第62話 素材集め
改訂2023/04/14
まずは、火属性の物を採集しよう!
とはいってもなぁ……
火属性で集めるものなんて、何があるんだ?
俺みたいな転生者でこの世界の初心者には、“火”しか思いつかん。
そして、ログハウスから火起こしの道具は持ち出していない……
ということは、この森の中の物を使って、火を起こすしかない!
火起こしの方法のうち、自然にあるものを組み合わせた方法は……「きりもみ方式」だ!!
必要なものは、素性が良い真っすぐな枯れ枝と、板材と、着火させたい枯草、枯れ枝……
「龐徳―!火起こしするから、材料集め手伝って―!」
少し離れたところで、人馬一体を目指し調整中の龐徳を呼びつけた。
「主上、火起こしですか?」
「そう、こういう奴!こういう!」
近付いてきた龐徳に、手を擦って見せた。
「御意!」
返事をして龐徳は森に入って行った。
俺が必要なものを言葉で伝えるよりも、ジェスチャーで伝えた方が、龐徳が気の利いたものを持ってくると思ったからだ。
俺も辺りを見渡して必要な材料を集めた。
ほどなく龐徳は戻ってきた。
まずは、強靭化スキルを用いて15センチほどの枝をナイフ化し、火きりぎねと火きり板を作った。
驚くほどよく切れるお陰で、難なく完成。
火きり板の丸い凹みは、強靭化した枝の先端を螺旋状の刃渡りに変えて、ドリルのように穴加工することで作れた。
後はこれを、組み合わせて摩擦を繰り返すだけか……
「主上、これを敷いて下さい」
龐徳から厚手の葉っぱを貰った。
「あ…忘れてた…助かったよ」
さて、改めて、いざ………………
まだ……点かないのか……
どれほど摩擦を繰り返したか分からんぞ……
全然点かんやん。
単にコツを掴めてないからだけなのか……?
これ、めちゃくちゃ大変だ。
もしかして、ログハウス戻ってからやった方が良かったか?
ヤマモリさんにキッチンで火を起こして貰ったら、龐徳にヤマモリさんを連れ出して貰って……
俺のマヌケ……絶対にそれの方が良かったじゃん。
いや、これから逃避行となれば、俺が火起こしを経験している事は後々、絶対に役に立つ。
今更、結果論を言っても仕方ない!
……
それにしても点かないな……
はぁ……現代社会だと、ライターをシュっとやれば簡単に利用できる火も、この世界では大変な作業だよな~……
いや、違うな。
この世界には魔法がある……
俺が魔法を使えない「空」だから、不便しているだけだ……
ひたすら続く単純作業が、上手くいかないから、ネガティブな事ばかりに思考能力を使ってしまって、気持ちが滅入ってくる。