第72話 おじいさんの思い付き
改訂2023/04/14
「あら?ハーレムには戻れなかったのかしら?」
「ぐぬぬ……それは戻れたんじゃが」
戻れたんかーい!
つい心の中でツッコミを入れてしまった。
「良かったわね。それなら起きる事無いじゃない。」
おじいさんに対する先生の冷ややかな態度が、俺の盛り上がりを萎えさせた。
「そうなんじゃがな、夢の中でふと思ったんじゃ……あ、お前たち、話中だったか?いいか、言っても?」
年上に、豪快な叫びと共に話に割って入られたら、何事も無いように元の話題を続けることなんてできないし……
それでも、俺だって大切な質問をしていたわけだし……
「いいわよ。」
返事を戸惑っている隙に先生が、返事をした。
先生にとっては、渡りに船だったのかもしれないな。
「すまんな。お前さんの事じゃから、まぁ、怒らんで聞いてくれ。」
俺へのフォローをそれとなくしてくれたってことは、顔にちょっと出てたかな。
まだまだ、俺も未熟だ……
「気になさらずに、言ってください。」
「うむ。次の実家からの訪問、昼間とは限らないんじゃないか!?」
「―――!?」
頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。
「そうだ!!確かに、目的が目的だから、次回の訪問は、紳士的じゃないかもしれないですよね。」
「そうじゃ。『御免くださーい!日中のお忙しいところ、申し訳ございません。人体実験の被検体になって頂きますので、ご協力下さーい』なんて、正面切って堂々と来んじゃろうな~」
「当然じゃが、夜来たって、『夜分遅くにすいませーん』なんて、声掛けてくれんかもしれんぞ……」
「ふふふ、もしかしたら、音を立てずに窓ガラスを割って侵入し、ベッドの上で刺激的な御対面なんてことも、あるかもしれないわね~」
「出発用意もできているなら、なぁ……」
「“要は急げ”とかっていう言葉もあるんじゃろ?今がチャンスなのかもしれんぞ。」
「もうろくジジイっ!それを言うなら“善は急げ”よ!!」
ははは、夫婦漫才はこの辺にしといてもらって……
おじいさんの指摘は、確かにその通りだ。
「そう…ですね…ありがとうございまーす!闇の粒子集めは、次回教えて下さーい!!」
踵を返して、意識を外に向けると、白と黒の世界は薄くなり始めた。
「ちょ……待……さい!まだ…があ……」
ん……?
俺の後頭部に向けて、なんか先生が言っているような気がした。
止まらない起床への流れの中で、振り返って二人を見ると、ぶつぶつ話しているように見えた。
まぁ、“要は急げ”の緊急事態なので、気にしない、気にしない。
俺は、再び外に意識を向けた。
次の瞬間、目が覚めた。
柔らかくて暖かいオレンジ色の光が部屋に溢れていた。
今回は朝まで寝ずに済んだようだ。
俺は、窓から身を乗り出して、太陽の位置を確認した。
良し!
幸いにもまだ日が落ちてない!
視線を落とすと、高身長で露出の高い美女が帰ってくる姿が見えた。