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転生、転生、転生、転生……って、もううんざり  作者: 白髪銀髪


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十一歳 『私』と恋愛について

 王立大ホールとか、可愛らしいカフェだとか、それこそ、学院だとかも見学して。


「ねえ、やっぱり気になるんだけど」


 レインディア姫に耳打ちされた。

 そんなに、国家機密的な場所へは案内してないと思うけど。そもそも、そんな場所ないし。いや、あるかもしれないけど、それは、城とか、学院の中でも、それこそ、研究室とかでしょ。

 でも、そんな私の心配はまったくの的外れで。

 

「マーク王子って、アリアのこと好きなの?」


「……どうでしょうか。わかりかねます」


 すくなくとも、直接告白されたことはない。それに、私には読心術は使えないし。

 魔王軍にはいたんだけどね。基本的に、魔族は人間の心を理解することはなかったんだけど、あのときは……まあ、それは今はどうでもいい話だ。


「わからないってことはないでしょ。今日だって、気がつけばアリアのことを意識しているみたいだったわよ」


 それは、よくマーク王子を見ているってことでいいのかな。


「そうですか。気がつきませんでした」


 レインディア姫自身、こんな風にお見合いみたいな話をさせられているんだから、わかっているんだと思っていたけど。

 そんなことを聞くということは。


「レインディア姫はマーク殿下のことをお好きにはなっていらっしゃらないのですか?」


「だって、これはいわば、政略結婚的なお見合いでしょう? それに、たった数日で恋愛に発展するなんてこともないと思うんだけど」


 世の中には一目惚れって言葉もあるけどね。

 恋だの愛だのに、知り合ってからの日数は関係ないと思うけど。

 とはいえ、実際、極端に言ってしまえば、政略結婚に恋愛感情は必要ない。

 役割さえ果たしてくれるなら、どこで遊び歩いていても問題ないとは思っている。まあ、政略結婚である以上、本当に遊び歩いていられては困るんだけど。それこそ、同盟関係の不信に繋がるからね。あとは、まあ、対外関係的に外聞が悪いということもある。

 それでも、最悪、跡継ぎさえ残してくれれば、というところもある。

 もちろん、恋愛感情があってはいけないということはないし、むしろ、生涯を共にするのであれば、気の合った、互いに尊重し合える相手と一緒になるのが良いとは思うけど。


「では、やはり、お国のほうに未練が?」


 ノーヴィアのほうを継ぎたいと思っているのかな?

 

「それは……もしかして、話をすり替えようとしてる?」


「そう言われましても、私にどうにかできる案件ではありませんから。それに、私個人としても、どうにかしたいと思っているわけでもありませんし、マーク殿下でなくとも、どなたかと生涯を共にするつもりは、今のところありませんから」


 王族との結婚。

 しかも、現状、継承権第一位の相手との婚約どうこうの話なんて、一介の公爵令嬢に口の挟める話じゃない。

 それに、未来はわからないと言ったら、それはそのとおりなんだけど、正妃になるには致命的に欠陥があるからね。

 マーク王子の気持ちはわからないけど、少なくとも、私自身にその気がない以上、今、誰か、しかも、それが血統を重視する貴族が相手となればなおさら、結ばれることはできない。

 

「でも、アリアなら、そうも言っていられないんじゃないの?」


「……ご自分の姿を鏡でご覧になったことはおありですか?」


 私だって『アリア』の容姿に関しては、ある意味、完全に客観的に判断できている。

 本当なら――まあ、ありえない仮定をしても意味はないんだけど、私が乗っ取ったりしなければ、もっと普通に少女として恋愛もできたりしていたと思う。相手がいないということもなかっただろうし。

 

「すくなくとも、今の私には、マーク殿下とどうこうというつもりはまったくございません」


 べつに、同盟相手国の姫君の前だからといって、気を遣って言っているわけでもない。

 そして、マーク王子だけが特別ということじゃなくて、シャーロックでも、誰が相手であっても同じことだ。

 

「この間はアリアのことロマンチストかと思っていたけど、そうでもないのかしら」


「私にはそのようなつもりはありませんから」


 普通の女の子が夢に見るようなことはないからね。

 

「ですから、レインディア姫は存分にマーク殿下と恋愛をされてかまいませんよ」


「うわあ、かわいそう」


 レインディア姫がマーク王子へ視線を向ける。

 

「とにかく、今は恋愛に発展する見込みがなくとも、将来的にはわかりません。たった数日しか接していないからとおっしゃるのでしたら、より、接していただかなくてはなりません。そして、相互理解を深めてください」


 それはアリアにも言えるんじゃ、と言うレインディア姫を押しやり、マーク王子の隣に並ばせる。

 

「殿下。お見合いの相手をまったく意識されないのはどうかと思いますが。お互い、まだよくわからない相手だというのであれば、せめて、手を繋ぐくらいはされてはいかがですか?」


 べつに、恋のキューピッドになろうってつもりじゃない。

 ただ、お互いに知らなさ過ぎる相手なら、そして、恋愛だの、結婚だのをするつもりがまったくないということではないのであれば、もうすこし、歩み寄る努力くらいはしてもいいんじゃないのかってことだよ。

 マーク王子は、なにか言いたげな視線を寄こしてから。

 

「そうだな。申し訳ない、レインディア姫。あなたを気にかけていなかったつもりはないのですが、疎かにしていました」


「いえ、謝罪されるようなことはありません、マーク王子。私も、あまりお見合いなのだというつもりがありませんでしたから」


 まずは、相手と関係を持とうとすらしないのであれば、感情には発展しえない。

 そして、そのつもりがまったくないのなら、こんな話、そもそも、受けるべきじゃなくて、最初から、相手が父であり、国王であろうと、進言してしかるべきだった。聞き入れられるかどうかはともかく。

 マーク王子とレインディア姫が手を重ねる。

 二人が歩み寄ろうとしているのは、私が護衛とか、側仕えをして、初めてのことだと思う。少なくとも、私の前では。

 

「ちょっと、アリア」


「クリスティナ王女。王女殿下も、おふたりが絆を育まれること自体を否定されるつもりはありませんよね?」


 そもそも、クリスティナ王女は、ブラコンで、お兄ちゃんの相手は絶対この人じゃないと嫌、みたいなことを言い出したりはしない。

 なんとなく、マーク王子の普段の様子とかから、ふんわりと、くっつけようとしているだけだ。


「王子殿下が私に対して想いを寄せられているように見えるのは、殿下自身、あまり他の、それも近しい年代の女性と接されたことがないからではないでしょうか」


 もちろん、誕生日のパーティーだとかで、たくさんの女性に囲まれたりはしていたみたいだけど、それとはまた違うだろう。

 

「お兄様では不足ってこと?」


「そういった意味ではありませんよ。ただ、早計過ぎるのではないかと申し上げているだけです」


 べつに、女性遍歴が多いことが良いことだとは、まったく言わないけど。

 そもそも、マーク王子からそんなに想われるほどには接した記憶はないし。

 

「じゃあ、この先、アリアがお兄様を好きになることもあるかもしれない、ということでもあるわけよね?」


「……そうですね」


 まあ、百パーセントないとは言い切れないだろう。限りなくそれに近くても、可能性がゼロパーセントってことはないから。

 もっとも、今のところ、私がマーク王子を好きとか、そういう目線で見られるかと言えば、やっぱり、シャーロックとか、イシスとかと一緒というくらいにしか見えないんだけどね。

 

「それと、今アリアが好きな相手とか、想う相手がいるとかってわけでもないということよね?」


「ええ」


 少なくとも、『アリア』としては、誰かを恋愛的に想っていることはない。


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