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【完結】貴族令嬢(かませ犬)を演じれば借金帳消しって本当ですか?  作者: 桐野湊灯


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12/30

12.試されるセレスティ(セレスティ視点)

「フィン、少しいいかしら?」


 二人きりで話すのは初めてね。よく笑って気が回る男性だけど、いざ顔を合わせると緊張が走る。


「セレスティ様。お身体の具合はどうですか? 」


 柔らかい表情のまま、フィンは本当に心配そうに訊ねた。


「もう平気よ」


「それは良かったです」


 人形めいた表情がくるくると変わる。


「これ……、催し物の案よ」


 持っていた羊皮紙には、細々と丁寧に解説も書き込まれている。


「木を植える……?」


「ええ、みんなで町に木を植えるのよ。自分たちの手でね、ここは自分たちの森があるけれど、町にはそれほど生えていないのよ。手入れが簡単なもので、有事の際には役に立つようなもの……例えば食べられる実がなるとか、焚き火が必要な際によく燃えるとか、思いつく限りでそこに書いてみたんだけど」


 フィンが手元を覗き込んだ。


「緑があると心が落ち着くわ、夏はこの下で涼むことも出来るし……」


「素敵です。町の景観も良くなりますね」


「まあ、わざわざいつもの華やかな催し物の変わり種として、土いじりなんて……あまり通らないような意見だとは思っているわ」


「でも素敵なご意見です。もしも今回は通らなくとも、例えば王子の即位する際に、みんなで木を植えたら記念になりそうですし……」


 フィンは穏やかに頷きながら、セレスティから羊皮紙を受け取った。


「すごい、木の種類まで調べてくださったのですか?」


「いえ、私の記憶の範囲でのことですから。覚え違いもあるかもしれません、お恥ずかしいですわ」


「とても読みやすいです。セレスティ様、ありがとうございます。さっそく王子に伝えます」


 それに、絵がお上手なのですね。囁くような声に思わずドキッとする。褒めて欲しいところを的確に褒めてくれる。まさしく人たらしね。ダニエル王子が最も信用する人物だとしているらしいけど、それも納得だわ。


「それは、どうも」


 本当は飛び上がるほど嬉しいけれど、ここはぐっと抑える。あのメリル、という子のように落ち着きのない子だと思われたくない。だが、きっとああいう子が男性から好かれるのだ。フィンも、あのロイドとかいう男も……。


 やだ、私ったら何を考えているのかしら。


「……? どうかしました?」


「いいえ、もしかして私が最後だったかしら。案を出すの……遅くなって申し訳なかったわ」


「いえ、セレスティ様は二番目です」


「あら、そうなの。私はてっきり……」


 期限は夕食の前まで。結構ギリギリだと思っていたから、私が最後だと思っていた。

 メリルという子をつい揶揄ってしまったけど、私だって素晴らしくいい案が浮かんだとはいえない。きっと、ケイティなんて子はもっと素晴らしい案が浮かんだでしょうね。


「みんな少しでもお役に立ちたくて熟考しているのでしょう、少しの遅れは許して欲しいわね」


 本当にいい案を求めているのなら、与えられる時間が短過ぎる。これは、試練のひとつだと分かっているから割り切っているものの、本当に真摯に課題に向き合うのなら一晩は欲しかった。ちくり、と嫌味を言うと、フィンは

困ったように笑った。


 ああ、また可愛くない言い方をしてしまったわね。


 父と母からもよく注意されるのだ。可愛げがない、と。気を付けてはいるが、今更性格を変えることもできない。


 今のは減点対象かしら。フィンの顔色をちらっと窺ってみるが、特に顔色は変わらない。


「ところで……、セレスティ様から見て王妃に相応しい女性はどなただと思います?」


「……え?」


 唐突に可笑しなことを聞く。


「ここだけの話ということで、参考までに」


 細くてしなやかな人差し指を、美しい唇の前でこっそり立てて見せる。どことなく淫靡な仕草。


「そうね……」


 私は少し考えてみた。正直に打ち明けたら、相応しい人間なんて誰もいないかもしれない。かといって、思ったままを口に出来るほど、自分は上等なのかと、問われたらそれも違う。


「……ケイティ・オータムは人が良過ぎるわね。王妃としてそれが相応しいかはわからないけれど、国民から愛されると思う」


 なるほど、とフィンが頷く。


「ジゼル・サマーは、周りを良く見ているわ。使用人たちにも気を配れる人だから、彼女もきっと愛される人ね」


 身内から嫌われてしまったら、王妃としては痛手だ。彼女はきっと、その心配がない。病弱だと言っていたが、あまりそれを感じさせないようにしているみたいだし、あのロイドという男が放っておけないのもよく分かる。


「メリル・スプリングは……素直で可愛らしい女性よ。少々心配な所はあるかもしれないけど、それは教育次第で矯正させればいい」


 まあ、矯正してしまって彼女の良さが死んでしまうのはつまらないけどね。


 すぐに突っかかってくるくせに、言い返せなくなると『きー!』としか言わないのだから。

 私に妹がいたら、あんな感じだったのかしら。ふっと思わず笑ってしまうと、フィンも穏やかな表情で笑っている。


「……なにか?」


「いいえ。お話を聞かせていただき、ありがとうございます。失礼します」

 

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