第33話 雷作りのコツ3
グラーシュが黙々と風の球を作っている隣で、次に教えることを考えていた。
魔法もできない素人の助言は、俺の頭の中にある記憶の引出から、前世の御天気の知識を手当たり次第に取り出して揉んで作っている。
引出から知識を取り出しては考えていると、たまに引出からひょこっと睡魔が顔を出して襲ってきた。
あぶね、また寝落ちしそうだった。
ふとグラーシュに視線を送ると、段々と慣れて来て、馬上で浴びる風に邪魔されること無く、掌の上にゴォォっと低音の唸りを上げる暴風球が生成されていた。
「これでいいですか?」
俺の視線に気が付き、グラーシュが目を輝かせて言った。
俺寝てる場合じゃないな。
グラーシュは真面目に取り組んでいるってのに……
それに、アレが暴発したらカマイタチの群れが辺りを切り刻んで大惨事になりそうだってのに、何を悠長に睡魔の相手をしてるんだ、俺は。
「それって、マックススピードだよね?」
「え……あ、はい、多分。」
「ん-、そのままでいいや。そしたら、その中にさっきの大きさランダムの氷をどんどん生成してみて」
「はい!」
何て素直な返事なんだ。
口答えでもされれば、アドレナリンが出て眠気も飛んでいくのに。
俺は睡魔に手を引かれてまた夢の世界に……
「ルラン様!ごめんなさい。上手くできないです。」
「ルラン、無茶苦茶だよ!二属性を同時にかなり繊細なマナコントロールさせて!」
イチオの声が後頭部に突き刺さった。
あぶね、おじいさんと先生に会いに行くところだった。
「いや、出来るはず。イチオ、風の精霊って何だっけ……?」
「ちょ、そんなことも知らないで加護を受けようとしてたの?シルフィーだよ!シルフィーッ!!」
「ルラン……」
マコトが残念そうに俺の名を呼んだ。
「ごめん、後でちゃんと聞くから。グラーシュ、そしたら、右手でシルフィーの補助を受けながら暴風球作って。で、左手は暴風球にかざしながら、ウンディーネの補助を受けてさっき作ったような感じの氷を暴風球に放り込んでいってみて。作った氷の動きは制御しなくて良いよ。風に任せて。ただし、球から外には出ないようにしてね。」
「はい……」
「落ち着いて、大丈夫、グラーシュならできるから」
「はい!」
返事と共に背筋を伸ばし、両手は軽く拳を握り、フーッと息を吐いた。
そして、高く整った鼻からスーッと息を吸うと、グラーシュの目に再び力が戻った。
「始めます」
グラーシュはゆっくりと両掌を頭上で正対させた。




