には通じると思ったのかな。

 これが次代の公爵家、つまり、国の有力貴族となるんなら、国の存続の危機かもしれない。

 魔王軍が攻めてきているわけでもないのに。まあ、この相手を打ち倒せるのは、勇者とか聖女とかじゃないだろうけど。 


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