第9話 妖精との初対面
妖精、妖精っと。
目を覚まして、妖精を探すが見当たらない。
「ルラン様、下がって、私の後ろに!」
え?
「敵襲!」
アルディの声が響く。
「敵襲?」
アルディが右に向けて指を差す。
指の先の森に、小さい鬼のような生き物が、20数匹見える。
「ゴブリンです!」
え?・・・ゴブリン?
妖精は?
もしかして、ゴブリンが妖精?
って、混乱している場合じゃない!
手には弓やら剣やら持っている。
定期的に矢が飛んでくるし・・・。
剣を持ったゴブリンは、こちらに迫ってきている。
こんな事態を想定していなかった・・・。
相変わらず、俺がマヌケだったってことか・・・。
スキルを試すときだけ、念入りに偵察のための光の粒子を飛ばしていた。
その時に動物はおろか“妖精”も見かけなかったから、完全に油断していた。
ただ、後悔していても始まらない。
今後は基本的に最低でも1km四方は警戒をしよう。
そして何より、現状打破だ!
「進行方向を変える!やや左に進路を取って、全速前進!弓矢の射程外まで出るぞ。」
「俺が先頭へ出る!グラーシュついて来い!」
「アルディ、矢のうち払いと殿を頼む!」
・・・
・・・・・
森の中を走っているあっという間にゴブリンが見えなくなった。
3頭の白馬はいずれも足が速いわ。
優秀過ぎる。
・・・
「そこで、小休止しまーす。」
少し先に見える開けたところを指さした。
止まったところで被害確認。
被害・・・ゼロ!?
寝起きで状況もよくわからないまま、とにかく逃げたけど、そんなに劣勢ではなかったのか?
「アルディ、殿、どうだった?」
「飛んできた矢は、ほとんど威力を失っていたので、打ち払いは容易でした。」
「え?」
「ネロアの大きさと気迫に押されて、ずいぶん遠くから弓での攻撃を始めたのだと思われます。たぶん、テリトリー確保のための威嚇がメインだったのかもしれません。」
ははは、そりゃそうだよな。
こんなデカい馬とそれに跨る猛将の気迫、ヤバいもんな・・・ガチで襲うには気が引けたか。
よく見ると、ネロアなんて、飛んできた矢を咥えてる。
逞しいにもほどがあるわ。
「はい、ネロアさーん、ちょっとすいませんね~。」
断りを入れて、咥えていた矢を見せてもらう。
矢じりには、メチャクチャ臭い液体が塗り付けてあった。
ネロア・・・こんな臭いのよく咥えてたね。
風を切って走ってたから、あまり感じなかったのかな。
これは・・・毒?
毒だとしたら、遠くから放って威力の落ちた矢でもいいからって放つのも分かる。
ってか、ゴブリンが毒使ってくるの?
これは・・・毒を受けずに攻撃する方法と、万が一受けてしまった場合の解毒方法を備えねば。
毒を受けずに攻撃・・・。
あ!いけね。
アルディの為に矢の材料となる丸棒材を用意しただけで、矢を完成させてないわ。
時間を見つけて、完成させねば。
残りは、矢じりと羽。
・・・
状況確認終了。
落ち着いて周囲に偵察粒子を展開してみた。
・・・
ここはサファ〇パークか?
動物だけじゃない、見た事も無いような生き物が、至る所に居るぞ。
見えた動物や妖精?の特徴を地面に描くなりして、グラーシュに教えてもらうか、王都で資料に当たって照合するしかないな。
何ていう生き物で、どんな特性があるか・・・識別ができないうちは、出来るだけ回避して進もう。
祠近辺はほとんど見かけなかったのに・・・なんでだろう。
この辺に何かあるのかな。
・・・
「それでは気を取り直して、先頭から俺、グラーシュ、アルディで、行くよ~。」