第77話 再出発
改訂2023/04/14
俺の返事を聞いて、グラーシュは座り直した。
「そうそう、グラーシュは、そのままでいいからね。」
「え……!?私も顔を変えられるんじゃないですか……?」
ははは、さっき必要な言って言ったじゃん。
アルディの方が気になってて、入ってこなかったのかな。
「いや、グラーシュの顔は変えない。そもそも、グラーシュは城内で働いていたから、顔がそんなに知られていないと思う。」
「その顔が知られたら、城内で働き続けることなんてできないだろうしさ。」
「何より、その顔はいじりたくない。」
「何でですか?」
「……」
グラーシュは真っすぐ俺を見ている。
そして、俺は、綺麗な黒い瞳に魅せられ、言葉を失ってしまった。
「教えて下さい。」
グラーシュの熱意に我に返れたが、強烈な追究への思いに当てられて、自然と背が伸びた。
はっきり言ってあげるしかないな……
「美人だからだよ。顔が知られていたら放っておかれないと思う。」
「そう思ったラゴイルも、城内の仕事だけに従事させていたのだと思う。」
「はぁ。」
ってか、小さく頷いていないで、美人と言われたことに、もちっとリアクションをせい!
美人ってさ、自覚症状が無い人多いよね……まぁ、良いんだけどさ。
「グラーシュが会った事のある城外の人って、王都の鍛冶屋さんくらい?他にもいる?」
「んー……あまり覚えてないですね。」
まぁ、そうだよね。
外回りしていると、会った事のある人のことは出来るだけ覚えていたり、記録を残したりするけど。
普通に生活してたり、内勤だと、そうじゃないもんね。
中にはきっちり覚えている人もいるけど、そういう人は外回りに回されるし……
「ということで、俺とグラーシュは、基本的にフード付きのローブで活動しましょう。アルディは、好きにしてね。」
二人とも頷いて返してくれた。
「何か質問のある人は挙手願います~。いらっしゃいますか~?」
二人ともお互いの出方を伺っているのではなく、様子を見ているだけに見えた。
「良さそうだね。なお、質問は思い付いたときに、いつでもどうぞ。」
「それでは、王都に向けて、しゅっぱーつ!」