最後の会話
親友の優奈とはいつも一緒に帰っていた。
私たちは時間を忘れて話し続け、いつも私の家に着いても話は終わらなかった。だから、優奈と別れた後にはリビングのソファーに座って、無料通話アプリを立ち上げて話の続きをするのが常だった。
その日も学生鞄をその辺にうっちゃってスマホを取り出して優奈へと無料通話アプリのアイコンをタップした。
「もっしー、優奈。さっきの話の続きなんだけど」
「うん、山田が彩里に気があるって? どんな感じィ?」
「それがアイツったらさぁ」
と私の恋バナの続きを始めたが、優奈の声のトーンが少し落ちたのが気になった。
「……どうした?」
「……うん、なんか、近所のお兄さんにつけられてるような気がする……」
「マ??」
「いやぁ気のせいかも。袋持ってるし、スーパーの帰りかも」
そんな感じの会話をした後に、突然優奈が小さく叫んだ。
「きゃ……!」
そして会話は一方的に断ち切られてしまった。私はパニックに陥ってしまったが、すぐに優奈からトークがあった。
『あ、ごめん。変な風になっちゃって。ちょうどお父さんが迎えに来てくれてさぁ。ビックリしてスマホ落としちゃったんで通話切れた』
私はホッとしてトークを送った。
『なぁんだ。近所のお兄さんは?』
『わかんね。もう振り切ったわ~』
『なんだ、そっか~』
『じゃまた明日学校でね~』
『うえーい、オケ!』
口調も優奈だったので疑わずにトークを終了させてしまったが、もう優奈には会えなかった。
優奈は河原で無惨な姿で見つかったのだ。犯人は近所の男だった。
男は優奈を襲い、セキュリティが解除されたままのスマホを操って、私に返信を返したのだろう。
あの時──。私がホンの少しでも気を付けて通話にしていれば……。優奈の後を追いかけていれば……。
悔やまれて仕方ない。