第15話 慣れてきた武器の成形
やられた……
闇の粒子の集め方を聞きそびれた。
威厳、説教、ご褒美、自慢、ボケ、ツッコミ、エロ、恐怖、誘惑の10コンボ・・・。
俺は卒倒して、夢から退出。
完敗だ・・・。
ここまで教えて貰えないと、聞かない方が良いのかなって思い始めてくる。
心が折れそうだ・・・。
悪夢を見て脂汗と共に飛び起きることはあっても、ここまでの敗北感に襲われて迎える朝も無いだろう。
そんな俺を、朝御飯のいい匂いが、慰めてくれた。
今夜再挑戦しよう!
気持ちを切り替えて、今日も頑張るぞ!
・・・
スムーズに、出発の準備が整った。
野営の設置と撤収にも慣れてきた。
さて、成形しますか。
まずは、周囲の確認。
よし、大丈夫そうだ。
「武具と馬具の成形やるよー。」
毎度毎度、言う意味の無い口上を言うのも嫌だなぁ。
でも、カムフラージュには必要か。
いっそのこと、もっとカムフラージュっぽくしとくか。
俺はパチンと手を合わせてから、両手を空に伸ばす。
「いでよ、武具!馬具!我の力となれー!」
ってね。武具馬具って、外郎売じゃあるまいし・・・この恥ずかしさは、慣れなさそうだ。
俺の恥ずかしさとは無関係に辺りは真っ暗になる。
目の前に、3つの光の固まりが現れた。
次第に光が治まり、アルディ用の武具とネロア用の馬具が現れた。
「グラーシュさーん。悪いけどネロアの馬具の装着して~。」
・・・
グラーシュは目が点になって動かない。
「グラーシュっ!」
「は・・・、はいー!」
「ネロアに馬具の装着!はじめ!」
「はい!」
アルディがゆっくり2つの武具に近づく。
「アルディには引き続きサーベルを利用してもらうんだけど、それとは別にこの大薙刀をあげます。存分に振るってください。」
「御意。」
「この薙刀は非常に軽いから、普段から携行しとくといいかもね。」
「・・・」
「それと、特製マチェット使っているから分かると思うけど、この薙刀も重さで切るタイプの武器ではありません。予め扱いなれておくように。」
「分かりました。」
「それと、こっちのは矢筒ね。こっちも軽いから、携行しているといいかも。中に特製の矢も入ってるよ。無くなったら言ってね。」
「有難く頂戴いたします。」
・・・
・・・・・
周囲が明るくなってきた。
アルディとネロアに装備が完了した。
指示を出さずとも、アルディが馬具の調子を確認しつつ、大薙刀の素振り、弓矢の試射を始める。
「グラーシュ、馬具の装着、ありがとうね。」
「どういたしまして。」
「改めて聞くけど、なんか欲しいものある?」
「・・・」
「んー、欲しい物ができたら言ってね。できることと、できないことがあるから、ごめんだけど。出来るだけ用意するから。」
「はい・・・。」
なんだ?あんまり食いつき良くないな。
「どうしたの?」
「わからないんです。私には何が何だか・・・。」
あ、そうか、今までテキトーにはぐらかして説明していなかったわ。
俺も、おじいさんと先生の事を、とやかく言えないかも。
まだアルディは作業中だ。
この時間を使ってグラーシュに分かっている範囲で説明をした。
が、残念なことに、グラーシュは理解できなかった。
しかし、なにか欲しい物があったり、困ったことがあったら、俺に相談をすると解決するかもしれないって素直に思えたようだ。
それはそれで、話した甲斐があって良かった。
そうこうしているうちに、アルディのチェック作業が一通り終わった。
こういうことを指示無く黙々とこなすところとか、感心するわ。
まぁ、俺が“平和ボケのマヌケ”ってだけなのだろうけど・・・。
「大薙刀は、ほとんど重さを感じないほど軽くて、切れ味抜群の、至高の一振りです。」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。矢の方がどうだった?」
「音も無く飛んでいきます。こうなると、私の作った弓の方が力不足です。どこかに、この矢に負けない弓が売っていればいいのですが。」
「そうか。これから向かう王都に行けば、あるかもね。そこで、他に欲しい装備も整えよう。」
そんな話をしているうちに、アルディも整ったようだ。
「それでは、王都に向けて出発―っ!」