第52話 正体を明かされる その2
改訂2023/04/14
メイドは、日ごろ武器を装備しないから、格闘術を教えたのは、納得できる。
それに、城内に侵入してきた不審者も、相手がメイドならば、油断するだろうし。
ラゴイルの割に、きちんと頭使ったんだな。
しかし、熊と人の間の子ってところが、やっぱり理解と納得できない。
俺のお願いを聞いて装飾された重厚な姿見を独りで顔色も変えず軽々と持ってきた様子から、力が強そうなことは分かったけど……
一見すると、全く熊の要素が分からない。
ただの長身でグラマーな美人メイド……
こんなに美人が熊との間の子なの?
余程信じられないという思いが表情に出ていたのだろう。
「分かりました……」
そう言うと、おもむろにクマエが背中を向けて服脱ぎ始めた。
突然の、予想外の展開に、声を掛ける暇も無く、クマエは下着姿になった。
そして、目の前には、プリンプリンのめちゃくちゃカワイイ小尻が……
ちょ……、クマエ……、T〇ック……ってか、ほぼ紐やんけ。
俺の頭に血が上り、顔が真っ赤に火照るのが分かった。
「くっ、いきなり何をっ!」
「ちゃんと見て下さい!」
「もういい。ちゃんと見た。実に可愛いお尻だ!こんなかわいいお尻は初めて見た!でも、ほぼ紐のパンツはどうかと思うぞ!」
「そこじゃないです!!背中から下に見て下さい!!」
え……?
背中……?
そうだよな、いきなりお尻自慢が始まる訳ないよな……
俺、落ち着け!
話の流れを思い出せ!
熊との交配の証拠を見せようとしたのか!?
我に返った俺は、クマエの指示の通り背中を見た。
んー……?
なんか気のせいかな……きもーち、毛深い……?
そのまま視線を落としていくと、T〇ックかどうかも疑わしい様な極小面積のパンツ!!
待て!
まだだ!
クマエに言われた通り、ちゃんと見ろ、俺!!
パンツに隠れていない尾てい骨のあたりが、ぴくぴくと、動いてるような……
ん……?
「尻尾……?」
「はい!」
クマエの返事で正解を得たと実感した瞬間に理性の意図が切れた。
集中力を欠いた視界を埋め尽くしたのは、ぷりぷりの小尻とえっちぃヒモパンツ!!
ついでに、お尻の間からちょっと見えちゃいけないものが……
これ以上はヤバい!!
俺がどうかなってしまう!
暴発して手を出してしまいそうだ!
そんなことしたら、大切な話のためにクマエに来てもらったのに、台無しだ!!
「背中の毛深さと尻尾の存在が証拠って事ね。わかったよ。本当によく分かったから。一旦、服を着ようか。」
「はい」
この前は夜中だったし、背中やら尾てい骨なんて意識していなかったから、全く分からなかった。
手の届くところは、身だしなみの一環として剃毛しているが、逆に手の届かない背中は熊さんっぽさがちょっと残ってしまうということか?
とにかく、異種交配と言ってもかなり“人寄りの熊”‥…いや…クマエは人だ……
俺の感覚で言えば、熊のように力強い女性っくらいの感じだな。
―――!?
もしかして……
熊の女の子だから、クマエ?
頭の血液が沸騰しそうになるのを必死で抑えた。
「あのさ……色々と質問したいんだけど、いいかな?」
「はい」
「まずクマエという名前は、誰が付けたの?」
「ラゴイル様です。」
「!?」
「王都から城に不定期で来る鍛冶屋に、ラゴイル様が気まぐれで質問したそうです。」
「『メスの熊に名前を付けるなら、何が良い?』『場内で熊を飼い始めたのですか?ラゴイル様も物好きですな~。』」
「そしてその鍛冶屋が『そうですね~、クマエはどうですか?』と提案し、『クマエか。其れはイイ。そうしよう』と……」
「――――――っ!!」
抑えを爆散させた怒りが鋭く頭皮を破るような感覚に襲われ、俺は言葉にならない声を上げていた。
“怒髪天を衝く”とはこのことか……
ふと目に入ったクマエは、時折口を少し開けてタイミングを計っているように見えた。
まだ俺に聞いて欲しい話が有るのか……
それなのに、ここに居ない人間に向けた怒りで俺は取り乱して……情けない。
ここは怒りを抑えて、クマエの訴えを聞くのが先だ。
平常心、平常心。
こちらが落ち着いたのを見て、クマエが話を続けた。