第4話 先生が不機嫌な訳
王都を目指す道中で初めての白と黒の空間。
「“要は急げ”で、良い旅立ちできたかしら?」
「意地悪を言うでない!」
「いえいえ、良い意味で、良い旅立ちできましたよ。」
「クマエ・・・じゃない。グラーシュも付いてきてくれて良かったのう。」
「・・・」
「ホント良かったです。ぶっちゃけると、最後までドキドキしていました。」
・・・
ん-・・・なんか・・・先生不機嫌だわ。
「あのぉ、何か・・・。」
「胸に手を当てて思い出してみなさい。」
・・・全く、思い当たる節が無い。
「ん-、何でしたっけ?」
「・・・」
「すいません、思い出せません。教えて下さい。」
「クソジジイが前回、割り込んだせいで、話が途中だったでしょ!!」
あー!そうだ!“要は急げ”で途中退室した感じになってた!
「・・・思い出しました。ごめんなさい。」
・・・
「まぁ、いいわ。」
「俺なんかチョンボしちゃいました?」
先生が、いきなり俺の目の前に、紐の様なものを指でつまんで出してきた。
ん?
その瞬間その紐が飛びかかってきた。
「あぶな!」
咄嗟に頭を引いたが、間に合わず、鼻に痛みが走る。
慌てて取ってみると、スジの入った30cmくらいの蛇だった。
「シマヘビ?なんで?」
「あんたが、水集めるときにコレも吸い込んだんでしょ!!」
「えー!」
「どうせ、『水流なんて川に手を突っ込めばラクショー!』なんて思って、ろくに注意も払わずに手を突っ込んだんでしょ!!」
御明察すぎて、なんも言えねぇ。
「私言ったわよね、生き物吸い込むなって。」
「ごめんなさい・・・。」
「・・・」
「すぐにゲートから出します。」
「ダメよ。」
「え?」
「もう変質が始まっちゃってるから、不用意に出せないの。」
言われてみると、シマヘビの縞の部分がちょっと黒いような。
「個体差はあるけど、普通はこんなに早く変質し始めないから、別に急いでゲートから出す必要もないけど。」
「・・・」
「運が悪かったわね。」
「あのぉ、この後はどうしたら・・・」
・・・
「ここで飼ったらどうじゃ。いいじゃないか、面白くなりそうじゃ。」
おじいさんが耐え兼ねて首を突っ込んできた。
「クソジジイ!」
「すまんすまん。」
「いーい!もう一度言っておくけど、生き物を吸収しないで!」
「はい!」
「万が一、吸収してしまったら、速やかにゲートから排出すること!」
「はい!」
「たのむわよ!」
「はい!」
「質問は?」
「ついさっき、吸収した木材にも生き物が付いていましたか?」
「付いていたわ。」
「その点について指摘が無かったという事は、速やかに乾燥分解などをしたからその時に死滅させてしまったから問題にならなかった?」
「そうね。幸いにも、小動物を巻き込んで吸収していなかったし。虫や微生物の類は乾燥に巻き込まれて、ただの死骸になってしまったわ。」
「後でゲートから出して、焚火で火葬しときます。」
「焚火で火葬・・・なんか、ちゃんとしてるんだか、してないんだか、わからないわね。」
「・・・」
「別にここに入れておいても、無駄になるわけじゃないわよ。」
「そうなんですか」
「あなた次第ね。」
「・・・」
「ふふふ、もしかすると、凄い事に使えるか知れないわよ。」
先生、すげぇ思わせぶりじゃん。
後で後悔したくないし、確かこの空間は無限?・・・だったよな~。
「ストックしておきます!」
次は・・・。