第76話 馬の名前
改訂2023/04/14
「続いて、馬の名前です。」
「グラーシュも分かってると思うけど、うちは3頭とも白馬です。」
「三頭を前にして言うのもアレですが、はっきり言って、ややこしいです。」
「しかも、大・中・小と識別してもパッとしないので、名前を付けることにしました。」
「ここまではいいですか?」
俺の問い掛けに二人とも頷いてくれた。
あはは、二人とも、口に出さないだけでややこしいって思ってのかもしれんな。
「で、名前なんですが……俺の馬は、エラムとします。」
エラムは静かに聞いている。
受け容れてくれたと信じよう。
「グラーシュ、いい機会だから伝えるね。」
「はい。」
「エラムはとても良い子だ。素人の俺でも難なく乗れる。ありがとうね。」
グラーシュは、お礼を言われて、恥ずかしそうにしながらも、微笑んで頷いた。
雑な流れでお礼を言ってごめん。
「続きまして、アルディの馬の名前です。ネロアとします。」
ふと見ると、ペロペロ……していない。
激しくヘドバンしてる。
嬉しかったのかな。
だとしても、そういうのやめて欲しいんだけど。
白く立派な体躯が醸し出す威厳が台無しだ。
まぁ、個性だから仕方ない部分もあるけどさ……
「最後に、グラーシュの馬の名前なんだけどさ……」
そこまで言うと、鋭い視線を感じた。
視線の先を見なくても分かる。
分かってるから、お前の名前は俺が付けたりしないから。
「悪いけど、グラーシュが決めてくれるかな。」
「えー!?」
グラーシュは突然振られて驚きのあまり声を上げた。
「だってさぁ、俺嫌われてるし……やっぱ、思い人に決めて貰いたいんじゃないかなって思ってね。」
「分かりました。では……ストーク」
感じていた鋭い視線が無くなったような気がして、恐る恐るストークを見た
目を瞑って、シミジミ噛み締めている。
満足してくれたようで何よりだ。
「そして最後に、もう一つ。」
二人が姿勢を改めた。
「いや、これは事前アナウンスって感じだから、気楽に聞いてくれればいいよ。」
しかし、俺の呼びかけに二人は姿勢を崩すそぶりを見せなかった。
まぁ、いっか。
話の中身さえ分かって貰えれば……
「アルディは、アルディらしくするために顔を変えたけど……」
「顔でバレるという意味では、俺とグラーシュは、注意が必要だ。」
「俺に関して言うならば…」
「ラゴイルは死んだ。俺は、たまたまラゴイルの体に転生しただけ。だから、体を変えようと思う。」
「そんなことができるんですか?」
グラーシュが自制し切れずに、身を乗り出して割り込んできた。
「確証は無い……けど、多分できると思う。」
「できる……?」
「多分だけどね。」
「あの……本当に今度ゆっくりお話しくださいね……」
「了解。」