第23話 割切が肝心
ラムーに俺とイチオ、ストークにグラーシュとマコトが乗って、ルーロック山を疾走している。
ラムーの手綱はイチオに任せて、俺は生成したリクライニングする特製後部座席を倒してまったり乗馬してウトウトしていた。
しかし、中々着かない……
俺は体を起こしてイチオに状況確認することにした。
「イチオ、もしかしてルーロック山の祠って結構遠いの?」
「うん。七合目くらいにあるかな。」
「え……マジ……?」
ラムーは平気そうだけど、ストークには少し疲れが見えてきている。
「このペースで走って、いつごろ着きそう?」
「ん-……多分だけど、深夜……」
「深っ……!?やめやめ―ッ!今日はこの辺で良さそうなところを見つけて野営しまーすッ!」
「え……?」
「無理しても仕方ないし、俺、疲れちゃった。」
「嘘だーッ!さっきだって、アジトの前でごろ寝してたじゃん!?今だってラムーの背で寝てたくせにッ!」
突然脇からマコトのツッコミが入ってきた。
「寝てないッ!イカレエルフの事を熟考していましたーっ!」
「マコト!ルラン相手にマジになっても仕方ないよ。多分、ルランはアレだから。」
「アレって?」
「んー、本物ってやつかな。」
「分かった。」
ちょっと待て、本人を前にお前らは……
「ルラン様、あの辺にしましょう。」
意に介さず、グラーシュが野営地候補を指さした。
やっぱりグラーシュが一番だ。
「りょうか~い。到着次第速やかに野営準備に取り掛かってください。イチオとマコトはグラーシュの指示に従う事―!」
「「はぁーいっ」」
気怠そうな返事が返ってきた。
「まぁ、実際に体を動かして準備しているうちに野営の準備も楽しくなるから。」
「で、ルランは何するの?」
マコトが俺の顔を覗き込んできた。
「え?俺はほら、火を付けたり、色々だよ。」
「そんなのルランじゃなくてもできるじゃん。ルランも一緒にグラーシュの御手伝いじゃない?」
あ……
そうだったぁ……グラーシュも火属性ゲットして、ファイアを使えるようになったんだ!!
ヤバい、俺の特権であり特務だった“火の確保”が……
俺の野営における存在意義が……
馬の世話はストークに怒られてできないし……
俺だけにできることは焚き火用の木材の供出しかない?
どうしよう。さすがにそれだけって訳には行かないぞ……一緒に雑務しなきゃだ。
焦る俺にマコトはニヤニヤしている。
「なんだよ。」
「大丈夫だよ、実際に体を動かして準備しているうちに楽しくなるらしいから!」
「くっ……分かったよ。」




