13.試されるケイティ(ケイティ視点)
「フィン」
呼び止めると、彼は既に大きな羊皮紙を一枚手に持っていた。
「遅くなってごめんなさい。案を書いてきたのだけど……」
「とんでもございません。ありがとうございます」
フィンはその場で私の書いてきた案を広げた。なるほど、と小さく呟く。
「国民全員を招待した舞踏会の復活……」
「以前は何度か開催されていたでしょう? 」
小さな国だからできることなのだ。この国で暮らすものは全員誰もが参加できる舞踏会。確かガーランド家の兄弟もこの舞踏会が好きだったと聞いている。中止になったのは、確か現在の王妃がそれをよく思っていなかったから。
確かに、若者にとってはあれが出会いの場でもあったから、風紀の乱れはあったかもしれない。
私はそこで、あの方と出会うことが出来たのだから。
「楽しそうですね。……弟君のテオ王子が聞いたらお喜びになりそうです」
フィンは苦笑いをしている。真面目な彼にはあまり理解できないのかもしれないわね。それに、良くない女性がお慕いするダニエル王子に寄り付いてしまうかもしれないい。
「町に活気が溢れると思うの……難しい案だと分かってるわ」
参加するのが国民全員ではないとしても、あれほどの人数をもてなすのはなかなか大変だ。
「もしも叶うなら、オータム家も全力でお手伝いするわ」
フィンは穏やかに頷いている。
「それは頼もしいです……確かに、楽しみが増えますものね。ありがとうございます。王子に伝えます」
「ありがとう」
あの舞踏会は昔からの伝統として残しておきたいくらいだった。それなのに、王妃が少し難色を示したらすぐに取り止めだなんて。
「以前参加してくださったのですか?」
「ええ、とても楽しかったわ。忘れられない」
思わず興奮で声が上擦ってしまった。
「それは……ありがとうございます」
フィンはにっこりと笑って、丁寧に頭を下げた。
そういえば、あの時この人もいたのかしら。私の好みではないが、一度見たら忘れないほど整った容姿をしている。ダニエル王子が信頼しているというくらいだから、ガーランド家に仕えて長いと思っていたけれど。舞踏会の話をしてもあまりピンと来ていないようだわ。
「……そうだ、ケイティ様は昔からガーランド家と繋がりがあったようですね」
「繋がりと言ったら烏滸がましいわね、一国民として関わらせて頂いたと思っています」
「それなら、ご教示いただけませんか?」
フィンは一瞬口を閉じて、辺りをぐるっと見渡すと小さな声で囁いた。
「ケイティ様は、どなたが王妃に相応しいとお考えですか?」
難しい質問ね。どう答えたらいいかさっぱりわからないわ。
でも、もしもこの場で『私が相応しいと思う』なんて言ったら、彼はそれを信じるのだろうか。いや、そんな女性が王妃に相応しい訳がない。
「みんな素敵な女性よ、誰が王妃になっても大丈夫だと思う」
「……そうですか。ありがとうございます」
フィンはにっこりと笑ってくれたけど、本当に求めていた答えはもっと違うものだったのかもしれない。




