指切り鬼
ある所に人を騙し嘘をつき脅す悪事を働く。
小爪ノ助-コツメノスケ-
という男がいました。
小爪ノ助は、村で町で人に話しかけ仲良くなり秘密を知り、その秘密をばらされたく無ければ言う事を聞いてくれ。
と言って金や着物、食べ物に家。
人に相手をさせ、自分は何もしない。
けれど誰も文句が言えないのは、秘密をバラされたり小爪ノ助の事を、悪いヤツだと思わなかったからである。
小爪ノ助は、思う所があった。
小爪ノ助の秘密は、人の秘密を知っているという事。
人の秘密を知っていて秘密をバラされたく無い人を騙すという事。秘密を知りたい人に嘘をつく事。
その両方が、悪い人間なので脅す事。
小爪ノ助は、いつかバレ無いか?
小爪ノ助は、いつか責め立てられて同じ目に会わないか?
小爪ノ助は、自分の秘密は誰にバレるのか?
小爪ノ助は、いつか自分も脅される日が来ると思っていた。
ある日、戸を叩く音がするので表に出た小爪ノ助は、驚いて尻もちをついた。
昼だと言うのに大きな鬼が、家の前に居て小爪ノ助を、片手で掴んで山の鬼の棲家まで走って持って行ってしまった。
鬼に縄で縛られて動けない小爪ノ助は、泣いて叫んで家に帰して欲しいと頼んだが、鬼は何も言わず目も合わせ無かった。
小爪ノ助は、少し落ち着き質問をした。
「鬼よ、鬼よ。人の秘密を知りたくないかい?」
鬼は、小爪ノ助へ質問をした。
「お前は、秘密を話すのか?」
そう言うと鬼は、小爪ノ助の指を1本爪の先で掴んで片手には刀を持った。
「正直に話せば指を切らないでやる。正直に話さなかったら指を切る。秘密を話せ」
小爪ノ助は、自分では無く今まで知った人の秘密を話続けた。
鬼は、その話を聞いて質問をして話続けた。
小爪ノ助と鬼は、何日も話続けた。
ある日、鬼は質問では無く自分の話をする事にした。
「何故、俺がお前を連れ去ってきたか分かるか?」
小爪ノ助は、忘れていたという顔で鬼を見た。
鬼は、その子爪ノ助の顔を見て笑っていた。
片手に持っていた刀は、地面に置いて小爪ノ助を手に持ち外に出る。鬼は村に戻り大きな声で叫ぶ。
「おい!村の者!嘘をつくな!小爪ノ助は、正直な奴だぞ!秘密なんて何も無い!秘密があるのはお前らだ!」
小爪ノ助は、目を見開いた。
村から鬼の下へ来た村人達は、口々に言う。
「違う!小爪ノ助は秘密を隠している!だから私たちを脅し嘘をつき騙したんだ!」
「鬼よ!早く小爪ノ助の指を切れ!」
「早く!小爪ノ助をバラバラにして山に埋めておくれ!」
鬼は、少し黙った後、小爪ノ助を地面に降ろし山へと帰って行った。
小爪ノ助は、家に帰ったが鬼が気になり山へと行った。
「鬼よ。キサマの秘密は分かったぞ。山に住むならと村に頼まれて、邪魔者のオラの指を切りに来たんだな?」
鬼は、ただ頷くだけだった。
「オラは、お前の秘密を知った。でもバラす相手が居ない。お前の秘密は皆、知っている。鬼よ。お前は秘密がバレたく無い相手が居たか?」
鬼は
「小爪ノ助にバレたく無かった。お前は正直だ。初めて指を切らずに済んだ。これなら村の奴らの指を切った方が良い」
小爪ノ助は、大きな山中に響く様な大声で笑った。
鬼は煩くて耳を押さえる。
「そうか!そうなのか!オラも秘密は無いしお前も秘密は無い!オラと一緒に住んで暮らそう!村の奴等なら大丈夫。オラが秘密を握っている。お前も知っている!逆らう奴は指を切ってやればいい!」
鬼は、涙を流し笑って小爪ノ助と暮らす事にした。
2人は、村で秘密を知っては、その人を騙し嘘をつき脅した。
正直で無い者は、鬼に連れ去られ指を切られた。
けれど、ある日。
小爪ノ助は、鬼に嘘を言ってしまう。
「鬼よ。オラは、もうお前と一緒に居られ無い。都に行って大きな所に住む。都では鬼と分かれば嫌われる。鬼は倒されてしまう。お前と一緒に居られない」
鬼は、怒り、刀を振り上げ小爪ノ助の指を切ってしまった。
「小爪ノ助は、嘘を言った!」
小爪ノ助は、切られた指を見て
「ああ、そうだ。オラはお前と離れたく無い。けれど自分の願いも叶えたかった。オラは嘘をついた。すまなかったな鬼よ」
小爪ノ助は気を失った。
その後、誰も小爪ノ助と指切り鬼を見た者は、居なかったそうな。