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転生、転生、転生、転生……って、もううんざり  作者: 白髪銀髪


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四歳 マニエール男爵家訪問 変装です

 ◇ ◇ ◇



「アリアお嬢様、すこし失礼いたします」


 私は身だしなみくらい自分で整えられるんだけど、ロレーナがどうしてもと言うので、朝は髪を梳かしてもらった。

 梳かし終えて、ロレーナは私の髪を器用にまとめる。


「本日は、領地の様子を視察なさるということでしたので、こちらをご使用ください」


 手渡されたのは、つばの広い、白い帽子だった。緑のリボンが巻かれている。


「お嬢様の御髪は大変綺麗ですし、目立ちますから、もし、万が一、本当になんらかの悪事が蠢いていた場合、巻き込まれないとも限りません」


 様子を見に来た以上、自分から巻き込まれに来たようなものだけどね。とはいえ、ロレーナの心配はわかるし、私は素直に帽子を受け取った。

 今日は、ロレーナの格好もいつものメイド服じゃなくて、ワンピースを着ている。私が普通に見せようとしても、メイドが近くにいたらすぐ怪しまれるに決まっているからね。

 

「もちろん、お嬢様は御髪以外も大変可愛らしいですけど」


「どうせ変装するなら、男の子みたいにズボン履くとか、いっそ、髪切っちゃうとかすればいいと思うけど」


 どうせ、髪なんてすぐに生えてくるし、外見のイメージを変えるには、髪を切るのが一番効果的で、一番手っ取り早い。


「なにをおっしゃっているんですか、お嬢様」


 ロレーナの顔は真剣そのもので、絶対許さないという迫力がある。

 

「そんなことをされては、旦那様と奥様がお倒れになられますよ」


「いや、大袈裟でしょ……」


 ただ髪を切ったくらいで。でも、まあ、そこまで言うなら切らないけどさ。


「その代わり、私が心を込めて編ませていただきましたから」


「うん、ありがとう、ロレーナ」


 あとは、カラーコンタクトとかでもあればいいんだけど、この世界にはそんなもの存在しないので、サングラスで誤魔化すことにした。もちろん、かつらだって――すくなくとも、この家には――ないし。

 

「どう?」


 髪の処理を終えて、立ち上がった私はその場で一回転してみせる。


「大変お可愛らしいです」


「そうじゃなくて、変装していると知らなければ、アリア・ユーインには見えないかどうかってこと」


 こういうのは、自分で鏡で見るより、他人からの評価を聞いたほうがいい。

 とくに、いつも一緒にいるロレーナの知見で、別人に見えているなら成功、他人にはバレたりしないだろう。


「そうですね。その、お嬢様はとても雰囲気がおありですから、完全に隠しきるというのは不可能かと思いますが、そうと知らなければ、どこの誰かとまで特定されることはないと思われます。丁度、父と母もいますから、試されてみてはいかがですか?」


「そうだね」


 もし、ばれなかった場合、いきなり家に知らない人が上がっている、泥棒だ、とっちめてやる、みたいなことにならないかってことは心配だけど。

 私は、むしろ、迷惑をかけている側だからいいんだけど、呼ばれてきた衛兵とかが、公爵家の娘に迷惑をかけたとかってロレーナの両親のほうを逮捕しかねないからね。


「さて、じゃあ、次はロレーナだね」


 なにしろ、ロレーナはこの男爵家の娘なんだから、昨日着いたばかりの私より、姿を知られているはずだ。むしろ、ロレーナのほうこそ、変装の必要性がある。


「では、私は、お嬢様のおっしゃっていらしたように、ズボンを、スーツを着て行くことにいたします」


 マニエール男爵の幼少期のものが残っているみたいだと、ロレーナは言っていた。

 

「私には着せないくせに、自分では着るんだね」


「大したことはできませんが、護衛も兼ねていますので、動きやすいほうが良いかと思いまして」


 ロレーナは悪びれる様子もなく淡々と答える。

 まあ、どうしても男装がしたいなんてことはないし、いいんだけどね。

 

