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転生、転生、転生、転生……って、もううんざり  作者: 白髪銀髪


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四歳 マーク王子の誕生日のパーティー

「もういいよ、なんでも」


「よくありません、お嬢様。何の日だと思っているんですか」


 かれこれ、一時間以上、クローゼットと鏡の前に立たされて、あるいは座って、格好を整えられている。

 

「マーク王子殿下の誕生日でしょ」


「そのとおりです。ご存知ではありませんか」


 わかったうえでの対応なんだけど。

 私のクローゼットにはすくなくとも、十着以上、パーティー用のドレスが保管されている。

 どうせ、すぐに着られなくなるのに、こんなにたくさんあっても意味ないと思うんだよね。


「お嬢様は本当に変わっていらっしゃいますね」


 ロレーナが私の髪に櫛を通しながらしみじみとした感じで呟く。


「御付きのメイドが礼を失しても怒らないし?」


 冗談めかしてそう言えば、ロレーナも形だけすみませんでした、と口にする。

 もう、このやり取りも一度や二度じゃないから、すっかりロレーナも私に慣れているようだ。ほかの相手に仕えることになったら苦労するんじゃないかな。私が解雇するとかって意味じゃないけど。

 むしろ、肩ひじ張ってばかりの関係なんて、疲れるばかりで、良いことなんてないからね。

 公の場で問題なく振舞えるのなら、普段は最低限でかまわない。


「ところで、私はお嬢様が王子殿下への誕生日のお祝いを準備されているところを確認できていないのですが」


 基本的に外出が許されてないから、買い物なんて行けないんだよね。

 だからって、他人に買ってきてもらうっていうのも、よくわからないし。やっぱり、贈り物なら自分で選ばないと。


「大丈夫。問題ないよ」


 私はケースを叩く。


「それは、お嬢様のヴァイオリンですよね?」


「そうだよ」


 さすがに、ピアノは持ち運べないし、会場にはあるだろうけど、これを持っていれば、仮にダンスなんかがあったときに断りの文句にできるし。


「なるほど。素敵ですね」


「素敵かどうかはしらないけど、どうせ、私たちに準備できる品物なんて、殿下は御自身でも準備できるんだから」


 ユーイン家は、他国との貿易を積極的に行っているわけじゃない。

 そして、基本的には、国内で手に入るものなら、殿下が自分で手にできないはずもない。

 宝石でも、装飾品でも、本でも。欲しがるかどうかは別にして。

 どうせ、毒感知なんかの魔法にかけられるから、食べ物でもいいんだけど、途中で、ユーイン家に悪意を持つ何者かが挟まれた場合、毒殺しようとしたって言いがかりをつけられる可能性がある。

 こっちはなにもしていなくても、結果的に毒が検知されればいいだけだから。

 あらぬ疑いをかけられようものなら、戦えばいいんだけど、そんなの面倒だし。


「ロレーナ、ヴァイオリンは?」


「嗜みとして程度でしたら。お嬢様は自信がおありの御様子ですね」


 自信ってほどでもないけど。

 

「ピアノでも、フルートでも、なんでもいいんだけどね」


 すでに、作曲も終えている。

 誰かにわざわざ聞かせてってことはないけど。


「もしかして、ここのところ、朝演奏していらしたのは、その曲でしたか?」


「さすがに一度も試奏しないで本番、ってほどには、度胸はないからね」


 仮にも、人に贈るものだし。つまり、ロレーナはすでに確認しているってことだったんだよ。

 それで、ロレーナが聴いていたってことは、ほかの使用人とか、もしかしたら、父や母も聴いているかもしれないし、なにも言われなかったということは、問題はないってことなんだろうね。

 

「お嬢様でも、練習はなさるんですね」


「だから、ロレーナは私をなんだと思っているの?」



 朝食はユーイン家で済ませ、父と母と一緒に城へ向かう。普段は騎士団長である父一人だけど、今日は家族三人だ。

 今日の誕生日のパーティーは、パートナーが必要なものではないし、相手はいない。

 国中の誰もが集まるようなパーティーってことでもないし。多分、本当に親しいとか、城に仕えている中でとか、そんなところだろう。いや、もしかしたら、貴族家は全部呼ばれるかな。もちろん、うちみたいに、子供まで全員っていうのは、珍しいだろうけど。

