第74話 最初の立ち寄り所
改訂2023/04/14
「龐徳~、馬屋入口の荷物は全部リアカーに乗せたー!?」
「完了しました!いつでも出れます!」
優秀な仲間!
マジで感謝!
よし!
「ヤマモリさん、お世話になりました。ありがとうございましたー!」
ログハウスから飛び出して、偵察粒子を散布した。
周囲に敵影無し!
テンションのままに、馬に飛び乗り、いざ出発!!
「とりあえず、ついてきて~」
まずは、祠だ。
出発の挨拶に向かった。
転生して空何度も通った道だ。
この参拝が多分最後になると思うと……ううう、感慨深いなぁ。
感傷に浸っているうちに到着した。
言い出しっぺの俺が最初に感謝と出発の意を込めてお参りした。
2人もぎこちないながらも、見よう見まねでお参りを済ませた。
「座って座って。」
俺の声掛けで、祠の前に三人で車座になった。
「はい、それでは、これからの目的地と、行動を発表します。」
2人とも静かにうなずいてくれた。
「まず、目的地は、王都です。」
「第一の目的が情報収集、第二に生計を立てることが続きます。」
「できれば、王都にて、生活の拠点を確保し、生業を確立させようと思います。」
再び、2人とも頷いてくれた。
「ただし、注意しなければならないことがあります。」
「ラゴイルは侯爵の跡取り息子ですから、王都でも顔と名前の売れた有名人でしょう。このまま素性がバレる可能性があります。」
「そこで、ここにいる全員名前を変えることを提案します。」
「はい。」
神妙な面持ちで女性は頷いてくれた。
「主上、私は……」
龐徳は難色を示した。
そりゃそうだよね。
「龐徳は変える必要なさそうだけど、ヤマモリさんにはバレてるんだよね。」
「ヤマモリさんは悪い人じゃないって思っているけど、念には念を入れて、より安全な今後の度と生活の為にって事で、宜しく」
「御意……」
「で、早速だけど、俺は、レウラント・リフィンスターと名乗るよ。愛称はルランで、よろしくね。」
「龐徳は、アルディ・バルバリエントにして。」
「御…意…」
いきなり横文字の名前じゃ、抵抗しかないか。
「さて、お嬢さん、お名前は?」
「私は……」
そう言って俯いてしまった。
「んー……」
掛ける言葉を探しながら声を出していると、女性は顔を上げた。
「レウラント様、決めて下さい。」
名前が決まったから顔を上げたんじゃなかったんかーい!
お言葉に甘えて俺が命名しますか……
よしっ!そしたら……
「グラーシュ・カラーってのは、どうかな?」
「はい。」
「これで、三人の今後の名前が決まったんだけど……これで終わりではありません。」
「続きまして、アルディの顔を弄ります。横文字の名前に合わせて、彫りを深くして……上手く言えないけど、アルディっぽくします。」
俺の言葉で、アルディは顔を強張らせた。
「しょうがないでしょ。アルディって言ったらお前、そりゃあ見事な彫の深い顔じゃなきゃ……」
知らんけど。
「ちょ、ちょっと待ってください、レウラント様!!」
アルディの意気消沈に感化されて、グラーシュが声を上げた。
「ん……?」
「顔を弄るって……本気ですか!?」
「本気です。大マジです。」
「レウラント様、何を言ってるのかよく分からないですが……顔は弄らない方が宜しいのでは。」
「取り替えしのつかないことになってしまいますよ。」
そんな大ごとにはならないでしょ……
しかし、グラーシュは目に力を入れたままだ。
えー?
どうしてだ……
あーっ!いけねっ!
グラーシュは召喚術に立ち会ってないし、召喚の話もしてなかったんだっけ。
「ごめんね。また今度ゆっくり話するよ。」
「多分だけど、グラーシュの考えているのと違うと思うんだ。」
「今は、とりあえず、百聞は一見に如かずってことで。見てて。」
念ずるだけでいいところを、グラーシュにも分かり易いように、パチンと指を鳴らして見せた。
すると、龐徳の顔が、アルディって名前にぴったりのエッジの利いた顔に変わった。
「これでアルディです。」
グラーシュは、ポカーンと口を開け、アルディは辺りをウロウロ歩き始めた。