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転生、転生、転生、転生……って、もううんざり  作者: 白髪銀髪


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十二歳 火事の報告

 ◇ ◇ ◇



 目が覚めたら知らない天井が目に入り赤子になっていた、なんてことはなく。

 どうやら、治癒の魔法かなにかで、完璧に治療されたらしい。火傷はもちろん、擦り傷の一つも感じられない。

 

「アリアっ……!」


 傍らで椅子に座っていたロレーナが、横になったままの私に抱き着いてくる。

 ロレーナの姿も変わってないから、十年も眠っていた、みたいなことでもないだろう。


「良かったっ、目を覚まして……!」


「ずっとついていてくれたんだね。ありがとう。それから、迷惑をかけてごめんね」


 どうやら、ここは学生寮の私とロレーナの部屋みたいだけど。

 少し、冷静さを取り戻したロレーナが。


「迷惑など、とんでもございません。本当に、目を覚まされて安心いたしました」


 それなら、入院費なんかも心配いらないね。


「私のほうこそ、お嬢様にあのような――」


「待って。あれは、私がやるべきだと思ってやったことだから、ロレーナが気に病むことじゃないよ。それとも、誰かになにか言われた?」


 たとえば、父や母からとか。


「いえ。ご当主様、奥様からは無事で良かったと。それから、娘が無茶をしたようですまないとも」


 本来、こういう無茶を止めるためにロレーナが私につけられていたはずだからね。

 とはいえ、私がやるべきというか私にしかできないことだっただろう。すくなくとも、ロレーナには無理だった。

 ただ、私が自分で自分の成すべきことを成しただけで、他人の思惑なんて入り込む余地はなかった。

 実際、あそこでロレーナに追ってこられても困ったし。


「できる人ができることをしただけだよ。ロレーナに一言言う間も惜しかったからね、それは悪かったと思うけど」


 あの時点で、まあ、こうなるだろうなっていう、予想はできていた。

 もちろん、そのまま無事に脱出できる算段もあったわけだけど、火の回りとか、校舎の耐久性とかが、予想以上だった。

 言うまでもなく、一緒になんて連れて行けないからね。

 シャーロックが現れなかったら、どうなっていたのかは……。


「火事はどうなったの?」


「あれから三日経ちました。火事は消し止められていて、周辺への被害は出ましたが、軽微であり、ほかに怪我人はおりません。ハリエル・ロマーロ様も無事でいらっしゃいます。こちらへ滞在して、療養していらっしゃる間の授業、生徒会業務はすべて免除となっております。ご実家にも連絡は済んでおります。旦那様と奥様は先ほどまでこちらにいらっしゃいましたが、丁度席を外されていらっしゃいます。イシス様はそちらに」


 ロレーナは怒濤のように、私の聞きたがるだろうことを予想していてくれたようで、説明してくれた。

 ロレーナに示されたほうへ目を向ければ、イシスが私の手を握りながらベッドに突っ伏すように眠っていて。

 

「姉様っ!」


 私が起きたのを感じたんだろう、身体を起こしたイシスは、涙を流しながら私の手を強く握り込んだ。

 多分、強く抱きついたりしないよう、十分に言い聞かせられていたんだろうね。

 怪我とかじゃなく、体力的に、受け止めきれたかどうかわからないから。


「ごっ、ご無事で、良かったです……」


「うん。心配かけてごめんね。それから、ありがとう」


 抱きしめ返して、頭を撫でてから、目に溜めた涙をそっと拭ってあげる。

 ロレーナはそうでもないけど、イシスの目は真っ赤だし、かなり心配させてしまったみたいだ。


「――っ、ぼ、僕、父様と母様にお伝えしてきます」


 ありがとう、と額にキスすると、イシスは慌てたように立ち上がり、そのまま部屋を出ていってしまう。

 

「私の授業はともかく、ロレーナは大丈夫なの?」


「はい。本当は、そちらも不要だと言われてはいるのですが、こちらでこなせるよう、課題を用意していただいておりましたので」


 もともと、ロレーナの学力なんかについては心配してないけど。一応、出席がどうとか、関係あるかもしれないし。

 

「生徒会のほうも、フィリージア会長とフェリックス様が完璧にこなされておりましたので、問題はありません。ただ、とても忙しそうになさっていらっしゃいますが」


 それはそうだろうね。

 普段の業務だって、二人でこなすにはなかなかに大変だろうし、その上、今回の火事の件の後始末まであるんでしょう?

