第57話 戦馬召喚
改訂2023/04/14
顔に当たるカーテン越しの柔らかな光で目が覚めた。
またか……
昼寝のつもりだったのに、朝まで寝てしまった。
シンプルに寝すぎ!
ウトウトしながら、ゆったりとした時間を過ごす……眠りの喜びを、まどろみの中で満喫する……
そういう朝は、何処に行った!?
連日、こうも寝すぎると二度寝を求める欲求よりも、寝すぎた事による勿体なさから「取り返さなきゃ!」って気持ちが沸き上がる。
俺はやっぱり貧乏性なのか……
バカだけじゃなく、貧乏性まで、死んでも治らなかったか……
って、うだうだ考えていても仕方ないか……
何せ、寝すぎて、昨日使えなかった時間の分だけ、今日を充実させないと勿体ないのだから!
それに、今日のTODOは多いぞ~。
馬の召喚、試し切り、採集……
ワクワクに高鳴り始める胸を突き出すように、俺は飛び起きて自室を出た。
「おはようございまーす。」
大きく元気な挨拶とともに、1階に降りていくと、ヤマモリさんが龐徳に詰め寄っているのが眼に入った。
対する龐徳は、ただただ黙っているだけだ。
あ……、いけね。
ヤマモリさんに龐徳が従者に加わった件を話さず、疲れに身を委ねて、寝てしまったんだった。
「ごめんなさい。彼は昨日加わった私の従者です。」
俺は、ヤマモリさんと龐徳の間に、体ごと割って入った。
「ラゴイル様、おはようございます……ん?……今、ラゴイル様の従者とおっしゃいましたか。」
「そうっ!そうなんですよ~。いや~、説明も紹介もせずに申し訳ないです~。一緒に城から逃げて来たんですが途中で逸れてしまって……」
「そんな話、クマエから聞いてませんでしたが……」
「ははは、あれ、おかしいな。うっかり忘れていたのかな?」
「うっかり?クマエに限ってそんなこと……とはいえ、困りますよ。ラゴイル様の身の安全の確保には……」
「ホンット、すいません!それと、今日はちょっと急用がありまして、これから彼とすぐ出ますんで、失礼しまーす。」
慌てて龐徳の腕を掴んで、そのまま先導しログハウスを出た。
「馬は……」
小さな声で寂しそうに龐徳がつぶやいた。
「言っただろーっ!昨日の白馬はお前のじゃないの!!」
「えーーーっ!」
「いやいや、じゃれる前に言っただろ!じゃれるのに夢中で忘れたか?」
「そうですが……主上!」
「何ッ!?」
「私はあの白馬を屈服させました!!」
「だからぁ、そういうんじゃないんだって!!」
如何に武に関係しているとはいえ、何でもかんでも力で奪う奪われるって……そんなにシンプルに物事出来てないんだよ。
大好きな馬のこととなって、思考回路が短絡してしまったか。
「……」
俺の説明に不足しているピースを頭の中で探し、必死で組み合わせているのか、龐徳は黙ってしまった。
そのまま脳内の回路を復旧してくれ!
って、それはそれとして……
「今日も祠の近くに行くよ。」
「御意……」
「はぁ……そこで、お前専用の馬も用意するからッ!!」
「御意ッ!!」
返事とともに、先導が代わり、龐徳が俺の腕を痛いくらい引っ張った。
「つよいつよい」
「はっ!申し訳ございません。」
慌てて手を放す龐徳は少し恥ずかしそうにしている。
「ははは、いいよ。気にして無いから。気持ちの切り替え速くて助かるよ。今日もよろしくね。」
「御意」
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花粉症の季節になり、頭がボーっとしがちですが、頑張りまーす。