第56話 慣れて来た白と黒の世界 その2
改訂2023/04/14
「美人かどうかなんて人それぞれ感じ方が違うでしょ?」
「相手が意図的に混乱させようとする場合の耐性ならあるけど。」
「あなたが今欲しいって言ってる耐性って、相手になんの加害意志が無いのに、貴方が勝手に取り乱すのを抑える耐性って事でしょ?」
「そんなもの……自分で気持ちを切り替えなさい!!」
「それが出来なきゃ、精進しなさいッ!」
「この未熟者ッ!!!」
ちょ……一つ言うと十返って来た
まじで、矢継ぎ早に、言いたい放題だな。
でも……仰る通りですね。
勢いに押されたわけではない。
先生は俺の意を正確に汲んで、アドバイスしてくれている。
かなり棘の生えたアドバイスだから受取の際に痛みが走り、無理やり留飲を下げられた。
「聞く気になったかしら?」
「はい……脱線してすいませんでした。続きをお願いします。」
先生は、フーーっと溜息をついて、話を再開した。
「明日は色々吸い込むイメージを持ちながら左手をかざしなさい。」
「はい。」
「ちょっと確認をさせて貰っていいですか?」
「何よ。まだ話の腰を折る気?」
「いえ、そんなつもりはありません。念のための確認です。何でも吸い込めるなら、あんな怖い思いしなくても良かったんじゃないかな~って思いまして……」
「うるさいわね。いーのよ、あれで。結局のところ、そういう使い方になるのだから!」
「それに、テスト時に脅威の対応として学べば、本当の脅威の時に落ち着いて対応できるでしょ!」
「分かりました……」
「明日、スキルテストとして吸い込むのは、生き物以外のいろんなものにしなさい!」
「はい。」
「いーい?生き物は障っちゃ駄目よ!めんどくさい事になるから!!」
「はい。分かりました。」
「宜しい。」
「生き物以外を吸収するとして……目安とかありますか?数、量、種類……」
「そうね……最低でも全く違うものを3種類ぐらい吸収しなさい。」
「了解です!3種類集めたら……☆2ですか?」
「そんなわけないでしょ。とにかく集めなさい!」
「がはは。まぁまぁ、肩の力抜いて。な!」
「ジジイ!次はあんたの番でしょ!」
「はいはい。」
すると、瞬く間に白一色の世界に変わった。
「馬の召喚じゃったな。何か気になる事があるんかのう?」
「はい。召喚した馬を後から強化する事や、別の生き物にすることって出来るんですかね?」
「なんじゃ、そんなことか……当然できるよ。」
当然なんだ……
「えーっと……いつも通り念ずればいいだけ?」
「そうじゃ。」
「コストは?」
「ん-、サイズアップするなら不足分の粒子かな。召喚の時と同様に周囲が暗くなるぞ。サイズダウンなら、余った粒子がお前さんに戻ってくる。」
「すると、俺は戻ってきた分強くなる?」
「強くなるというか……粒子がストックされるって感じじゃな。」
「そもそも最強じゃから、粒子が増えて強くなるとか……そういうんじゃないんじゃ」
ははは、そうでしたね。
心の中で乾いた笑いが響いた。
「という事は、召喚とか関係無しに、周囲の粒子を集積してストックすることってできる?」
「うーん、できるじゃろうな~」
「例えば、三日間に渡り、日中の粒子を集めて、ストックとか?」
「えぐい事を考えとるなぁ……三日間も、対象地域は真っ暗になるぞ!何を考えとるんじゃ。」
「集めた光の粒子を使って、光の巨人の大軍団を召喚……なんてね。」
「馬鹿たれ!そんなもの、目的も無いのに考えるな!」
「そういうとこじゃ、未熟者って言われたじゃろ!!」
「はーい。」
何だか今日は、やけに怒られるなぁ。
いざスキルを使い始めると、教えている側としては心配が先行するのかもしれないな……
「む……今日は、これだけか?」
「うーん、そうですね~他にも聞きたいことがあるんですけど、試し切りテストも済ませていないので……」
「済ませてからに次の事を教えて貰う事にします。」
「そうじゃな。毎日焦らず、1つずつ着実に!大切な事じゃ。」