 それでも、完璧にこなしていたというのは、二人の能力が非常に高いことの証明だろうけど。


「それから、こちらがお水です」


「ありがとう」


 母もついていてくれたということなら、眠っている間の栄養状態も問題ないんだろうけど。 

 もらったコップに入っていた水を一気に飲み干す。

 

「食事は食べられそうですか?」


「そうだね」


 べつに、お腹が空いているということはなかった。そのあたりも、母のお陰なんだろうけど。

 とはいえ、ここで不要なんて言ってしまうと、ロレーナにさらに心配をかけてしまうだろうから、もらっておいたほうが良いだろう。

 そうして、ロレーナの準備してくれた、スープにひたひたにしたパンを食べていると、イシスに連れられた父と母、それから、養護の教諭が戻ってきて。


「アリア……よかった、目を覚ましたのね」


 ロレーナやイシスと同じように、しっかり抱き締められた。

 

「ご心配をおかけしました」


「本当に。でも、あなたが無事でよかった」


 母をこんなにも心配させてしまうのは、大抵、私がベッドの上にいるときだ。まあ、あたりまえの状況なんだけど。

 

「よかった、アリア。どこか、痛いところはあったりしないかい?」


「いいえ。心配はいりません、お父様」


 本当に、怪我も、痛みも、すっかり感じられない。

 空腹は、まあ、今こうして食事をとっている最中なわけだし。


「そうか。すまなかったね、食事の邪魔をしてしまって」


 フィリージアとか生徒の姿が見えないのは、ロレーナが言っていたとおり、事態の後始末に忙しいということもあるんだろうけど、まだ、授業中だということが大きいんだろう。

 私は、ロレーナへと向き直り。


「ハリエルも無事だったってことだけど、今は授業中ってこと?」


 授業に出られるくらいには、ちゃんと無事、というか、責任を感じて、学院を辞めたりはしてないんだよね?

 

「おっしゃるとおりです。また、今回の件による、ほかのサークル等の活動への支障などはなく、活動停止なども言い渡されておりません」


 棟は燃えてしまったわけだけど、そこは、学院教諭や、騎士団、それから、魔塔の職員まで合わさって、あっという間に修復されたらしい。

 まあ、集合さえしてしまえば、後はどうとでもなるだろう。人数をかけられるわけだから。

 

「一刻を争う事態だったことも理解しているよ。人を助けたことは素晴らしいことだし、誰にでもできることでもない、誇らしいことだね。でも、私たちとしては、娘の心配が第一なのだということもわかってほしい」


「はい、お父様。ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」


 聖女の力でとか、怪我がなくなれば、みたいなことでもないからね。

 笑顔で頷いてから、リシウスは真剣な顔つきになり。


「今回の件だけど、ハリエル嬢の行動は、たしかに事故だった。奇跡的に死者こそ出なかったとはいえ、あそこまでのことをしでかした以上、なんの咎もなしとはいかないよ。それはわかってくれるね?」


 一棟丸ごと、燃やしてしまったわけだからね。

 故意ではないとはいえ、反省文なんかでは済まないだろう。


「もともと、退学などになり、反省の機会もなくなるようなことでもなければ、そのくらいは必要になるだろうと考えていましたから」


 ハリエル自身は、あのとき、大分反省していたように見えたから、もう心配ないとは思うけど。

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