第59話 戦馬召喚 その3
改訂2023/04/14
その直後、鈍い音と共に、龐徳の拳が白馬の頬を捉えた。
白馬の頭は、その勢いで大きく揺れた。
その反動を利用して、龐徳の胸めがけて白馬が思いっきり頭突。
それを受け止めて、投げ飛ばす。
ブンッ
白く巨大な塊が視界の外へ飛んでいった。
馬って……投げれるんだ……
俺が感心してると、白馬が起き上がって龐徳に向けて突進からの二度目の頭突き。
右足を引いて半身で躱す龐徳。
つんのめった白馬も、体制を利用して、すかさず後ろ足で蹴り上げる。
ドゴッ
鈍い音と共に宙を舞って吹き飛ぶ龐徳。
馬蹴りって、大男でも、こんなにも簡単に吹き飛ぶんだ……
昨日のじゃれ合いがかわいく思えるほどの、激しいプロレスごっこが繰り広げられていた。
もう止まらない。
召喚直後の暗闇の中、お互いに負けられない戦いが始まってしまった。
目を逸らしても、体が震えるような鈍い音が響いてくる。
耳を塞いでも、なんだか色々飛んでくる。
暗いから、飛んできたものが血なのか汗なのか、泥なのかそれとは別の何かなのか、よくわからない。
一つだけ言えることは、ここまで過激な砂被り席には居られないということだ。
暗いし、眠り易くて丁度良いや。
「終わったら教えてね~。ちょっと離れたところで昼寝してっから~。」
足元に注意しながら、ちょっと離れたところゴロンと寝転がって、ひと眠りした。
起きたら、周囲はすでに明るくなっていた。
プロレスはどうなった……?
辺りを見渡すと、龐徳と白馬は背中を合わせて、へたり込んで座っていた。
さっきまでの血で血を洗うような荒事が嘘のようだ。
日光を浴びて、絵になるじゃない。
タイトルは、『兵どもが夢のあと(卍)』……なんてね。
それはさておき、良いコンビになれそうだね。
あ……いけね……
再召喚で、馬のサイズアップを試さなきゃならないんだった。
流石にここまで、じゃれ合ったら、もうじゃれ合うことはないよね。
お互いの理解は深まり切ったから納得して、背を預け合って休んでいるんでしょ。
きっと大丈夫…穏便に馬のサイズアップを確認できるはず…信じてるからね。
信じているから……
スー―ッっと、大きく息を吸って、景気良く!
「サイズ、アーッ、プーッ!!」
って感じでいいのかな?
そして、再び周囲が暗くなった。