第63話 初めての火起こし
改訂2023/04/14
クソ―っ、きりもみ方式で火を起こした事が無い俺がいけないのか―!!
でもここで投げだしたら、今度は火起こし未経験ではなくて、火起こし失敗経験が残って、尾を引いてしまうかもしれない!
ここは気合と根性で火が付くまで粘るしかない!!
「主上……」
見るに見かねた龐徳が手を出そうとしてきた。
「いや、もうちょっとなんだ。多分、知らんけど……」
それからも、根気強く、擦って擦って擦りまくった……そして、ついにその時が来た!!
火だっ!
ありがたや~!!
って、俺は、原始人かっ!
「主上!」
龐徳のゴツイ手の中に、厳選された極細の枯草が鳥の巣のように纏まっていた。
慎重かつ大胆に、火種を中心に収めた。
パチパチパチッ
小さな音が徐々に大きくなって、次第に煙の量が多くなり、ボワッと発火した。
「よーし!龐徳、それをここに!」
「御意」
用意しておいた、枯れ葉や枯れ枝の纏まりの下に潜らせた。
火は力強く大きく育った。
更に、燃料の木を組んだところで、採集準備完了だ。
随分てこずったな……
でも、結果オーライだ!
さてと。
俺は、吸収するイメージを持ちながら左手をかざした。
そして、少しずつ火に手を近づけた。
炎は半分以上が俺に吸収されている。
まさか、こんなところで、昨日の肝試しの成果が発揮できるとは……
龐徳の投石や打ち込みを受けた御陰で、火に触ることなんて躊躇なく出来ているよ。
「龐徳、ありがとう。」
龐徳は、首をかしげている。
ははは、分からないよね。急にごめん。
薪が燃え終わるまで左手をかざし、無事に火の採集を完了した。
残ったのは、完全に熱を失った炭と灰だけだった。
こんなに簡単に消火できるのは、安全で安心で、便利極まりないな。
次は、“水”だ!
偵察粒子のおかげで、偵察域内に小川がある事が分かっている。
ただ、歩いていくのは、ちょっと距離がある。
病み上がりのラゴイルの足では、もちろん走ってなんて行けない。
「龐徳、あっちに小川あるから、馬に乗せて~」
「御意」
先に乗った龐徳の手を取ると、投げ上げられるように乗馬した。
龐徳の後ろに俺が乗っても、白馬の背には余裕がある。
イイサイズ感だね!
サイズアップして良かったな。
「われながらすばらしいコントロールだ……!」
って、どこかで聞いたような……