第36話 DEのアジト到着
「イチオ、アジトまでは下りだから、今日中に着くよね?」
首を少し捻じって後ろに乗るイチオに訊いた。
「そうだね。夜遅くに着いてもいいんでしょ?アジトに行くわけだから野営の準備も無いわけだし。」
「だね。グラーシュ、マコト、ストークの疲れ具合見てあげてね。無理はさせたくないからさ。」
「りょーかーい」
マコトから元気の良い返事は返ってきたが、グラーシュは沈黙……既に、グラーシュは雷職人の卵になっていた。
俺のことを無視するなんて考えられない。
いや、無視というより没入しすぎていて頭に入ってこなかったのかな……
ははは、頼もしいね~。
サクッと修得して、目を瞑ってもできるくらいになってくれれば、俺が教わるときもストレスフリーで凄いコツを教えて貰えそうだし……急がば回れとはことかな。
安堵感から気の抜けた俺の耳に時折ストークの悲鳴にも似た鳴き声が入ってくる。
見ると、不定期で暴発するグラーシュの雷の光と音に怯え首は竦み、抑えきれない本能のまま悲鳴を上げていた。
つい笑ってしまったが、ストークはこちらの様子もお構い無しで、訳も分からず必死に走っている様子だった。
本能的に雷からは恐怖しか感じないのだろう。
ストークを気にしてスピードを上げずに走るラムーだったが、加減速を繰り返しつつも着実にスピードに乗っていくストークにペースを握られて、気が付けばアジトの到着していた。
ストークは到着すると鈍い歩みでエラム達のところへ行くと、“馬っ気“も出さず、首を下げてしゃがみ込んでしまった。
下り坂で勢いが増す中、ストークは過剰なストレスと戦いながら、さぞ大変だったんだろ、お疲れさまでした。
これでルーロック山でやるべきことは終わっ……てない!?
やっば!
ランコを埋葬するの忘れてた!!
下山前に、ちゃんとやらなきゃ。
といっても……明日かな。
ストークは生命の危険を感じて、リミッターを解除した走りをしているから、明日は全身筋肉痛で人を乗せて走る事なんてできないんじゃないかな。
「アルディ、馬たちの世話してもらっていいかい?かなり入念に、出来ればマッサージとかも……」
「マッサージですか……御意」
「グラーシュは……」
ストークから降りた後も黙々と手悪さ……じゃない、雷作りに勤しんでいる。
「グラーシュ、ごめん。俺らは中に結論を聞きに行くけど、アジトの入り口で待機しててくれるかな?特訓は続けていてくれていいから。」
「あ……はい」
一瞬視線をこちらに向けたものの、また手元の暴風球とにらめっこし始めた。
夢中だな……自己研鑽に夢中なんだから、良い事なんだけどさ……
「それじゃ、結論を聞きに行きますか。」
「まぁ、一択だけどね。」
「そうだね。」
イチオとマコトはあまり興味が無いようだった。
「決めつけちゃいけないよ。きちんと聞かなきゃ。三人の回答が出るまで、発言禁止ね。」
「「はーい」」




