第61話 強靭化
改訂2023/04/14
俺は、辺りを散策し、テキトーな枯れ枝を手に取った。
切る対象……先日龐徳が投石で倒した木にしよう!
投石ひとつで、木が倒れるなんて思ってもみなかった。
でも、その俺の浅慮で、立木を無残な姿にしてしまった。
せめて切り口を綺麗にしてから、折れた幹から元気そうな枝を選り出して、割り接ぎや切り接ぎをしてみよう。
さて、武器の強化に関し、教えてもらったやり方は……
まず、切りかかった時に、当たる刃渡りの部分に意識を集中する。
そして、刃渡りが最高に鋭くなるように、光の粒子がきれいに並んでいるイメージを持ち……
そのまま切りかかるーーっ!
「―――ッ!?」
大した抵抗も無く、小指ほどの枝が、腕を回せないくらい太い幹を、豆腐を切るように、スッと切った。
ちょ……嘘でしょ……
信じきれない俺は、再び試し切りをした。
サクッ、サクサクッ、サクッ!!
なにこれー、笑っちゃうほど良く切れるじゃーん。
サクサクッ、サクッサクッ!!
しかし、切れば切るほど、俺の既成概念も破壊され、思考をバクらせた。
あははっ、あはは、訳分かんねぇ。
おかしいだろ、コレ……
壊されかけた既成概念を再構築するために、俺の頭はフル回転した。
そして、或る疑問に行きついた。
これって……もしかして、何も手に持たず、光の粒子で剣を作って、使えばいいんじゃないか?
刃渡りに光の粒子を並べるのを突き詰めれば、剣が構成できるだろ。
そして、それは、剣を召喚するイメージというか、自分の周囲の光の粒子を利用して具現化すれば、できそうじゃないか……
もし、それができれば、同じように、盾や鎧もできるかもしれない。
光の粒子を平面や曲面に並べて、盾や鎧に造形すればいいでしょ……?
違うのかな……
スキルで装備を一式揃えることができるかもしれないなんて…夢が広がる…
ヤバいっ。
教わってない事だけど……凄くやってみたい!
あーっ!!
試してみたいー!!!
けど、止めとくか。
今は、先生の宿題【黒き理】による採集活動も残ってるし、やめとくか。
教わってないことをやって、取り返しのつかないことになっても嫌だし。
そんなことにはならないと思うけど……
気持ちを切り替えて、当初の目的を達成しよう。
採集、採集。
先生からの指示は、三種類の採集で、今まで吸収したのは、二種類だ。
一つが、轟音を上げて飛んできた投石。
もう一つが、凄い勢いで振り下ろされた木刀のような枝、じゃなくて幹。
ん-、出来ることなら全く異なる物を収集したいなぁ。
とりあえず三種類を達成させるためだけに、何も考えず、テキトーなものを吸収したら、先生に怒られるだろうな~。
それと、何度も「生き物はダメ」って先生が言ってたから、絶対に除外せねば。
とりあえず何もアタリを付けずに収集しても、【黒き理】の理解は深まりそうにないから……
ひとまず、火・水・土・風の“四大元素”ってやつを参考に考えてみるか。
土は……投石とは違うだろうけど、すでに集まっている事にしよう。
幹は、どれに該当するんだろう……土なのかな。
火ではないだろうな~。
考えても答えが出ないから、この幹はノーカウントとしよう。
さっき強化した枯れ枝も無しだ……
他の三種類、火、水、風を集めよう。
だとしても、どうやって集めようかな~
……
――ッ!!
そーだっ!
いいこと思い付いた!
「白馬将軍さーん!お休みのところ、ちょっといいかな~?」