第13話 素敵な晩御飯
「そろそろ、晩御飯の時間じゃない?」
先生が、はぐらかしてきた。
まだ教えたくないらしい。
“余程の何か”が引っかかっているのか。
その“余程の何か”を隠すために、出してきたカードが“晩御飯”って・・・。
「・・・」
「グラーシュがおいしい晩御飯を作ってくれてるんじゃろ~。いいな~。」
・・・
「わかりましたよ。晩飯食べてきますよ。晩飯食べ終わったら、今度こそ教えて下さいよ。」
・・・
・・・・・
目が覚めると、いい匂いがしてきた。
この匂いは、まさか!
目の前に出されたのは、ヤマメの塩焼きだった。
「ルラン様が獲ったヤマメをアクシデントで無くしたらしいと、アルディに伝えたら、アルディが獲ってきてくれました。」
「・・・」
泣いた。
中身は、年を取るごとに涙腺が弱くなった35歳のおっさんだから、仕方ないよね。
晩飯に帰ってきてよかった。
「アルディ、ありがとう。」
フクロウに搔っ攫われた食べ物の恨みが晴れたとかじゃない・・・。
はっきり言って、ヤマメ一匹くらいの食べ物の量なんて大したことは無い、我慢できない量じゃない。
それに、グラーシュが出発に合わせて用意してくれた保存食は、びっくりするほどたっぷりある。
ヤマメ一匹失っても、大勢に影響はない。
そうじゃない。
俺を思って、わざわざ獲って来てくれたのが嬉しかった。
ただ、ちょっと気になることがある。
もしかしたら、俺がショックでふて寝したって思って、お手数おかけしちゃったのかもしれない。
ふて寝じゃなくて、謝罪に行っただけなんだけどな~。
まぁ、でも水を差すのもアレなんで。
素直に感謝しよう。
あわせて、ふて寝と解釈されるような軽率な行動は、今後止めよう。
まぁ、たまには、ふて寝するけど。
大人げない行動と誤解させてしまった・・・ごめん。
「で、3頭とも傷は無かった?」
「はい。ありませんでした。」
「良かった~。」
まだ付き合いは数日だけど、大・中・小の名前の付いた3頭の白馬には愛着が既に沸いている。
ケガとかマジで勘弁してほしい。
ただ、ネロアだけは召喚馬だから、再召喚する事ができる。
その点はアルディも同じだ。
本当の緊急事態では、アルディとネロアには特攻、その隙に、俺とグラーシュは逃げることも有るだろう。
まぁ、すぐに再召喚するけど。
「アルディさぁ、ネロアの馬具はどんなんが良い?」
「・・・」
「機動性重視の軽騎兵?防御力重視の重騎兵?」
「うーん・・・」
「どちらも、いいよね~。」
「ひとまず軽騎兵でいいかな?」
「はい。」
「それと・・・」
「・・・」
「武器の用意が間に合わなくてごめんね。」
「お気になさらず。」
「当面は俺のサーベルで頼むね。」
「御意。」
「グラーシュは何か欲しい道具ある?」
「私は頂いたサバイバルナイフで満足しています。」
グラーシュはサバイバルナイフを取り出して満面の笑みを浮かべている。
やばいやばい、美女がサバイバルナイフにうっとりしている様は、なんかゾクゾクするな。
・・・
いかん!話の途中だった!
「明日は、周囲を警戒して、出来そうなら出発前にアルディの武器と、ネロアの馬具の成形します。もしダメなら道中でやるから、よろしくね。」
「はい」
「御意」
さて、気合を入れて、入眠だ。
今度こそ。