 とはいえ、今日がマーク王子の誕生日だということは、国中の誰もが知っていることだから、町に行けばお祭り騒ぎくらいはしているだろうね。というより、城へ向かうこの馬車の中からでも、その様子は少しうかがえるし。


「アリア。私から離れないようにね。決して、とくに、男と二人きりになどならないよう」


「あなた」


 そんな注意というか、過保護ぶりを発揮した父は、母に窘められていた。

 たしかに、騎士団長自ら威圧してたら、誰も近寄ってこれないだろうけど、ずっと離れずにいるというのは無理だろう。それでは、父が職務を果たせない。


「アリアちゃん、緊張、はしてないみたいね」


「はい、お母様。私はいつもどおりです」


 ヴァイオリンは家から自分のものを持ってきて、一度も手放していないから心配はいらない。調律も完璧だろう。自分で作った曲を覚えていないはずがないし、歌詞はない。

 歌――曲を送ったところで、求愛に取られるとか、そんなしきたりなんかもない。 

 もちろん、暗器だとか、毒物だとかを仕込むこともできなければ、そんなつもりもない。

 問題……と言えるのかどうかはわからないけど、まあ、気になることといえば、さっきから、つまり、会場に入ってから視線を集めているところだけど。

 それが、父と母は有名だから仕方ないかもしれないけど、私にも向けられてきているんだよね。四歳の女子に向けるようなものではないだろう視線まで。

 さすがに、あからさまなものはないけど、だからといって、気がつかないことはないからね。気にはしていないけど。

 幸いと言えるのかどうか、私たちの登城が早かったお陰か、まだ、会場に集まっている人は少なかったから、多少はましかな。


「くっ、すまないが、私は行かなければならない」


 父は、とても名残惜しそうな顔を見せる。

 私の肩を強く掴み。


「いいか、アリア。どこの誰とも知れない不埒な輩に絡まれたなら、すぐにお父さんを呼びなさい。できる限り、お母さんから離れなければ心配はいらないと思うが、もし、不快を感じたら――」


「アリアのことは心配いらないですから、あなたは早く向かって下さい。お仕事ですよね?」


 母に途中で遮られていた。

 むしろ、家からここまで一緒に来られたのが、かなり無理やりなんだよね。

 こんな、どう考えても、城への出入りが多くなる日に、騎士団長が警備任務から抜けて良いはずがない。

 たしかに、デビュタントも迎えていない私が城へ来た、というより、大勢の前に来たのは初めてだけど。


「いや、しかし、サリナ――行ってくる」


 父は母の笑顔と無言の圧力に押され、心なし寂しそうに離れていった。 

 

「お父様は心配性が過ぎるわね」


「そうですね」


 王子の誕生日のパーティーで、他家の娘に粉をかけに来るような輩もいないだろう。

 しかも、私はまだ四歳児の身体だし。


「国王陛下、ならびに、王妃殿下、王子殿下の御入場です」


 やがて、招待客だろう人たちが出揃ったところで、音楽の調子が変わり、三人が入ってくるのを、ほかの人たちと同じように、私も拍手で迎えた。

 それから、まあ、こう言ったら不敬にあたるかもしれないけど、国王陛下から、今日は息子の誕生日を祝うために集まってくれて云々とかって、言葉を聞いて。

 会式が宣言されると、我先にと、貴族家の、とくにご息女たちが、マーク王子へと挨拶に向かっていた。どちらかといえば、群がっていたに近いかもしれない。もちろん、皆手にプレゼントらしきものを持って。


「アリアちゃんは良いのかしら?」


「私のプレゼントでは、流れを切ってしまいますから」


 なんなら、最後でいいというか、最後がいいくらいだ。べつに、印象に残そうとか、そういうことじゃなくて。

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