第34話 雷作りのコツ4
グラーシュにプレッシャーを掛けたくない俺は、耳だけをグラーシュに向けていた。
馬上で風を切って疾走する音や地面を蹴る音は小さくなり、グラーシュの手元の暴風球のゴォォっという唸りだけが妙に大きく聞こえていた。
そして、次第にその音の中から小さな破裂音が聞こえてきた。
バチッ!
バチチッ!
ゆっくりとグラーシュの手元に視線を向けると、暴風球の中で小さな閃光が生まれ始めた。
「おいおい、マジかよ、マジかよ……信じらんねぇ。これって……」
イチオが俺にだけ聞こえるような小さな驚嘆の声を上げた。
間違いない!暴風球の中で雷が生まれてる……
「その調子だ、グラーシュッ!!」
「はいッ!」
返事と共に大きくなる
バチィィィッ!!バチバチィィィィッ!!!
鼓膜が破れるような大きな破裂音と、真昼間でも眩しいくらいの閃光が断続的に生まれる。
「これ…、雷……」
音と光の合間から僅かに聞こえたグラーシュの途切れ途切れの声から雷の体感が出来た事が分かった。
よく見ると、時折暴風玉から雷が漏れているようにも見える。
「オッケー!一旦止め―っ!!」
目いっぱい張り上げた俺の声に、グラーシュは我に返ったようで、徐々に音も光も小さくなり、最後にはフワッと暴風球が消えた。
「グラーシュ、お疲れ様!」
「はい、ルラン様ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
とはいったものの俺は別に大したことはしていない。
単に言いたいことを言っていただけだ。
「ルランって、訳わかんないね。魔法使えないのに、魔法使えるようにしちゃうなんて。」
「それも、雷だよ。ヤバすぎ。」
「青魔法のウォーターニードルからアイスボールへの発想が独特過ぎるし」
「極めつけは、シルフィーも知らないで風属性の加護を受けようと、しぶとく奮闘していた事だよね。」
「何から何まで……なんか気持ち悪い。」
「イカレエルフもドン引きするくらいイカレてるかもしれないね」
おいおい、本人を前に、二人して言いたい放題言ってくれるじゃないの。
「その辺にしてください!雷を使えるようになったのは事実です!」
グラーシュ、ナイス!
こういう時は第三者がビシッというのが一番効果あるよね。
「それはそうだけど…ねぇ…」
「うん、常識を逸脱してるっていうか、常軌を逸しているというか……」
「ん-っ!!」
顔を見合わせるダークエルフを、グラーシュの言葉にならない唸りが威圧した。
「「ごめんなさい。」」
二人とも素直に謝った。
目の前で雷を作った才能に押されて、素直になったか。
素直さが大切って見せつけられた直後だもんな。
ともあれ魔法を使う者同士、リスペクトを持って仲良くやれそうだね。




