第26話 起床即出発
「おはよーッ」
俺は目を開けるなり、周りの確認もせずに発声した。
出来る限り早く挨拶して、少しでも早起きを頑張ったように見せるために。
ゆっくりと辺りを見渡すと、腰に手を当て仁王立ちのマコトが居た。
朝日を浴びて神々しささえ感じた。
しかし、帰ってきた返事は見とれる俺の心をへし折るものだった。
「ルランっ!遅いッ!!グラーシュが起こさないでって言うから放っておいたけど、遅すぎ!!何様のつもり?野営の設置だけじゃなくて撤収も手伝ってよ!!」
「ごめんごめん。」
俺としては今後の旅がより快適になるようにスキルを修得していた時間だったのだから、勘弁してほしい訳だが……
奥に見えたグラーシュは優しく微笑んでくれた。
俺を思いやってくれるのはグラーシュだけか……
「それで、マコトさん、もしかして……もう出れる感じ?」
「出発できるよ!」
「了解。じゃ、出ますか。」
フンっとマコトの鼻がなったのを合図に俺もラムーに駆け寄った。
出発してしばらく走っていると、鳥居が見えてきた。
鳥居をくぐると、手水舎、社務所、拝殿、本殿があった。
マイール山の祠と同じ造りのようだ。
という事は……
「最初に向かう先は社務所かな?」
それとなくマコトを見ると目を丸くしてこちらを見ていた。
「ルラン、よくわかったね。」
「マイール山の祠に行ったことあるからね。」
「そうなんだ。」
「って事は、マイール山で……」
マコトが何を言うつもりか俺にはすぐにピンときた。
「水の加護はグラーシュだけ。」
自分で言う分には傷つかないから、食い気味に伝えた。
「ぷぷぷーっ。グラーシュが加護を得たのなら、ルランも活躍したんでしょ?」
「おい!こっちは深刻なんだぞ。笑うなよ。」
「はいはい。でも、昼間も朝もゴロゴロしてちゃ、マイール山の神様も守る気になれない訳だわ。グラーシュくらい真面目に色々取組んでいれば、頼まれなくたって守りたくなるもんな~」
「え……そういうこと?マコト、詳しく聞かせてくれ!」
「知ーらないっ」
「こっちは深刻だって言っただろ~。頼むよ、教えてよぉ~」
「さぁね~。関係無いんじゃな~い。でも、ルランのは異常なレベルで振り切れちゃってるから『関係無い』ことは無いかもね~」
「鳥居をくぐったんだよ!ここ、神域!マコトもルランもバカな話してんなって!!」
聞くに堪えかねたイチオに怒られてしまった。




