第22話 残念なお知らせ
ついロマンに心躍ってしまった。
いかん、いかん。
「これで、俺の体の組成に必要な粒子は揃った訳ですよね?」
「そうね。」
「後は念じたらいいだけですか?」
「そうじゃな。」
「どんな感じをイメージしたらいいですか。」
「まずは、今の状況を確認するわね。」
「はい。」
「今は、ラゴイルの体に、あなたの魂と、私とジジイが入っているわけ。」
「・・・」
「分かり易く言うと、私が闇の粒子の固まりとなって、ジジイが光の粒子の固まりとなって、同居してるって感じかしら。」
「はい。」
「集めた闇の粒子と光の粒子を使って、新しい体を作るのだけど・・・、はっきり言って、その体はもう人の体じゃないわ。」
「えー!」
「がはは、考えればわかるじゃろ!人の体が光の粒子と闇の粒子で出来ているわけないじゃろ。」
「さっきの闇の粒子を得る過程を思い出しなさい。」
・・・
物体から闇の粒子を出すとエネルギーも出てくるとすると、闇の粒子と光の粒子で体を成形したら・・・。
確かに、“爆発“に繋がるエネルギー分が足りない、その一方で、光の粒子は余分だ。
このことにだけ着目しても、人の体とは違う。
・・・
俺、人間じゃなくなるのか・・・。
酷い人間の体を使って、人間を続けるか・・・。
人間じゃなくなるか・・・。
まぁ、ラゴイルは酷い人間だけど、もう魂は送り出されている。
にも拘らず、その体を他人である俺が使い続けるっていうのも、なんだか申し訳ないような気がするなぁ・・・。
「新しい体を組成した場合、残ったラゴイルの体はどうなりますか?」
「吸収して素材に使ってしまうこともできるわよ。」
「おいおい、それはあんまりじゃないかのう。」
「そう?突き詰めて考えれば、そういう事もできるわよ。」
「そうなんじゃが・・・。」
「レーゼン侯爵のところに返してあげることはできますかね?」
「あなた、マヌケだけじゃないのね。」
「え?」
「馬鹿みたいなお人よしだわ。」
「言い過ぎじゃ。安心せい、できるぞ。」
「体を作って、お引越し済ませたら、一旦ラゴイルの体を吸収しておいて、馬車でも手配して送ってもらいます。」
「ん?どうやって?」
「王都に行く前に、カンタに寄って、匿名で手配します。あそこならラゴイルの事を分かる人も居るでしょうし、レーゼン家とのコネを強化する為に率先して取り組んでくれるでしょう。」
「お前さんは・・・たまに、冴えてるな。」
「そうね。いいと思うわ。」
「新しい体は念じたら組成できるんですか?」
「ええ。」
「どんな姿でもいい?」
「いいわよ。どうせ、いつでも組成し直せるし。」
「え?」
「簡単に言えば、粒子の集まりでしかないからな~。」
・・・そうか。
今更ながら、人間をやめるって・・・変な気分だ。
もう死んでいる訳だから、その時点で厳密に言えば人間を終えているとも考えられる訳だし。
「新しい体へのお引越しも・・・」
「念じたら終わりよ。」
「了解です。」
・・・
「話を戻すわよ。あなたと話してると、ホントに脱線すること多いわね。」
え?・・・
今まで何度もはぐらかしたくせにー、他人のこと言えんでしょ。