「おはようございます」


 私はロレーナと一緒に、昨夜もご飯をご馳走になった一階のダイニングまで降りて行ったところ。


「はあ……おはよう、ございます……」


 とりあえず、男爵家の使用人にはバレなかったみたいだね。

 視線から察するに、さすがに、この格好でもロレーナのことはわかったみたいだけど、男爵家の使用人に男爵家の娘のことがわかったところで、当然だろうし、そこは確かめようもない。

 結局、四歳児の体型で判断できるわけだし。

 

「気がつきましたか?」


「ええと……」


 急に聞かれても、わかっていなければ戸惑うか。

 私は帽子とサングラスをとってみせる。


「っ、これは――」


「謝罪は結構です。私の変装がうまくいっていたという証明ですから。むしろ、驚かせてしまって、こちらが謝罪をしたいところです」


 そんなことをしたら、余計に恐縮させてしまうことはわかっているから、できないけど。

 

「そういうことですから、もし、今日外で私たちを見つけても、知り合いのようには振舞わないでくださいね」


 それから挨拶をした男爵夫妻にも、娘のロレーナはともかく、私のことは、少なくとも見た目からはわからなかったようだ。

 とはいえ、今、この男爵家にいる子供といえば、私とロレーナくらいのもので、そのロレーナのことはわからないはずがないのだから、隣にいるもう一人が誰かということがわからないはずもないだろう。

 

「一応、なにをなさるおつもりなのか、お聞きしてもかまわないでしょうか?」


「もちろん、視察です。とはいえ、男爵の仕事ぶりに不満があるなどということでは決してありませんし、私のことは観光客かなにかと思ってくださればかまいません」


 視察というか、偵察というか。

 ようは、情報収集だ。


「しかし、お嬢様の身になにかあっては」


「なにか心当たりがおありになりますか?」


 そもそも、変装していようがいまいが、子供に対して乱暴を働こうなんて許せることじゃないし、相手が今回の企みの関係者だろうがそうでなかろうが、関係なく、即逮捕するべき案件だよね。

 

「いえ、そういうわけではございませんが」


 男爵の視線がロレーナへ向かう。

 言いたいことは明白だったので。


「ロレーナは悪くありません。私がこうしてほしいと頼み込んだものですから。むしろ、主人の意を尊重してくれる、素晴らしいメイドぶりです」


 そんなロレーナのためだし、一肌脱がないとね。


「つまり、領民には、アリア様のことは内密にしておくと」


「ええ、それでお願いします」


 まあ、私の容姿がそれほど知れ渡っているとは思わないけど。所詮は、いまだほとんど箱入りと言っていい、四歳女児だ。

 では、なぜ変装なんてしているのかといえば、例の首謀者というか、彼らには私の容姿はばれているだろうからということだ。

 首謀者、かどうかは知らないけど、すくなくとも、あの密談の場に母と一緒に居合わせたことは事実であって、悪だくみをしていたなら、少しの異常事態にも敏感になっていたはずで、私や母のこと、つまりはユーイン公爵家のことが共有されている可能性は高い。

 そして、アリア・ユーインの容姿は大変目立つからね。髪を切ってしまうのはロレーナに反対されたし。


「承知いたしました。我が領地のことでお手間を煩わせてしまい、申し訳ございません」


「私が勝手にやっていることですから、謝罪などは必要ありません」


 父も母も、私が本当はここになにをしに来ているのかということは知らないし。

 表向きは、マニエール男爵夫妻への挨拶ということだけれど。

 だって、本当のことを話したら、私のここへの外出なんて、許してもらえるはずもなかったからね。さすがに、城の騎士団とかまで動かすみたいなことはしなかったと思うけど。

 実際、嘘をついているわけでもないし。ロレーナの家族に挨拶をしたかったのは本当だ。


「ロレーナ。お嬢様のことはしっかりと御守りするように」


「はい。わかっています、お父様」


 

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